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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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幽霊遭話

12/12/28 コンテスト(テーマ):第二十二回 時空モノガタリ文学賞【 お寺 】 コメント:8件 石蕗亮 閲覧数:2630

時空モノガタリからの選評

最終選考

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 物書きを生業としている私はネタを探してとある寺を訪れた。
この寺では幽霊がよく出ると有名だったので何かしらネタを得られるだろうと期待して住職に話を聞いた。
前もってアポをとっておいた私はその寺を訪れるとお堂に通された。
案内してくれた人は間もなく住職が参りますのでと言い席を外した。
間もなくして住職がお待たせしましたと言いながら現れた。
私は早速話を伺うことにした。
「御坊、幽霊とは一体どんなものなんですか?」
「お前さん、幽霊に会いたいのかね。」
「いやぁ、会いたいというわけではないんですが。御坊は会われたことはおありで?」
そう聞くと住職はニコニコとしながら「毎日さ。」と答えた。
「幽霊はな、自分と縁があるものしか会うことはできんのよ。」
「縁ですか?」
「そうさね。たとえば血縁や結婚相手などじゃよ。」
「じゃあ遭遇できる幽霊は祖霊や家族、一族の者に限られるんですね。」
「まだ他にも縁はあるじゃろう。」
そう言うと住職はふふふと含み笑いをしながら、わからんか?という顔をしてこちらを見つめた。
他に何があるだろうかと首を傾げ頭を捻らせたが思いつかない。
「御坊、もったいぶらずに教えてくださいよ。」
「恋慕の情や怨嗟の念も縁になるんじゃよ。」
言われてハッと気がついた。
確かに幽霊が怖がられる一番の理由はそれが自分に向けられるものが恨みだった時だ。
「こ、怖いですねぇ。」
「そんなことはないさ。恨みを買わなければいいだけじゃないか。恋慕の情ならば乙なものだとは思わないかね。死んでからも自分を想ってくれるなんて冥利に尽きるもんだと、ワシは思うがねぇ。」
「そうかもしれませんね。」
そう答えながらも乙だとは思えない私は少し引きつった笑みを浮かべ答えながら、ここまでの話をネタ帳にまとめてみた。
血縁や婚姻による縁者、恋慕や怨恨など強い想いによる縁のあるものが遭遇できる幽霊。
そこまで書いて住職に確認すると「概ね合ってる。」と答えられた。
何かひっかるなぁと思い「まだ他にもあるんですか?」と尋ねると「あとひとつある。」と住職は答えた。
「これは幽霊とはちと異なるんだがね。想いによるものは別に“死んでなくても”霊になることもある。」
「えぇ!死んでないのに幽霊ってどういうことですか?」
私は興奮気味に住職に尋ねた。
「生霊だよ。」
「生霊?」
「生きてる人間の想念が想い主から離れて相手に取り憑いたものを生霊と言うのじゃよ。」
「幽霊と同じくらい怖いですね。」
「そうかい?幽霊も生霊も怖いものではないと思うがねぇ。」
「そうですか?」
「幽霊も生霊も、何かしらも想いの表れだからねぇ。」
「そい言われればそうですが。」
「幽霊とはね、普段見えないもんだろう。その時はあちらからも見えてはいないんだ。どちらかから一方的に見えているわけではないのだよ。だから見えている時は自分に縁があった誰かが、自分に何か伝えたいことがある時なんだよ。」
「そういうもんですか。」
私は住職の話をネタ帳に書きとめながら聞き続けた。
「そういえば。」
私はふとした疑問を住職に投げかけてみた。
「御坊は何故そんなに幽霊に詳しいのですか?」
私の問いに住職はふいを付かれたように笑い声を上げた。
「何をおっしゃるかと思えば。拙僧は坊主ですから葬式を挙げた数だけ縁がありますよってな。」
確かに、なるほどと、私も自分の質問の間抜けさに笑い声を上げた。
「ではそろそろ貴方の遣り残した想いでも聞きましょうか。」
住職が変なことを言い出した。
「は?」
「おや、お気づきではないのかね。お前さんは今日ここでワシがお経を上げた仏さんじゃよ。」
そう言われ私は呆然としペンを落とした。
死んでいる?私が?
ふと目を外に向けると窓の外には私の家族たちが喪服姿で並んでいた。
「仕事熱心なのはいいが、過労でそのまま逝ったそうだよ。」
「私はもう作品を作れないのか。」
「お前さんとの今日の会話は、このあと来る作家の先生に紹介して作品にしてもらうようお願いするから。きっと作品として世に送り出すから。お前さんはもう逝かないといけないよ。」
「そうでしたか、お恥ずかしい。御坊、このこと、家族にも話して聞かせてやってください。」
そういうと私は家族と共に墓へと向かった。

