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林一さん

性別 男性
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呪いの人形

18/04/29 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 林一 閲覧数:201

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 テレビ番組の制作会社に勤めている私は、現在担当している心霊番組に使えるネタを探すため、青森に住む工藤という男の家を訪れていた。
「初めまして。番組ADの吉川と申します」
「わざわざこんな遠くまでありがとうございます」
「いえいえ。では早速なんですが工藤さん、お手紙に書いてあった例の人形について詳しくお話しいただけますか?」
「半年前に同居していた母が亡くなりまして。それで、遺品の整理をしていた時に、物置から古い日本人形が出てきたんです。おかっぱ頭に着物姿の一見普通の人形なんですが、なんとなく不気味な感じがしたんです。それで、近所のゴミ捨て場にその人形を捨てたのですが、翌日家のドアを開けるとそこに捨てたはずの人形があったんです。最初は誰かのイタズラだろうと思い、もう一度同じゴミ捨て場に捨てました。すると、その次の日にも家の前に人形があったので、しつこいイタズラだなあと思いまして。それで、今度はわざわざ隣町のゴミ捨て場まで捨てにいきました。しかし、次の日にはまた人形が家の前にあって。さすがにこんな手の込んだイタズラをわざわざする人はいないだろうし、人形が自分で歩いてきたとしか思えないんです。すみません。手紙に書いた内容とほぼ同じですね」
「いえいえよくわかりました。それでは、実際にそれを検証するためにその人形をゴミ捨て場に捨ててからカメラで撮影しようと思うのですがよろしいですか?」
「ぜひお願いします」
 だいたいこの手の撮影は、ほぼ無駄に終わる。まあ当然だ。本物の心霊現象など、めったにお目にかかれるものではない。ただ、ごく稀にではあるが本物に出会う瞬間があるからこの仕事はやめられない。
 今回のケースがまさにその本物だった。撮影を始めて数時間が経ち日が暮れた頃、突然その人形は歩き出した。不思議と怖くはなかった。あまりにもスムーズに歩くその姿は、昔見たアニメ映画に出てくるおもちゃの人形のようでかわいらしくすら感じた。そして工藤さんの家の前まで辿りついた瞬間、人形はその場に座り込み動かなくなった。
 私は撮影した映像の使用許可を工藤さんにもらうと、急いで東京の本社に戻った。
「社長、ただ今戻りました。見てくださいこの心霊映像。すごいのが撮れましたよ」
「あーいや、すまんな吉川。実はあの心霊番組、ついさっき打ち切りが決まってな」
「どうしてそんな突然?」
「視聴者からのクレームが多くてな。どうせこんなのインチキだろとか、そういう類のクレームが。それでスポンサーが怒っちゃってね。で、代わりにあの枠は旅番組をやることになったんだ。旅番組ならスポンサー受けが良いからな。お前にもその旅番組の企画を考えてもらうから、まあ気持ちを切り替えて頑張ってくれよ」
 クソ。せっかくすごいネタを仕入れてきたというのに。いや待てよ。旅番組か。よし、これは面白い企画になりそうだ。

 それから数ヵ月後。私が企画した新番組『呪いの人形が行く 本州横断山口―青森旅』は、山口県のゴミ捨て場に捨てられた呪いの人形が青森の自宅を目指して旅をするという斬新な内容が話題を呼び、大ヒットした。


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