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林一さん

性別 男性
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酒浸りの人生

18/01/28 コンテスト(テーマ):第152回 時空モノガタリ文学賞 【 酒 】 コメント:0件 林一 閲覧数:332

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 日雇労働を終えると、その日の稼ぎを握りしめ、最寄りの酒屋へと向かう。そこで買えるだけの酒を買うと、ボロアパートでひたすら飲み明かす。酒を全て飲み終えると、また日雇労働をする。これが俺の日常だ。
 世間的には、いい年して定職にも就いていない、結婚もしていない、彼女すらいない俺は、負け組と言われるのだろう。だが、俺は今の生活に十分満足している。定職に就いていなかろうが、彼女や奥さんがいなかろうが、酒さえあれば俺は幸せなのだ。
 ある日の日雇労働中、俺はちょっとした事故を起こしてしまい、社員さんに怪我をさせてしまった。幸い軽い怪我で済んだのだが、その罰として、その日の賃金はもらえなかった。俺の財布には、通勤手当として渡された帰りの電車賃二百円しか残っていない。これじゃあ歩いて帰ったとしても、せいぜいビール一本しか買えないではないか。こんなんじゃ飲んだ気になれない。くそ、今日は人生最悪の日になりそうだ。
 途方に暮れていたその時、あの看板が目に飛び込んできた
『その場で当たるスクラッチ 一枚たったの二百円』
 俺の所持金二百円と、丁度同じ金額。これはきっと運命だ。俺は迷わず購入を決意した。
「スクラッチ一枚ください」
「はい、どうぞ」
 ようし、削るぞ。あっ、削る小銭がない。
「すみません。十円玉貸してください」
「はい、どうぞ」
 ようし、それじゃあ気を取り直して。えーと、こことここを削ればいいんだな。お、なんか星のマークが見えてきたぞ。二つとも同じマークだ。
「おめでとうございます。一等の賞金百万円です」
「ひゃ、ひゃくまんえん?」
「ええそうです。百万円ですよ」
 もしも今日、俺が事故を起こしていなかったら、二百円の通勤手当がもらえていなかったら、このスクラッチくじを買うことなく家路についていただろう。これは奇跡としか言いようがない。人生最悪の日が一変して人生最高の日となった俺は、百万円を片手に、タクシーでいつもの酒屋へと向かった……。

 一ヶ月後。
 大家からの通報で駆けつけた警官二人が部屋の扉をこじ開けると、中で冷たくなっている俺を発見した。
「うわ―やっぱり死んでるよ」
「死因は……アルコール中毒だろうな多分」
「ビールに日本酒に焼酎にウイスキーに……まるで小さな酒屋のような品揃えだな」
「大好きな酒に囲まれて、案外幸せな最期だったのかもしれないな」


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