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クナリさん

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将来の夢 絵本作家
座右の銘 明日の自分がきっとがんばる。

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夜合鏡

12/12/24 コンテスト(テーマ):第二十一回 時空モノガタリ文学賞【 学校 】 コメント:0件 クナリ 閲覧数:1831

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私が中学生の時、合わせ鏡の怪談が流行った。
学校のどこかに呪いの鏡があり、夜12時にその鏡で合わせ鏡をすると、死の世界へ連れ去られるという。
昔校内で、手首を切って自殺した女子がおり、その血が鏡にたっぷりかかったせいで呪いが籠った、という話も聞いた。

級友のカナに誘われ、私はある夜学校に忍び込み、その鏡を探すことになった。
カナの事は正直苦手だったが、嫌だと言えない私の性格を見込んで?抜擢されてしまった。
夜中、各教室を順に見て回る。
月は雲の陰に隠れたり出たり、不安定に弱々しい光を放っていた。
自分達の足音だけが巨大な密閉空間と化した夜の学校の空気を震わせる度、言いようのない不安が私に覆いかぶさってくる。
科学室に入った時、カナが言った。
「何、あの鏡」
科学室の黒板の左横1メートルくらいのところに、ガラスの覗き窓の付いた準備室へのドアがあるのだけど、黒板とそのドアの間に画板くらいの大きさの鏡が架けてあった。
カナは鏡に近寄って、こんなのあったっけ、とつぶやきながらいぶかしげにぺたぺたと触っている。
「どこかの委員会からの寄贈とかじゃないかな」
この時丁度12時になってしまった事が気になり、私は携帯の時刻表示を見ながら答えた。

顔をあげるとカナの姿が消えていた。

準備室のドアはノブが有り、科学室側に引いて開けるタイプの扉だった。
さっきは閉まっていたはずなのに、今は全開になっている。
カナがドアを開けて奥へ行ったのかと思い、準備室の中も見てみたけれど、見当たらない。
ドアはこちらの科学室側から向かって左側にノブが付いており、それが開き切っているので、右手に1メートルほどしか離れていない黒板のすぐ傍まで扉の縁が来ている。
そのドアを閉めようとしたら、開き切った扉に隠される格好になっていたさっきの鏡が姿を現した。
気味が悪かったので、私は努めて鏡を見ない様にして、そのままドアを閉じた。
暗闇の中で古い蝶番がキイキイと鳴り、不愉快だった。
もしやカナは死の世界とやらに行ってしまったのかと一瞬思ったが、少なくとも合わせ鏡などこの部屋のどこにもない。
きっと先に帰ったのだろうと、彼女の薄情さに腹を立てたまま私も帰宅した。

翌日カナが行方不明になったと彼女の両親から告知され、学校はちょっとした騒動になった。
私は彼女と最後にいた科学室が気になり、放課後に訪れてみた。

例の鏡が無くなっていた。

夕闇の中、準備室のドアの覗き窓が鏡の様に私の顔を写している。
昨夜のことを思い出してみた。
あの時カナは鏡の前に立っていた。

昨夜の位置――ドアと黒板の間――にあの鏡があったら、このドアを開き切れば、覗き窓と鏡で合わせ鏡になり、カナはその間に立っていた事になる。
それに気付いたら、ぞくん、と寒気がした。

やがて新たな怪談が流れた。
夜12時に校内のどこかの窓を覗くと、真っ暗闇の中必死に助けを求めて来る女子の姿が見える。
その後ろには手首から血を流した別の女が立っている。

級友のミカが、噂を確かめてみようと私を誘って来た。

私は珍しく、嫌だと断った。



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