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鎌太郎さん

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捨てられたゴミは、化け物に拾われる

18/04/23 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 鎌太郎 閲覧数:318

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「このゴミ野郎が!!」
 薄暗い路地裏の中、その怒声と共にオレの額に銃口が押し付けられる。
 冷たいとは思わなかった。茹だるような夏の中では、人を殺す道具だってその冷徹さを失うというものだ。
 しかし、その硬さだけは、容赦がないくらいそれが本物だと証明している。

 ――ああ、そしてその言葉は紛れもない事実。

 オレはゴミ野郎だ。社会のクズだ。捨てられるに足る、殺されるに足る理由がある。
 オレは人殺しだ。しがない極道の殺し屋。二次組織であるうちの組は、いつだって本家の体の良い掃除屋を担ってきた。
 その中でも、オレはそこそこ優秀だったんじゃなかろうか。ゴミの中でも、それなりに優秀なゴミだった。
 誰だって殺した。
 どんな場所でも、一眼につこうが何をしようが、素早く綺麗に殺せた。
 ……そう、殺せてしまった。
 結局それに意味はないんだ。だってそうだろう? 人殺しのスキルなんて、現代社会じゃ厄介者だ。
 特に日本じゃ、兵士だって兵士じゃない。警官だって無闇矢鱈を殺す事が出来ないし、しちゃいけないと国民全員が思っているだろう。
 だが、オレはどうやら、そういう“普通”の奴らとは違うらしい。頭のネジが、元からないのか途中から抜け落ちてしまったのか、とにかく無いんだ。
 歯止めや理性なんていうものを無視して、人を殺してしまう。
 法律的に許されない事は理解している。倫理に悖る行為だと承知している。社会に反する行いだと自覚している。
 それでもダメなのだ。
 “それはさておき”と、殺してしまえるのだ。
 だからこそ、ヤクザのゴミ処理係なんていうものをやっていたんだが……そんなオレもやっぱりゴミで、処分の番はオレに回ってきたらしい。
 目の前のガキを見る。赤いスカジャンを着た金髪頭、まだ二十代前半……いいや、下手をすればまだ十代かもしれない。
 大方『仕事が済んだら幹部候補だ』と言われて安易に乗っちまった、敵対する組織の鉄砲玉だろう。オレは多くの人間から恨みを買っている。そういう意味じゃ、理由なんて聞く必要性はない。
 もし、ここで素直に殺されてやりゃ、コイツはどうなるだろうか。
 銃の震えで、コイツが素人なのは分かる。きっと隠蔽なんて出来ないだろう。そうすりゃ殺人罪で、いったいどれほどムショに入るか分からない。
 それが分かっているから、連中もこんなガキを使ったんだろう。
 殺してくれたら儲けもの、程度だ。
 ――それでも、ああ。
 ここでコイツ1人ぶっ殺してまで、オレに生きる価値はないだろう。
 ゆっくりと目を閉じる。目を合わせてちゃ撃ち辛いだろうという、せめてもの配慮。これで目でも冷まして、とっとと郷里に逃げ帰ってくれる事を、願うばかりである。



 ――銃声はいつまでもやってこない。
 ――代わりにやってきたのが、肉と骨がぐちゃぐちゃに潰されるような音だった。



「……あ?」
 目を開けると、そこにはオレにも想像出来ない地獄絵図が広がっていた。日本じゃ、人間を喰ひ殺す陸上生物なんてクマくらいなものだ。
 そうであるはずなのに、目の前のソイツはまるでクマみたいなデカさの黒い“狼”だ。
「ごめんなさいね、エカテリーナ。こんな粗末なご飯しか食べさせてあげられなくて。
 でもしょうがないのよ。この国で消えても大丈夫な人間なんだもの、これくらい当然だわ」
 闇の中から、鈴のような声が聞こえる。
 見えるのは金色の双眸だけのはずなのに、オレは何となく美人な嬢ちゃんなんだろうなと思った。
 ――同時に、ソイツがまともな人間じゃねぇって事も、何とは無しに察する事が出来た。
「あら――まぁ、なんて綺麗な目なのかしら。程よく濁っていて素敵よ、ミスター。



 ねぇ、これも何かの縁だし――私の奴隷にならない?」



 ――捨てる神あらば、拾う神あり。
 だがオレのようなゴミを拾ったのは、十中八九のバケモノだった。


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