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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

性別 男性
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ゴクロウさん

18/03/04 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:405

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『金ガ欲シケレバ働ケ。男ガ欲シケレバ貢ゲ。物ガ欲シケレバ買エ』

 AIロボット『ゴクロウさん』は、電源を入れるとまず、そのフレーズを喋りだす。ゴクロウさんは、主に専業主婦の為に開発された、主婦の働きに応じて報酬を与えることができるAIロボットだ。
 ゴクロウさんの両目にはビデオカメラが搭載されており、家にいる特定の人間の行動を一日中監視することができる。その人間が半径二メートル以上離れそうになると、自動で近づくようになっている。就寝前に、ゴクロウさんにむかって「報酬ちょうだい!」と叫ぶと、ゴクロウさんの口から自分の働きに応じた金額が書かれた小切手が出てくる。また、ゴクロウさんの胴体にある液晶パネルから通信販売サイトにアクセスすることが出来、小切手の代わりに商品を選択することも可能だ。
 ゴクロウさんは、自分の頑張りをなかなか旦那に認めてもらえない嫁の為のロボットである。給与が発生しない家事に給与が発生するのだ。また、仕事に出ている旦那が、一日中家にいる嫁を監視する為のロボットでもある。頭金なしで手に入れることができる代わりに、毎日の給与から少しずつ引かれる。


 専業主婦のミサコも、ゴクロウさんを購入した。何不自由なく生活できるだけのお金を入れているつもりだった夫のヒロシにとって、ミサコのその行動は不可解だった。
「なにか欲しいものがあるのか?私の収入だけでは不満なのか?」と尋ねても、答えをはぐらかされてばかりだった。しかも、夫が見る限り、ミサコは一度もゴクロウさんに向かって「報酬ちょうだい!」とは叫ばなかった。では何のためにミサコはゴクロウさんを購入したのだろうか。

 その答えをヒロシが知ったのは、ミサコが亡くなったあとだった。
 
 ミサコは医者に、余命半年の宣告を受けていた。末期ガンで、手術もできない状況だった。ヒロシは悟った。ミサコがゴクロウさんを購入したのは、ゴクロウさんに搭載されているビデオカメラに、自分が生きた記録を残す為だったということを。

 ゴクロウさんが撮影したビデオの中に、彼女が亡くなる数日前、ヒロシに内緒で彼女がゴクロウさんにこう訴えかける映像が残されていた。

「ねぇ、ゴクロウさん…報酬ちょうだい。わたしが欲しいのはひとつ。時間をちょうだい。私にもっと、もっと時間を。お金も物もいらないから。私があの人と過ごせる時間をもっと……!おねがい……もっと、生きたいの…」



『金ガ欲シケレバ働ケ。男ガ欲シケレバ貢ゲ。物ガ欲シケレバ買エ』

 電源を入れると毎回そう喋りだすゴクロウさんに、ヒロシは尋ねた。

「金が欲しければ働けばいい。男が欲しければ貢げばいい。物が欲しければ買えばいい…か。じゃあ時間が欲しければ、どうすりゃいいんだよ…」

 ヒロシのその問いかけに、ゴクロウさんは、なにも答えず、ただ黙ったまま。


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