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井伊心呑さん

零れ落ちそうな小さな起承転結、確かに大事だったもの。いつか忘れてしまう一瞬を丁寧にリアルに切り取った文章を書くのが目標です。よろしくお願いします。

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あいのおのこし

18/04/29 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 井伊心呑 閲覧数:208

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 不自然に空いたベットの半分、シーツを抱いて涙を流したってだから何だってことくらいは解ってる。ああ、染み付いたオードトワレが塩辛い水に上書きされてしまうというのに、どうしてここには私しかいないんだろう。朝ごはんの匂いがするわけでも、作る意味もなくしてしまった。最初からこうするつもりだったなら別に、もっと気軽に、ゴミ箱に捨てる包み紙みたいに軽い愛だけ与えてくれたら良かったのになんで、なにが愛をこんなに重くしたんだろうね。

 赤い血を巡らせて、心臓が音を鳴らしている。奥底に空いた穴を癒してもくれなかった君はもういない。

 うんと背伸びをしたなら欠伸が出る。射し込んで来る朝陽が、たかが私ひとりの人生になんかまるで関心の一つもないという世界の主張だったなら、せめて悲劇のヒロインにはなれたんだろう。私が呼吸をするように、秒針は規則正しく進んでいく。置いていかれてる場合じゃない、本当は。うん、本当にね。なんだか乾いた笑いが口から溢れて、ふと喉の渇きを自覚した。

(ああ、そうだった)

 だって昨日はあんなに、君の体温をうんと近くで沢山もらったんだもの。溢れそうな熱を分け合った瞬間を思い出して赤くなったりするほど可愛い女の子じゃないけど、私。
 鏡の前に立っても今日は赤い跡なんか無くて、いつもやめてと言ってたのに無い物ねだりを心がしている。君って本当に何一つ残していかないつもりだったの?私物の一つもまだ見つけられないんだけどそれって、夢に仕舞い込めとでも言いたいの?でも、それなら私の愛まで連れ去ってくれたら良かったのに、どうして君って肝心なところでツメが甘いんだろう。

 あのときだって、あのときだって。蓋が開いたように記憶が私の頭をガンガン揺さぶってくる。君が愛を連れ去っていかなかったなら、君からもらった愛だってずっと忘れてあげない。愛のゴミ箱があるというなら、君が見つける前に私が燃やしてあげる。

 だって私たち、確かに恋人だったんだ。


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