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うめさん

100均店員。アニメ、マンガオタク、歴女、最近は文学にも興味を持ち始めています。趣味が多いことが悩み。

性別 女性
将来の夢 小説家
座右の銘 志を立てて以て万事の源と為す

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私の宝物

18/04/14 コンテスト(テーマ):第155回 時空モノガタリ文学賞 【 ゴミ 】 コメント:0件 うめ 閲覧数:329

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私は普通の人間ではなかった。普通の人間がゴミだと思うものを私はゴミとは思えなかった。街行く人が捨てて行くそれらを私は美しい、と思ってしまう人間だった。逆に普通の人間が綺麗だ、と思うものを綺麗だとは思えなかった。何もかもが普通の人間とは違っていたのだ。何故か、はわからない。気がついた時にはそうなっていた。そんな私が普通の人間たちと一緒に暮らすなんてことはもちろんできなかった。私はずっと一人で生きていた。それを苦しい、とか寂しい、とか思ったことはない。そんな感情は私にはなかったから。いつだって私の人生は楽しかった。人々が捨てて行く“ゴミ”と呼ばれるものを私は拾って丁寧に箱に入れて飾っていた。そうしていつしかそれらは私の部屋に置いておける数ではなくなってしまったのだ。困った私は一つ、大きな場所を借りて私の宝物たちを保管した。私はそこでふと思い出したのだ。そういえばずっと昔、親に連れられてこういう所に行ったことがあるな、と。そこにはいわゆる人々が美しいと思われるものが飾ってあった。私にその美しさを知ってほしくて連れてきたようだけど残念ながら私にはわからなかった。このままこうして置くのもいいけれどあそこで見たように私の宝物たちにコメントをつけたり名前をつけたりして人々に見てもらえるような、そんな場所にしてもいいかもしれない、なんて馬鹿なことを思いついてしまった。誰もこんな物見たくないだろう。だけどもしかしたらこの広い世の中、私のような人間が他にもいるかもしれない。そんなもしもを信じて私は行動を起こした。
そこからは大変だった。私の夢を実現するために会わないといけない普通の人間たち。誰もが私のことを奇妙なものを見るかのような目で見てきた。その目には慣れているからどうでもよかったけれどどうにか話を聞いてもらいたかった。初めてできた夢なのだ。普通の人間が汚い、と思うものを展示している施設だなんて存在するべきではないとはわかってはいる。だけど、世の中にはきっと、私以外にもこれらを愛するものがいるはずなのだ。自分たちが見ているものだけを普通、だと思わないでほしい。そう、切実に願いながら問いかけた。そうして、行動に移してから一年。ようやく形にして公開することができた。最初はやはり全く人は来なくて関係者の方からほら見ろ、という目で見られていた。だけど私はめげなかった。私は昔からよく絵を描いていた。私が美しい、と思ったものたちを残すために。その時得た力が役に立った。この施設を宣伝する為にポスターを描いたのだ。普通の人間がたくさんいる中を歩いてポスターを貼りに行くのはなかなか勇気がいることだった。それでも見て欲しいから。知って欲しいから。


「へー面白そうな展示会ですね」


ポスターを貼っている後ろから突然声をかけられはっと振り返ればそこには世間で言われているいわゆるイケメン、という人種が立っていた。私にはわからないけれど。

「こう言うの少し興味あるので今度行きますね」

男性はそう言って優しく私に微笑みかけて去って行った。

それから少しして本当にその男性は来てくれた。館内にいるのは私とその男性の2人だけ。男性は私に軽くあいさつだけをして私が展示をしたいわゆる“ゴミ”や“ガラクタ”と呼ばれる物の数々を真剣に見てくれた。
その表情に私の心臓はどくん、と高鳴った。

「とても素敵なコレクションですね。自分たちが見ているものだけを普通だと思わないでほしい、その言葉にとてもどきっとしました。あなたのような人が増えてくれたらいいと僕は思います。ここと、あなたのことが気に入ってしまったのでまた来ます」

それでは、と丁寧にお辞儀をして男性は去って行った。私は一瞬何を言われたのかわからなかったけれど冷静になってはっとした。ここだけではなくあの人は私のことも気に入ったと言っていた。また、来てくれる、と。誰かが私に会いに来てくれる、と言ってくれたこと今までなかったから驚いた。なんて言葉を返したらいいのかわからなくて何も返せなかったけれど今ならわかる。

もし、今度また会えたのなら、その時は最後は嬉しい、という気持ちとありがとうございます、また来てください、をちゃんと伝えよう。


私は今、初めて自分が普通の人間ではなかったことに感謝をした。だって、もし私が普通の人間だったのならば彼と仲良くなることはなかったかもしれないのだから。


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