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六井 象さん

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霧の国

18/02/07 コンテスト(テーマ):第153回 時空モノガタリ文学賞 【 報酬 】 コメント:0件 六井 象 閲覧数:676

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 玄関のドアを開けると、ちょうどトイレのドアが開いて、合い鍵を渡しているウェイトレスが出てくるところだった。
 気まずい沈黙が数秒続いた後、ウェイトレスは何も言わずに手を洗い、そして私を急かすように、銀のお盆を指先でトントンと叩いた。
 私はもうほとんど取れかけている胸の糸を抜き、半分しか残っていない心臓をウェイトレスに手渡した。ウェイトレスは心臓をお盆に載せ、手際よくフォークとナイフを添えて、さっさと部屋を出ていった。
 その夜、ベッドでじっとしていると、部屋のポストに何かが落ちる音がした。見に行くと、四分の一ほどになった心臓と、お金の入った封筒が投げ込まれていた。予想よりもずっと少ない額だった。
 すっかり小さくなった心臓を胸の中に戻し、遠くに輝くレストランの灯りから逃れるように、頭から布団をかぶった。


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