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鎌太郎さん

28歳になりつつ、ぬるぬる駄文を散らしている者です どうかよろしくお願いたします 別サイトでも小説を書いているので、良ければどうぞ https://mypage.syosetu.com/915062/

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ゴミ箱に入りたい

18/04/23 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 鎌太郎 閲覧数:254

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 ――夏の日差しの中で、ワタシは呆然と座り込んでいる。
 近所の公園。夏休みも始まったという事もあってか、学生服を着た同年代の人達や、家族連れだって目にとまる。
 そんな中、ワタシは1人でベンチに座り込んでいる。
 ……そんな虚しさを忘れる為に、横に置いてあった、温くなったスポーツ飲料を煽る。軽くなっていく手の中の重みが、その分だけ自分の体に溶け込んでいくのを、喉が感じた。
 チラリ、と周囲を見渡す。ゴミ箱は、歩くには少々億劫な、しかし投げるにはちょうど良い位置に置いてあった。
 またもチラリと、周囲を見渡す。周囲に人影はあるものの、誰もこちらを注視している人間はいない。多少のノーマナーだって許してくれるだろう。

「――えいっ」

 小さい掛け声とともに、空になったペットボトルが飛ぶ。
 我ながら見事なアーチを描いたそれは、まるで吸い込まれるようにゴミ箱の元へ向かっていき……見事にヘリにぶつかって、外れた。

「……ハァ」

 溜息が溢れる。
 こんな幸運も、ワタシにはないのか。そう思えてくると、悲しみを通り越して愉快に思えてしまうのだから、愉快なものだ。
 ……入れ直すか。
 そう思い、立ち上がろうとすると、

「ここにいたんだ」

 今1番聞きたくない声が、耳の中に飛び込んでくる。
 ……ワタシが何も言わないのを良い事に、彼女はワタシの隣に腰かけた。

「ねぇ、驚いたのは分かるけど、逃げる事ないじゃない。彼、驚いてたよ」
「……別に。ちょっと頭冷やしたかっただけ」
「親友を取られたのが、そんなに悔しい?」
「ハッ、笑わせないで。ワタシがそういうキャラじゃないの、理解してるでしょ?」
「アハハッ、そうだね、アンタってそういうタイプじゃないよね」

 彼女の笑い声が、ワタシの嘘が正常に働いている証拠だった。

 ああ、悔しくなんかない。

 ワタシが女性しか愛せないのも。
 彼女の事が大好きなのも。
 そんな彼女に恋人が出来た事も。

 全部、全部、全部、悔しいなんて感情は浮かんでこない。
 そんな気楽な感情は――浮かんでこない。

(ああ――、)

 ゴミ箱に入り損ねたペットボトルを見つめながら、心の奥底にいるワタシが、小さく呟く。
 普通の枠に入りきれず、無様に道に転げるソレに、小さく呟く。



(ワタシも、普通になりたかったなぁ)



 と。




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