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天宮トウキョウさん

現世協会という集団で会長(リーダー)を務めております。作詞、作曲、編曲、DTM、歌唱、ギターを担当しております。

性別 男性
将来の夢 作家兼アーティスト
座右の銘 ぽんぽんぽんというリズムで

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日常とは

18/03/15 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 天宮トウキョウ 閲覧数:387

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 二時間目の数学の授業中、突然ひどい腹痛に襲われ、僕は手を挙げた。
「どうした?」と先生が言った。
「腹痛がひどいので、保健室に行ってもいいですか?」
「大丈夫か?保健委員の人は?」
「はい、私です。」と一人の女子生徒が手を挙げ、僕の方へ近寄ってきた。
僕はその女子生徒のことを少し憎らしく思った。今から僕を保健室に連れて行く間、授業を抜けることができて嬉しいというような表情を浮かべていたからだ。
「頼んだぞ」と先生が言った。
「はい!」その女子生徒は元気よく返事をし、僕を気遣う言葉を少し大きな声で発しながら、
僕を教室のドアの方へ誘導した。教室を出てから、その女子生徒は一切言葉を発さなかった。保健室までの道のりが、やたら長く感じられた。保健室に着くと、先生に症状を説明した。
「二時間目の途中から、急にひどく右腹が痛くなりました。」
「あら、熱を計ってみて。」保健室の先生はそう言うと、僕に体温計を渡した。付き添ってきた女子生徒は僕の斜め後ろにぼーっと立っていた。
「先生に二時間目は保健室で様子を見るって伝えておいてくれる?」保健室の先生は付き添いの女子生徒に言った。
「はい。」女子生徒はそう言うと、そそくさと保健室を後にして教室に戻って行った。
「ピピピ」と計測完了を知らせる音が保健室に鳴り響いた。僕は脇から体温計を抜き、確認すると、三十七度三分だった。
「微熱ね。とりあえず二時間目は保健室で寝ていなさい。風邪からくる腹痛かもしれないわね。」体温計を見ながら保健室の先生は言った。
「はい。」
僕はその後、ベットに横になり眠りについた。
 チャイムの音で目が覚めた。おそらく、二時間目の終わりを告げるチャイムだろうと僕は思った。チャイムが鳴り止むと、ベットのカーテンを開け、保健室の先生が入ってきた。
「二時間目が終わったけど、調子はどう?」
「まだ右腹が痛くて熱っぽいです。」
「微熱もあるみたいだし、今日は早退したら?」。
「そうします。」
そんなこんなで、僕は早退することとなった。
僕はその後、教室に戻り、先生に連絡をし、帰る準備を終わらせ学校を後にした。
腹痛と熱に耐えながらの帰り道はとても辛かった。雲の多い七月の空は今にも、雨が降りそうだった。学校から家までは歩いて十分程度の距離なので、さほど遠くない。だらだら歩いてしばらくすると、家に着いた。
 僕の住む家は二階建ての一軒家だ。玄関の鍵穴に鍵を差し、ドアを開けた。そして、靴を脱ぎ、リビングに向かった。リビングのドアを開けると同時に母が弟の部屋へショートケーキを持って入っていくうしろ姿が見えた。弟の部屋はリビングに隣接している。弟は小学五年生だ。今朝、「今日は学校の創立記念日で休みなんだ。」と言っていたことを思い出した。僕は鞄を置いて、ひとまずソファーに座った。すると、ドアが半開きになっている弟の部屋から、母親の信じがたい言葉が僕の耳に飛び込んできた。
「ショートケーキよ。お兄ちゃんには秘密だからね。」と母は言ったのだ。
「秘密・・・。」僕はショックのあまり、固まってしまった。母が弟の部屋から出てくるのとほぼ同時に僕はリビングを後にし、玄関から一番近い僕の部屋へ向かった。
「あら、もう帰ってたの?」何事も無かったかのような母の声がうしろから聞こえたが、僕は無視をして、部屋へ入った。僕は腹痛を忘れるくらいのショックを受けた。なぜなら、僕が生まれて、十四年間、弟と僕は完全なる平等という環境で育てられてきた。例えば母にスナック菓子を買ってもらうとき、母は全く同じ商品を二つ買ってきて、ひとつずつ僕と弟に手渡す。誕生日プレゼントも、全く同じ金額のものを僕、弟、それぞれの誕生日に手渡す。僕だけ優遇されるという事ももちろん無かったし、弟だけが優遇されるということも無いと信じていた。というよりも、無い事が当たり前だと思っていた為、弟だけが母に優遇されているという発想が湧かなかった。さっき母の発した「秘密」という二文字が僕の頭の中を激しく駆け巡る。もしかすると、僕は今までずっと、母に騙されていたのではないかと思った。母は僕と弟に対して平等に接しているように見せかけていたが、実際は僕に気づかれないようにずっと弟を優遇してきたのではないかと思った。僕の今までの人生が崩れていく気がした。
 あの日から、僕は誰の言葉も信じる事ができなくなった。何を言われても嘘のように聞こえてしまう。そして、あの日から僕は自分の部屋に閉じこもるようになった。今朝もいつも通り、母が部屋の外から僕に声をかける。
「おはよう。調子はどう?部屋から出たくないなら無理して出てこなくていいからね。」
僕もいつも通り、母に何も返事をしなかった。僕は部屋に閉じこもるようになる以前の過去に対して復讐をしている。


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