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みやさん

写真と物語の融合、写真物語家を夢見ています。 マイペースで更新中。Twitter➪@miya_ayim

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ユートピア

18/04/30 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 みや 閲覧数:274

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今日も朝から沢山のゴミの山を積み込んだ大きなトラックが何台も僕の住む街にやって来た。ガーガーとうるさい音を立てながら、トラックは町中にゴミの袋を捨てていき、家の窓からそれを眺めながら僕は溜息を零した。

「ほら、授業が始まる時間よ。早くパソコンの前に座りなさい」
六歳の僕はパソコンの前に座って電源をオンにする。画面の向こうで先生が皆さんおはようございますと挨拶をし、今日は教科書の三十八ページからですと言って授業を始め出した。

僕はこのネット授業しか知らないけれど、ママが子供の頃は外にある学校という所に通学をして勉強をしていたらしい。外に出て、学校に通う…なんて楽しそうなんだろう。外に一歩も出た事のない僕にはとても魅力的な事だった。

僕は産まれて一度も外に出た事がない。子供の頃は普通に外に出ていたママもパパも今では外に出る事を禁止されていて、パパも仕事はパソコンや電話でしている。僕達の住む街の人間は全員、自分の家から一歩も外に出る事を禁止されている。その理由をママもパパも詳しく教えてくれないけれど、僕は毎日沢山運ばれてくるあのゴミのせいだと思っている。だってゴミなんだよ?不潔で汚くてきっと鼻が曲がるくらいに外は臭いはずだ。そんなゴミの捨て場所になっている僕の街はきっと…きっと世界で一番価値の無い街なんだと思う。そしてそんな街に住んでいる僕達もきっと価値の無い人間なんだ。ゴミに埋まって死んでしまう運命なんだろう。

外と繋がっているシューターからいつも通りに宇宙食みたいな味気ない夕食が運ばれて来た。このシューターからは何でも運ばれて来る。水や食料品や生活に必要なもの全て。だって外に買いに行けないんだから。宇宙食みたいな味気ない夕食を食べている時に僕はパパに聞いた。
「僕達もうすぐ死ぬんだよね」
「おいおい、何を言い出すんだい」
「だって、ゴミが毎日増えていってそのうちゴミに埋まって死んじゃうんでしょ」
「馬鹿な事言うなよ。パパ達は選ばれた人間なんだよ、心配しなくても大丈夫。ここはユートピアなんだから」

僕はパパの言う事が信じられなかった。ユートピア?ここが?ただのゴミの捨て場所なのに?
僕はその夜、真実を確かめる為に外に出る事を決めた。ゴミに埋まって死ぬなんて絶対にいやだ。緊急時用のガスマスクを用意して僕は深夜になるのを待った。外に出たら…ゴミの影響で発生している身体に悪い毒素や空気で死んでしまうかもしれなかったけれど、ゴミに埋まって死ぬよりはましだと思えた。

パパとママが寝静まってから、僕はこっそりと玄関に向かってドアのロック解除を試みたけれど、僕はロック解除の暗号を教えてもらっていなかった。僕の名前、パパの名前、ママの名前を入力してもドアのロックは解除されなかった。僕は焦ったけれど、パパが言っていた言葉を思い出してユートピアと入力すると、ドアのロックは解除された。

恐る恐る外に足を踏み出すと、外はとてもひんやりとしていた。足元にはゴミの袋がそこら中に転がっていたけれど、不思議と不潔な感じはしなかった。ガスマスクを装着しているので匂いは感じなかったけど、微かに懐かしい匂いを感じた。まるで、それは…空を見あげると透明なドーム型のカプセルに覆われていた。僕達の街はすっぽりとそのカプセルに守れているようだった。

「何しているの!早く家に入りなさい」
僕の脱出作戦は家からほんの五メートル程進んだだけでママに見つかり失敗となった。
「ママ、ごめんなさい。僕怖くて…このままゴミに埋まって死んじゃうんじゃないかって」
「…これを見て」
ママが指を指した先のゴミの袋から、何か棒のようなものが突き出していた。
「これ、何?」
恐る恐る僕がその棒のようなものに触れると、その棒には何か小さなものが付いていた。これは、これは葉っぱ?パソコンでしか見た事のない、これは葉っぱでこの棒みたいなものは枝?
「このゴミの袋には土や虫や木や花の種が入っているのよ」
「どうして…」
「あなたには話してなかったけれど、三十年前に核戦争が起きてこの国は壊滅したの。生き残った人達はこの街に集められて、同盟を結んでいた他の国の人達が放射能から守る為にこの街を特殊なドームで覆ってくれたのよ。そして絶滅した自然界の木や花や虫を再生させる為に力を尽くしてくれているの」
「そうだったんだ…」
ゴミの袋から小さな虫が飛び出した。僕はガスマスクを外してその姿を目に焼き付け、鼻からふわりとした懐かしい匂いを吸い込んだ。それは緑の香り、自然の香りー
「まだガスマスクを外してはダメよ。でももうすぐ…外に出れる時がきっと来るから。さ、家に戻りましょう」

僕はゴミの袋から出ていた小さな葉っぱを一枚ちぎってママと玄関まで戻って、ドアのロック解除の暗号ユートピアを入力した。


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