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みやさん

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天使の報酬

18/03/05 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 みや 閲覧数:378

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ママをひとりじめしたい。
それが四歳の郁弥の今の願いだった。

弟の和弥が産まれて半年、ママは赤ちゃんの和弥にかかり切りで、郁弥をあまり構ってくれなくなっていた。郁弥は毎日昼間は保育園で過ごし夜は早く寝かし付けられ、ママと遊ぶ時間なんて殆ど無い。
保育園がお休みの週末にはママは弟の和弥と一緒に実家に帰ってしまい、郁弥はパパと二人きりで過ごすことになっている。

ママが弟の世話で大変なのだという事は四歳の郁弥に理解出来るはずなどなかった。
弟が産まれるまでは自分だけのママだったのに、自分だけに愛情を注いでくれていたのに…郁弥は寂しかった。

週末の昼下がり、いつもの様に郁弥はパパとファーストフードの簡単な昼食を済ませて一緒にアニメのDVDを見ていた。仕事で疲れているパパはいつの間にか眠ってしまっていた。
郁弥が一人で寂しくDVDを見ていると、リビングのその部屋に、郁弥と同じ歳くらいの子供がいつの間にか郁弥の隣に座っていた。
その子供の背中には白い羽があった。郁弥はいつかママと一緒に読んだ絵本に出て来た天使みたいだ、と思った。

「君は天使なの?」
不思議そうに郁弥は尋ねた。
「君がそう思うんならそうなんだろうね」
天使のような子供はそう答えた。
郁弥は何がなんだか良く分からなかったけれど、一人ぼっちよりは全然心地良かった。

一緒にアニメのDVDを見ていると、天使のような子供があれは何?とリビングにあるお菓子の缶の空き箱を指差して郁弥に尋ねた。そのお菓子の缶の空き箱は、ママとパパと以前に行った遊園地で買って貰ったお菓子の箱だった。

「これはぼくの宝箱なんだ」
郁弥は嬉しそうにお菓子の缶の空き箱を取ってきて天使のような子供に見せてあげた。

「すごい。色んな物が入ってるね」
そこには郁弥の大好きなアニメのシールや大好きな特撮物のヒーローの小さなフィギュアや飴玉の綺麗な包み紙などが大切そうに入っていた。

「ぼくの大好きなものばっかりだよ、すごいでしょ?」
「うん、すごい。大好きなものがいっぱいなんだね」
「あーあ、ママも宝箱に入れてひとりじめしたいな…」
郁弥は悲しそうにそう呟いた。
「ママをひとりじめしたいの?ママが大好きなんだね」
天使のような子供はいたずらっ子のように微笑んだ。

「僕がママをひとりじめ出来るようにしてあげる」
天使のような子供がまたいたずらっ子のように微笑んだ。
「そんな事出来るの⁈」
郁弥はドキドキしてきた。ママをひとりじめ出来たらどんなに良いだろう。

「簡単だよ」
天使のような子供が指をパチン、と鳴らすと宝箱の中にママの写真が現れた。
「すごい!魔法みたい!…でも写真じゃなくて…」
写真じゃなくて本当のママをひとりじめしたいんだ。郁弥はしょんぼりした。


ヴー、ヴー、とパパのスマートフォンがリビングのテーブルで振動している。パパは目を覚まして眠気まなこでスマートフォンの通話ボタンを押した。

「え…」
その後は言葉にならなかった。パパはただ放心状態でスマートフォンを握りしめている。
「パパ、どうしたの?」
「郁弥…ママが…ママが交通事故で…事故で即死だって…」
郁弥にはその言葉の意味が理解出来なかったが、心がザワザワとざわめき始めていた。

パパは慌てて出掛ける用意をして、郁弥の腕を掴んだ。郁弥が振り返ると天使ような子供はリビングでにっこりといたずらっ子のように微笑んでいた。

「これでママは君だけのものだよ」


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