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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
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阿婆擦れ山

18/01/14 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:653

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「阿婆擦れ山って知ってる?」
「いやそれ姥捨山じゃねぇの?」
「いやそれもあるけど、阿婆擦れ山ってのもあるらしいんだ」
友人の勘八が教えてくれた山は、おいらの家からそう遠くないところに位置する山とのこと。その山の名前は通称で、本当の名前があるようだが、多くの人がその山のことを阿婆擦れ山と呼ぶらしい。
「その山がどうしたんだよ?」
「そうそう!阿婆擦れ山って名前だけあってよ、阿婆擦ればかりいるんだってよ!」
「阿婆擦れって...女のことかい?」
「そりゃそうだろ!色んな男を喰っちゃ捨て喰っちゃ捨てしてんだってよ!」
勘八が言うには阿婆擦れ山には実際、阿婆擦れの女が住んでいるようで、色んな男を捕まえて嗜んでいるらしい。本当にそんな山があるのか?
「いや本当にあるんだってよ!」
「あるって言っても老婆とかなんだろ?どうせよ」
「それがよ、あくまでも噂だぞ?若い女もいるらしいんだ」
「まじかよ!」
おいらは先程まで特に何の感情も抱かないまま勘八の話を聞いていたが、若い女となったら話が違う。若い女が阿婆擦れなんて、それだけで美味い飯が食えそうじゃないか。
「ちょっとその山のこと詳しく教えてくれ」
「おっ!乗る気になったか!」
「当たりめぇよ!この町には若い女が少ないからな。若い女と聞いたら動かずにはいられねぇーよ!」
おいらが身を乗り出して話を聞くと、勘八も嬉しそうに話をし始める。
「その阿婆擦れ山ってのはよ、昔は誰も住んでねぇ山だったんだとよ。でもよ、その山に面倒見きれなくなった女を捨てにくるようなったんだ」
「何だか怖い話だな」
「考えてみりゃーな。ただその捨てられた女の中に身篭った奴もいたらしいんだ。その女は山で産んでよ、その子どもを必死に育てんだと。まぁ阿婆擦れの子どもも当然阿婆擦れになってるから、若い女がいるって話だ」
「ほう。じゃあその女は山から出たことねぇワケか」
「当たりめぇよ。学も無ぇ女だ。だからこそ阿婆擦れになるわけよ」
「でもよ、その山には女親とその若い女しかいないだろ?どうして阿婆擦れになるんだ?」
「それがよ、風の噂であの山には阿婆擦れが捨てられてるって聞いた連中が挙って山に行くワケだ。金ない奴や酷い顔の奴はやる機会ってのがねぇからな」
そして勘八はニヤリと笑いおいらの耳元でこそっと重要なことを話す。
「その山に行った男は誰も帰ってきてねぇーんだと」
「ど、どういうことだ?」
「だから、その女が死ぬほど上手くて帰ることを忘れてしまうんだろう」
そんなに素晴らしい技術を持った阿婆擦れが、山に住んでいるなんておいらは驚きが隠せなかった。
「お前さん、準備が早い!焦んなって!」
「今直ぐにでも阿婆擦れ山に向かおう!」
おいらと勘八は昼に食う予定だった握り飯と水だけを持ち、阿婆擦れ山に向かった。我ながらこういう時だけは行動力がとても長けていると感じる。

おいらと勘八は数時間山を登り、噂の阿婆擦れ山に辿り着いた。辺り一面木々に囲まれているからか、人気が全く感じない。
「おい、本当にここなのか?」
「間違いない。ここのはずだが...あっ!あそこじゃないか?」
勘八が指をさした方角に目を向けると、木々の向こうに今にも壊れそうな小屋を見つける。
「やはり阿婆擦れ山は健在ってわけだな」
「早速お邪魔しよう」
おいらは目の前にある褒美に夢中で、小屋まで掛けて行く。勘八もおいらの後ろを追いかける。
しかし生い茂った草や落ち葉に足を持っていかれ、おいらはズベッと転んでしまう。転んでしまったおいらは、手についた土を払おうとした。
その払おうとした手を見ておいらは一瞬で我にかえる。
「ぎゃー!」
「どうした!」
「この辺り、血が!血が流れてる!」
おいらの手には、べっとりと血が付いていた。この血は一体何なのだろうか?こんな状況にも関わらず、勘八は大きな声で笑い飛ばした。
「ここの阿婆擦れ女は凄まじいな!血が流れるほどに飢えてるなんてな!まるで猿のようだ」
勘八の言葉においらも安心した。そうだ、どこの血だか分からないが、気にすることないと。
そんなことを考えていた束の間、おいらの目の前に立っていた勘八が大きな物音ともに倒れる。
「あんたたちの方がよっぽど猿じゃね」
倒れた勘八の先にはとても美しい女が立っていた。しかし勘八は全く動こうとしない。そんな勘八は頭部から大量の血を流していた。
「な、何をするんだ!」
「あんたたちをこれから喰うのさ」
おいらは勘八を置いてもがくように走り続けた。しかし山に慣れていないおいらは決して山を抜けることはできなかった。


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