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つつい つつさん

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美しい宇宙

18/03/02 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:397

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 最初に光が生まれた。広大で無限の闇に覆われた空間に光がどんどん浸食し始めた。神様はここに新しい宇宙を造ることにした。
「神様、次はどうしましょう」
 南西の第114エリアを造り終えた天使が次の指示を待つ。神様は大きな地図を広げると、「こういうのもいいかな」と大きくうなずき設計図をささっと書くと天使に渡しました。
「わあっ、流れ星が巡回しながら航路を描く星雲ですか。ロマンチックですね」と、天使が感心する。
 北の第3444エリア担当の天使が焦った様子で神様の元へ飛んでくる。設計図を見せながら「ここがうまくいかないんです」と、困りはてている。
「ふむふむ、これだと大地と天空が安定しませんか?」と、神様が聞くと天使は「はい、どうしても天空がずれてきて大地と重なり合わないんです」と切実に訴えた。
「じゃあ、材質を変えましょうか。重量を全体的に三分の一の質量にしてみましょう」と神様がアドバイスすると天使は「そうか、わかりました」と元気よく飛び去っていきました。
 宇宙を造り始めて幾ばくかの時間が流れましたがそれを手伝う何百何千の天使達はみな一様やり甲斐を感じて満足げな表情でせっせと働いていました。なにしろ今の天使達は前の宇宙が出来た後の世代だったので、宇宙創造の仕事は初めてでした。今までも宇宙の管理、安全の為に一生懸命働いてきましたが、やはり新しい宇宙を一から造ることは新鮮で天使達にとって全てが魅力的な仕事でした。
 癒しの光溢れる天使の休憩所では、毎日忙しく動き回っている天使達が束の間の休息を楽しんでいました。
「僕の担当したエリアでは星々を行き交う雨が綺麗なんだ。君にも見せてあげたいな」
「僕の造った星はすごくデリケートなバランスで成り立っているんだよ。ほんと難しかったんだ」
「神様に褒められたんだ。君の働きは見事だって」
 天使達は思い思いに新しい宇宙について語り合いました。そこでのもっぱらの話題は自分の担当した宇宙の自慢と、宇宙の完成の暁には与えられるだろう褒美についてでした。
「たぶん一番頑張った天使は、次の神様になれるんだよ」
「自分の担当した宇宙の管理権が貰えるんじゃないか」
「いやいや、バカンスが与えられるんだよ。自分の好きな宇宙で何万年も休んでいられるんだよ」
 天使達はそれぞれにやがて与えられる褒美について想像を膨らませました。そして、いつか来る新しい宇宙の完成の日を夢見てそれからもせっせと働きました。
 それから何万光年の時間が流れ、ついに新しい宇宙の完成を迎えました。神様と天使達はみなで集まり盛大な新しい宇宙完成記念パーティーを開きました。
 パーティーでは完成した宇宙の素晴らしい所を担当した天使達がプレゼンし合い、発表の度に天使達は拍手喝采で盛り上げ、神様も天使達ひとりひとりに「ごくろうさま」とねぎらいました、やがて、パーティは神様の締めの一言で終わりを迎えることとなりました。天使達はみな、神様の挨拶を熱心に聞き入りました。
「天使のみなさま、みなさまの働きのおかげで私の理想とする完璧に理想と調和のとれた素晴らしい宇宙を創造することが出来ました。この宇宙が完成したことは、私と、それを手伝ってくれた天使のみなさま、関わったもの全てにとって誇りです。みなさま、本当にありがとうございます」
 神様のこの言葉に天使達はみな歓声をあげ抱き合い、涙を流し喜び合いました。パーティーはお祝いムードと達成感に包まれながら無事終わりました。
 パーティーの余韻も醒めやらぬ中、ひとりの天使が神様に聞きました。
「ところで神様、このたびの宇宙完成に際しての私達への褒美はどうなっているのでしょう?」
 天使達はまだパーティーが終わったばかりなのに不躾なと思いながらもみな聞き耳をたてていました。そして、神様が言いました。
「褒美はもちろん、この光景じゃよ。見てごらん、この目の前に広がる景色を。こんなに美しいものはどこにもないよ」と、満面の笑みを浮かべました。天使達はその答えに呆然としてしまいました。
 神様が立ち去った後、天使達はみなで集まりました。
「なんなんだ、あの褒美は」
「何千年、何万年も働かせておいて、褒美がなにもないなんて、神様なにを考えているんだ」
「こんなこと、とうてい納得出来ない」
 怒った天使達は神様の元へ押し寄せ、新しい宇宙から神様を追い出してしまいました。それから天使達はみな自分の気に入った星に君臨し、傍若無人に振る舞いました。何千年、何万年も好き勝手暮らした天使達は徐々に退化し羽も失いその宇宙で進化したものどもに追い出されるようになってしまいました。
 神様が夢見た完璧な調和をとれた宇宙は少しずつ崩れていき、やがて争いが耐えない美しくない世界へと姿を変えていきました。


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