後日、とある怪談作家の書いた私と住職の対談が収められた本を住職が墓に供えてくれた。
「あ、夢でも死んだ者と逢えるが、これは幽霊扱いになるのかねぇ?今度夢師にでも尋ねてみよう。」
住職の言葉に私の興味が沸いてきた。どうやらまだ成仏はできないようだ。
でも夢師に縁の無い私はどうすればいいのだろうか。
今度住職の夢枕にでも立って聞いてみようと思う。


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このストーリーに関するコメント

12/12/28 草愛やし美

石蕗亮さん、拝読しました。

なるほどと、思わず身を乗り出してしまいました。幽霊と生霊は想いの表れということで共通のものなんですね。ご住職さまの話に、いちいち頷いてました。

まるで、この話はご住職さまに聞かれて亡くなった物書きさんの想いを書き留められたものではないかと……。超怖がりの私ですが、幽霊たちが、怖いもので少しだけなくなった気がします。でもやっぱり出てきて欲しくはないですが(苦笑)

12/12/28 石蕗亮

草藍さん
いつもありがとうございます。
今回も楽しんでいただけたのであれば幸いです。
実は御坊のお話はもう1話出る予定です。
幽霊の遭遇についての説明は私の今までの経験談でもあります。
縁もゆかりもない幽霊とは対面することはありませんので、出会うとすれば身内がほとんどですから怖くないですよ^^
大抵の場合は私たちの心配をして、警告のために出てきてくれることがほとんどなのです。
だからありがたいものなのですよ、幽霊との遭遇は本来。

12/12/29 笹峰霧子

このお話を読んでいたら、幽霊とおばけとは別物だとわかりました。
幽霊は生前身近にいた、自分にとっては会いたい人。だから大いに歓迎すべし……そのようなことでしょうね。
御坊さま、ありがとうございました。幽霊に囲まれてお正月を迎えたいものです。

12/12/29 泡沫恋歌

石蕗亮 様。
拝読しました。

いつもね、石蕗さんの書かれる、ちょっと怖い話を楽しみにしています。
実は私って凄いビビリで怖いものは苦手なんですけど・・・
ホントは大好きなんです♪(屈折した感情?)

だから、程よく怖くて、分かりやすく、楽しい石蕗さんの作品のファンです。

12/12/29 そらの珊瑚

石蕗亮さん、拝読しました。

生霊も幽霊も、その自覚はないのかもしれません。
読み終わって、自分のほほをつねってみました。
痛いので、私はまだそのどちらでもないと勝手に納得(笑い)です。

12/12/30 石蕗亮

笹峰霧子さん
コメントありがとうございます。
元々霊という言葉はありますが、幽霊や地縛霊、守護霊という言葉は造語で本来ある言葉ではないそうです。
おばけはお化けで変化する怪異を指し、狐狸妖怪の類に向けられた言葉のようです。
好きだった身内には逢いたい気もしますが、冥福を祈る気持ちが勝ることが多いです。

12/12/30 石蕗亮

泡沫恋歌さん
いつもありがとうございます^^
私は幽霊や怪異よりも生きてる人間が一番怖いです(笑)
だって確実に存在し、物理的に影響を及ぼしますからね。

これからも楽しんで頂ける怖いお話を書けるよう頑張りますね。
ファンだと言って頂けるなんて嬉しいです♪
ありがとうございます!

12/12/30 石蕗亮

そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
って言うか、まだ生きてますよね!?
まだまだそらの珊瑚さんの作品、楽しませてくださいね!
確かに幽霊の中には自分が霊であることに気付いていないのも多いですね。

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