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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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だってイチゴ大福

18/04/02 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:2件 むねすけ 閲覧数:295

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 復讐代行「ブラックムーン」の表の顔は垢抜けない純喫茶店。コーヒーにやかましい客にインスタントコーヒーを出す悪癖を持った髭店主黒田聡平、黒田の姪っ子看板娘の弥生ちゃん。黒田の古女房律子さん、バイトのボーイ哲哉君。郊外の閑古鳥も鳴き疲れたシャッター商店街、理髪店の二階で今日も拘らないコーヒーと、美味しい卵サンドで裏の稼業を覆い隠していた。
「モーニング、サラダはトマトメインの方ね」
「かしこまりましたー」
「ホット、ブラックと卵サンドお願いします」
「少々お待ちください、ごゆっくりどうぞー」
 男性客には弥生ちゃんがミニスカートから膝小僧の無料サービスで接客し、女性客なら美青年哲哉君がカットソーからセクシーな鎖骨を無料サービスでエスコートする。
 やる気のない黒田が無気力に不潔な咳ばらいを繰り返しても、彼らの魅力的な肉体のパーツによって、固定客は上々についていた。
「アイスコーヒーね、ガムシロップ二つ頂戴」
 ピクリ。黒田の目に生気が宿る瞬間。裏の稼業への入り口となる合言葉の一個目を踏む客の到来だ。黒田はループタイを擦って高揚した掌の汗を拭う。
「お客さん、すいませんが、二個目のガムシロップはお代を頂きますが」
 弥生ちゃん、もしくは哲哉君のこの言葉に、
「なんだ、サービスの悪い店だな」と客が返す。黒田はカウンター内でコーヒー豆を挽き始める。
「マスター、その音うるさいよ、後にしてくんない?」と、客がクレームを入れる。
「すいません、失礼しました。奥でお詫びを」ここまでが合言葉だ。
 退屈に欠伸を連発していた黒田の背筋が伸び、弥生ちゃんの膝小僧が武者震いで笑い出し、哲哉君の鎖骨が返り血の味を思い出して舌なめずりをする。律子さんは表の仕事も裏の稼業も、区別なく愛していたので態度は変わらない。
 復讐代行「ブラックムーン」に、今日も合言葉が聞こえる。
「アイスコーヒーひとつ、ガムシロ二個くれる?」
 扉をカラコロ鳴らし、後ろ足の踵でピシャッと押し込むと、脱兎のようなスピードでカウンター席に座って少年は言った。黒田は長年の癖で掌に汗をかいて喜んでしまったが、チっと心で舌打ちをする。これだからネット社会は嫌いだ。何処のどいつだ、小学生の目につくとこに物騒なこと書き込んだ輩は、けしからん。
「お客さん、申し訳ありませんが、ガムシロップ二つ目からお代頂いてますが」
 弥生ちゃん、すっかり可愛い依頼者に母性本能をくすぐられちゃっていた。馬鹿野郎、小学生が保護者なしで喫茶店に来ちゃいかんだろう。まして、裏の注文をまともにとりなしてどうするんだ。困った姪だと黒田は呆れていた。
「サービスの悪い店だな」
 黒田にはそのつもりがなかったが、弥生ちゃんのウィンクに降参して豆を挽く。話だけは聞いてやろうか、大人だもんなと、黒田は心で溜息をつく。
「おじさん、音がうるさい、僕が帰ってからにしてよ」   
「あーもー、うるせーガキだな」
「ちょっとマスター」
「いいんだよ、ここで話聞いてやる。客はこの坊主一人だ。哲哉君、看板クローズ!」
「あ、はい」
 黒田の短気で少々形式が崩れたが、少年はクライアントになる。ガムシロップも二個もらってご満悦だ。
「物騒だな坊主。復讐って知ってるか? 予習の反対のあれじゃねんだぞ」
「つまんないよ、おじさん」
「ねー」
「弥生までなんだ」
「あら、失礼」
「姉ちゃんに仕返ししたいんだよ。やってよ」
 少年の声のトーンが澄む。瞳にチラリと過去の瞬きが宿ったのを律子さんは見逃さなかった。
「お姉ちゃん、死んじゃったのかい?」
 黒田、弥生ちゃん、哲哉君はギョッとする。どうして律子さんたらいつも気が付くんだろう。奇妙な一瞬に。
「おばちゃんは凄いね。おじさんと大違い。おじさん髭剃りなよ、汚い」
「このガキ」
「で、復讐はお姉ちゃんにしたいんだろ?」
 黒田が少年のアイスコーヒーをインスタントにしなかったことを後悔している時、律子さんは少年の表情から全てを悟っていた。
「幽霊相手は初めてだけどさ」
「任しときなよ、少年」
「面白そうっすね」
「う、受けねーぞ、コラ」
「伯父さんったら怖がり―」 
「マスター、その年で幽霊怖いとか、可愛くないっすよ」
「この件は受けます。三人でもね」
「んんー、なんだよ、もう、おい、坊主。姉ちゃんに何されたんだ、それ次第ってことにしてやるよ」
 少年はストローをベロにくっつけて遊んでから、律子さんを見つめて言った。
「僕のイチゴ大福食べやがったんだ」
 復讐代行「ブラックムーン」で、食いしん坊な幽霊への仕返し策が練られる。
「イチゴ大福! それはゆるせーん」
「死をもって償わ……、じゃねーか」
「無念だったろうね。もう大丈夫だからね」
「俺抜きでやってくれ」
 黒田は怖がり。  
 
 
  


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このストーリーに関するコメント

18/04/24 haru@ソラ

亡くなったお姉ちゃんがいちご大福を食べちゃったからと言う理由がなんとも可愛らしいと思いました。

18/04/24 むねすけ

haruさん
そこの可愛さと、幽霊の怪奇と仕返しを練る一体感、楽しさを書ければと思った作です
結果的に書きたかった部分まで字数が許さず、ワンシーン的になってしまったと反省しておりました
評価・コメント頂けたことで救われた気持ちです
ありがとうございました

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