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風宮 雅俊さん

テーマに沿った物語を、どのくらいのレベルで書けるかな? と言う事で登録してみました。 アマゾンの電子書籍キンドルで作品出してます。こちらも宜しくお願いします。 ツイッター: @tw_kazamiya

性別 男性
将来の夢 世界一周の船旅で、船室に籠って小説を書く事
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天使のお仕事

18/02/08 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:378

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「次の天使さん」
 地上での任務を終えると、私の所で清算をするのだ。天使の任務は人々が道を迷わない様に険しい道も乗り越えられる様に、ある時は優しくある時は厳しく導き手として。また、成長を促すシチュエーションを作る役者として、人々の間に紛れ込み任務を果たすのである。
 その任務は多岐に渡り、心の傷を癒すカウンセラー、戒めを与える悪党、慈悲を目覚めさせる病人などとなるのであった。しかし、天使にとってはどれも過酷な任務となるのであった。地上に降りる事で記憶を失い、人の汚れに染まり導き手のはずの天使が道に迷う事も少なくなかった。任務を終えて戻ってきても、それが抜けずに天上界で苦しむ天使も少なからずいるからだ。

 待ち合い席から窓口に真っ直ぐに向かってくると書類をカウンターにおいた。
「地上での任務は?」
「慈善活動です。病気や事故などで日常生活が突如崩れてしまった人たちに、その日の糧と温かい部屋を提供する事です。そして、日常生活を取り戻す事を手伝って来ました」
 沢山の人々を導いた自負なんだろう、自信に満ちた態度がまるで政治家の様だった。
「良い任務につけましたね。弱きを助け導くのは天使の本分ですね。では七芒星のペンダントを装置にセットして下さい」

 モニターには、地上に赴任してから戻ってくるまでの全てが表示された。NPOを創設し路上生活者に支援者から集めた食料を使いボランティアが炊き出した温かい食事を配っていた。カウンセリングを行い心のケアも充実していた。それによって、自立に向けて動き出す者も出てきていた。しかし、助ける側と助けられる側が明確に線引きされた組織では徐々に食事を貰うのを日課とする路上生活者を増やしてしまっていた。

「彼らの信仰心が二百ハート分増えてますね。逆に堕落して信仰心が百ハート分減っています。差し引き百ハート分ですね。お疲れさまでした。休暇後の希望の任務は何ですか?」
「同じ任務が良いですね。今度は堕落する様な者を出しませんよ」
 百ハートを獲得した自信からなのだろう、後ろ姿には次の任務への意気込みを感じられた。


「次の天使さん」
 席からやっとの思いで立ち上がると、今にも倒れそうになりながら窓口に来た。
「大丈夫ですか?」
 どう見ても顔色は青白く視線も虚ろであったが天使は頷いた。
「地上での任務は?」
「先天性の重度疾患です」
 生まれながらに病気を患い、病院の一室が人生の全てとなる事だった。慈しみ深い天使であっても、慈しまれる側となるのは本分ではなく喜ばれる任務ではなかった。
「過酷な任務でしたね。それに、まだ任務から抜け切れていない」
 パチンと指を弾くと天使の後ろに背もたれの付いた大きな椅子を出し座る様に促した。そして、七芒星のペンダントを受け取ると装置にセットした。
 モニターには、夫婦の喜びと希望が絶望と自責に変わり、子を慈しむ眼差しにはいつも涙があふれていた。しかし、止まりそうになる呼吸でも必死に生きる姿が夫婦を変えていった。生まれた証となる様に、生きた証となる様に夫婦は積極的に外に連れ出し、風を感じさせ潮騒を聞かせ、子を見世物にしていると非難されても社会に存在している意義を伝えていった。
 夫婦の行動が、同じ様に苦しんでいる患者を家族を引き寄せていった。その輪は広がりお互いを助け合う活動へと広がっていった。

「彼らの信仰心が・・・、信じられない三百ハート増えている。堕落した者はいない・・・。それだけではない、ハートの数が一つ増えた。いや増え続けている。階級が上がるのは間違いないですね。そうすれば他の天使の師範役ですね」
 この役に付いて始めて見る偉業だった。
「いえ、地上に戻ります。あの夫婦を支えたいのです」
 任務を離れて地上に行こうとする天使は稀有だった。なにより天使らしくない一時の感情に流された判断にしか見えなかった。
「ここで地上に降りたら今回の報酬が無効になりますよ。それに階級が上がれば天上界から夫婦をサポートできますよ。地上に降りても今の記憶は消えてしまいあの夫婦に辿り着ける見込みはないのですよ。仮に辿り着けても、あの夫婦もあなたとは気が付かないでしょう」
 病人の様に青白いままであったが、決意に揺るぎがない事は眼差しが語っていた。
「あの夫婦からあふれんばかりのものを貰っています。私の気持ちが本物なら必ず辿り着けます。記憶など必要ありません」
 苦しさの残る足取りで、今来た道を戻って行った。


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