セレビシエさん

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発酵

18/01/28 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:0件 セレビシエ 閲覧数:339

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酔っ払いが歩いている。
22時過ぎの、明るくなり出した街を、ふらふらと覚束無い足取りで。
酩酊状態。
彼の今の状態を表すのにぴったりの熟語だった。
僕はそれを2階の自室の窓から眺めていた。
彼はサラリーマンみたいだった。スーツを着ていて、まだ若い、30代くらいの、背が高く、髪は黒くボサボサだった。
勉強をしながらこうして窓の外を覗いてみると、酔っ払いが歩いていくのがよく見える。
彼らはいつもふらふらと、みっともなく歩いている。
“ああはなりたくないな”という想いが、窓の外を覗くたびに増えていった。
大人に対する期待のゲージが目減りしていくのに半ばうんざりしていた。
そんな僕も、来年は大人になってしまう。
それは少し、怖かった。

サラリーマンはいつの間にかどこかへ消えていた。あの足で家にちゃんと帰ることが出来るだろうか、といつも勝手に不安になっていた。

チャイムが鳴った。どうやら父が帰ってきたらしい。
僕は目の前の教科書に集中した。
教科書にはアルコール発酵では2分子のATPが生成される。と書いてあった。
突然、後ろのドアがガチャと大きな音を立てて開いた。
「勉強してるのか」
父は陽気に言った。酔っているらしい。
「いきなり入ってこないでって言ったじゃん」
「すまんすまん、勉強頑張れよ」
父はそう言ってドアを閉めた。

大人とは、何なんだろうか。
ふと思った。
陽気だったり、気を使ってきたり。真面目な様で不真面目なのか、不真面目な様で真面目なのか。
よく分からなくなってしまった。
それでも僕は大人になるのだ。

それは何だか、アルコール発酵みたいなものなのかもしれないな、と教科書を見ながら僕は思った。


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