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トミザワ 鏡太朗さん

しいたけの事について真剣に考えている

性別 男性
将来の夢 物を書いてお金になればいいな
座右の銘 最悪死ぬだけ!!!

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あの時のスープの

18/03/11 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 トミザワ 鏡太朗 閲覧数:460

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お前がここに足を踏み入れたのは
お前が招いたことだ


パチンコにハマり、家庭を壊し
ついに月々の支払いも首が回らなくなった。
そこに、パチンコ店の店員としてお前に近付き
当たる台を密かに教え、ギャンブルに溺れさせた
俺の意思が少なからず入っていたとしても
お前が招いたことだ。

お前がパチンコ屋に通うようになったわけ、
職場での人間関係のイザコザだが
掃除夫として社内に潜り込み、
有ること無いこと吹聴して歩いた俺がいたとしても
それは元のお前の人望と信頼のなさが招いたことだ。

ヤミ金のチラシ配りのふりをして、
お前をここに連れてくることも容易かった。
さすがに次の日に来るとは思わなかったけどな。
お前が招いたことだ。


「100万の融資ね、分かったよ。随分ギャンブルに注ぎ込んだんだねぇ」

「ええ、まぁ…人生っつーのはこう…
うまくいかないものなんですねぇ」

汗を拭いながら苦笑いするお前が
あの時よりもずっと小さく見える。


「じゃあはい、100万」

「いやぁ〜ありがたい。もうどこも貸してくれなくて…娘の養育費も支払わにゃいけんですしねぇ…」

封筒の中身を出しもせず、足早に去ろうとする。

「まあ待て。どうせろくなもん食ってないんだろう?ラーメンでも食ってけよ。」

俺は一杯のラーメンを差し出す。


「ところで聞きたいことがあるんだが。」

「えっ?身分証ならさっき出したじゃないですか?」
差し出したラーメンを啜りながら、男は面倒そうに答える。

「いや、そうじゃない。そのラーメンの味だ。どんな味がする?」

「味、ですか?んー普通の塩ラーメンっすよ。ちょっと脂っこさが口に残るけど、それがまた染みますねぇ」


そうか、じゃあ俺もそろそろ教えてやらなきゃいけないな。
数十年前に聞かれた味の感想を。


「食いながらでいい、聞いてくれ。俺は昔、サスケって名前のハムスターを飼ってたんだ。夜行性のくせに、いつも俺が学校から帰るのを待っててくれた。」

「へぇ?そりゃさぞ可愛かったでしょうね。」

「ところが、ある日俺が学校から帰ると、サスケがいないんだ。」

「脱走っすかねぇ、小動物あるあるの…。」

「サスケが入ったラーメンを食べさせられたのは、次の日のことだったよ。」

「…。」


誰かが俺の部屋からサスケを盗んだ。
誰かがサスケを煮込んだ。
それを俺に食わせた。


「お前はあの時、俺にどんな味か執拗に聞いてきたな?」

お前のみるみる顔が固まっていく。

「あのとき一番許せなかったのは、サスケを殺したお前じゃない。虐められてただ泣くしかできなかった自分自身だ。」

「おい、お前まさか………ごめんて、あん時は俺もガキだったしよぉ。」

「あのラーメンの味、獣臭くて最低だったよ。」



その時、携帯が鳴った

〈あなた!麻美を知らない!?帰ってこないの!!〉



今お前が食べているラーメン、それはお前が招いた結果だよ。
少々塩が効いた、脂っこいラーメンがね。


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