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葉月三十さん

葉月三十で「はづきみそ」と読みます。 日本文化と漫画が大好き。 もそもそと書いていこうと思います。

性別 男性
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座右の銘 後悔先に立たず

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分からないもの、分かるべきもの

18/03/06 コンテスト(テーマ):第154回 時空モノガタリ文学賞 【 復讐 】 コメント:0件 葉月三十 閲覧数:521

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 真の復讐とは何なのか。A男にはついぞ分からなかった。

 小学、中学高校と、A男はいじめを受けた。端から見たら些細なこと、だがA男がいじめだと感じていれば、それはれっきとしたいじめなのだ。
 だが、教師も親でさえも、A男の主張を真に受けなかった。「A男は気にしすぎなんだ」
 そうして何のフォローもなく過ぎていった学生生活は、A男にとって地獄以外のなにものでもなかった。A男は親の反対を押しきって、大学には進学しなかった。
 幸いにも、就職先ではA男をいじめるような人間はおらず、だがA男が穏やかな毎日を送ることはなかった。
 A男は復讐を心に誓っていた。まずはじめは、親を捨てるところから。A男はある程度の金が貯まるや、家を出て独り暮らしを始めた。
 そこから約三年、A男は死に物狂いで働いた。働くことは苦ではなかった。むしろ、楽しかった。それは、復讐の日への待ち遠しさからだ。
 そしてそれを実行に移したのは、A男が二十二になった年のことだ。
 A男をいじめていた人間の身辺調査を探偵に依頼する。そして得た、世間に憚られる秘密を暴露して、いじめた人間たちの就職活動を台無しにしたのだ。
「ざまあ見ろ、いい気味だ」
 初めてA男は清々しい気持ちを得た。だが、それは長くは続かなかった。
 もやもやと燻る何かは、日に日にA男を蝕んでいく。
 復讐をやりとげてから数年、A男は職を失った。報復されたのだ。
 だがA男は憂いていない。むしろ、
「はは。あはは。次こそ完膚なきまでに潰してやる!」
 復讐は生きる糧になる。反面、復讐は身を焦がす。
 復讐に蝕まれ五十で早死にするまで、A男には本当の復讐というものが、ついぞ分からなかった。
 本当の復讐とは、復讐に囚われず――恨みすら忘れて人生を全うすることなのだ。


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