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いっきさん

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処分場のブルドーザ

18/04/28 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 いっき 閲覧数:188

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 俺はゴミ処分場のブルドーザ。もう二十年近くも使われている古株だ。
 仕事は言わずと知れている。人間どもの出したゴミをこの処分場に埋めるのだ。
 ゴミと言っても再利用やリサイクルできるような幸福なゴミ達はこんなところにはやって来ない。来るのは人間達の処理のしようもない、どうしようもないゴミばかりなのだ。

 俺はいつも聞かされる。そのゴミ達の無念の声を。
「俺はまだこの世に作られた任務を全うしていないのだ。どうしてこんなところに連れて来られなければならない!」
「俺はこんなところに埋められるために作られたのではない……」
 そんな声を、毎日のように聞かされていた。
「許せ、ゴミ達よ」
 奴らのそんな声を聞くたびに、俺は遣る瀬無い気持ちになり謝ったのだ。

 しかし、奴らはちゃんと知っていた。
 この俺……ブルドーザだって、やりたくて自分達を埋め立てているわけではない。同じ「もの」仲間達を埋め立てるということは極めて不本意だということを。
 だから、奴らは人間の乱暴な運転で破壊され、苦しげな阿鼻叫喚の声を上げながらもその恨みの矛先はちゃんと人間に向けていたのだ。

 ある工業系廃棄物は埋め立てられた後も雨水が透過する度に人体にとって有害な浸出水を排出しつづけた。
 またある金属系廃棄物は埋め立てられてからというもの、土壌に人体にとって有害な金属の微粒子を放ち続けた。
 そうして奴らは、憎むべき人間達に公害病という一石を投じたのだ。
 だがしかし、奴らがそうすることによって、人間だけでなく何の罪もない海の魚達や土に生える草花達をも苦しめる結果になっちっまった。
 だから奴らはこの処分場で心を痛めていて……奴らの後悔の声を聞くたびに、俺まで悪いことをしたような気になったもんだ。

 そんな俺も、ついに奴らの仲間に……廃棄される日が来ちまった。
 それは、夏の太陽がジリジリと照りつける、暑い暑い時期のことだった。新品のブルドーザが登場して、俺はお払い箱になったのだ。
 俺はこともあろうに、シュレッダーで破壊された。その痛みといったら筆舌に尽し難く……まさに地獄の苦しみだった。
 俺が今まで埋め立てていたゴミ達も、今までこれほどの苦しみを味わっていたのか……そんなことを考えてセンチな情にほだされる余裕すらなく、俺は粉々にされちまった。

 シュレッダーダストになった俺は新しいブルドーザによって埋め立てられた。
 埋め立てられた俺は、自分を利用するだけ利用してお払い箱にした人間達への憎悪の炎を燃やしていた。人間達の復讐を心に誓っていたのだ。
 その憎悪の炎は時間が経つにつれてメラメラと大きくなり……今やシュレッダーダストの山となった俺の体温は、金属微粒子の酸化反応も手伝ってメラメラと上がっていった。
 そんな俺に、周りのゴミ達も同調した。「お前が人間達に地獄の業火を味わせるなら俺達も、その炎の一助になろう」と。

 そして、そんな俺に容赦なく照りつける夏の日差しが手伝って……ついに俺は爆発した。処分場の全てを燃やし果てたのだ。

 俺は恨むべき全ての人間を燃やしたわけではない。しかし……これは身勝手な人間に対する俺の怒りの表明なのだ。
 これに懲りて人間も、処分場のゴミ達の無念を考えてやってくれ。燃え盛る炎の中、俺はただひたすらにその想いを祈った。


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