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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

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エキセントリック・カメムシ

18/01/16 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:698

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「あんた、いつまで偽りの優等生を演じるつもりなの?」
 彼女のその言葉に、僕は背筋が凍りつきそうだった。触れてほしくない。触れてはならない。カメムシのように、触れたらきっと、僕は悪臭を放つだろう。自分を守るために。



 自分に正直に生きている人間というのは、この世にどれほどいるのだろうか。周囲の人間と今まで築き上げてきた信頼関係が、本来の自分を周囲に知られることでジェンガのように一気に崩れてしまうかもしれない。おそらく多数の人間が、そのような理由で本心を内面に隠したままなのだろう。僕もそのひとりだ。

 小学校のとき、ある話し合いの場にて、まわりと違った意見を僕は持っていたことがあった。その意見をまわりに喋ったら、喋りきる前にバッサリと否定された。それ以来は自分の意見に自信を無くし、なにかまわりと違った意見をもっても、発言することはなかった。きっとそれは間違った意見。まわりに伝えたらきっとまたすぐに否定される。だから言わない。意見を心の奥底に押し込めてはかき消す。それを繰り返していままで生きてきた。そしていつのまにか、自分の意見というものを持たなくなった。誰かと話をするときは常に聞き手にまわった。そして自分が何を好きか、何を望んでいるのか、それもわからなくなった。なにかを質問されるたび、僕は適当にぼかした。今、僕を動かしているのは、あれをやらなければならない、こうすべきだなどといった、義務感だ。やりたいことはない。やらなければならないことがあるから、動いている。


 僕は高校生になり、優等生が多くて有名な高校に入学した。そして僕のクラスも、やはり優等生ばかりだった。一人の女子生徒を除いては。
 その女子生徒の名は有野 真間子。彼女は髪を銀色に染め、制服のワイシャツを第三ボタンまではずしては胸元を強調させ、スカートも極端に短い。教師との喧嘩は当たり前。閉め切った教室の中で毎日のように堂々と屁をこく。いろんな男子生徒との噂があり、優等生揃いのうちのクラスでは、彼女はまるで、毒蛾ような存在だった。毒蛾の幼虫の身を覆う毒針は、直接触れたらもちろん、触れなくても風で飛んできた毒針に肌が触れれば腫れる。カメムシよりも性質が悪い。誰も彼もが彼女を煙たがり、彼女と親しくなろうという者はひとりもいなかった。はじめのうちは。
 しかしクラスに撒き散らされた彼女の毒針は、次々とクラスの人間に刺さり、刺された者をまるで別人のように変えていった。授業を遅刻したりサボったりする生徒が出てくるようになったり、髪を銀色に染め出した者もいた。いままで先生に対して敬語で話していたのが突然ため口になったり、喧嘩をする生徒も出てきた。しかし彼女は言った。変わったのではない、みんな我慢して優等生のフリをしていただけで、いままで抑えてきた本来の姿を解放しただけだ、自分に正直になっただけだと。優等生のはずだった生徒が不自然に次々と問題児へと変貌していき、そしてとうとう、優等生は僕だけになった。クラスでは今、逆に僕が変わり者扱いされている。
「あんた、いつまで偽りの優等生を演じてるつもりなの?」
 そう尋ねてきた彼女は、僕を憐れむような目でみていた。私達はこうやって本来の自分をさらけだしているのに、あんたはどうして覆い隠して、みんなを遠ざけてばかりいるの?今のあんたは、とても不自然だ、そう言われている気がしてならなかった。そう心の中で言っているのは、他ならぬ自分自身だというのに。僕にもいつのまにか、彼女の放った毒針が刺さったのかもしれない。カメムシのように臭いを出すだけでは、もうどうしようもない。


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このストーリーに関するコメント

18/01/16 凸山▲@感想を書きたい

拝読しました。
自己主張を封じ込める。自分の中身が主義主張のない空洞に感じる。義務感だけで動いている。がらんどうを際立たせるような導入が興味深かったです。一方で、テーマとの関連性は希薄であるように感じました。また投稿期日を過ぎてでも投稿される執念を感じますが、コンテストに対する姿勢としては疑問を感じます。

18/01/16 霜月秋介

凸山▲さま、コメントありがとうございます。
当初は優等生という化けの皮が剥がれるアバズレ女子を書きたかったのですが、最終的には内気な男子生徒の話になってしまいました。
締め切り当日の0時を過ぎてしまい、一時は投稿を控えるつもりでしたが、せっかく途中まで作っていた話を無駄にしたくないという思いが強く、諦められませんでした。しかし感情論でしかありません。締切を破っていい理由にはなりませんね。ご指摘有難う御座いました。

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