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国光さん

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言葉の意味

18/01/14 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:0件 国光 閲覧数:336

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「このあばずれ女」
 言った瞬間、左の頬に衝撃が走った。そして視界が横にずれた。
「えっ?」
 びっくりしながらゆっくりと顔を正面に戻すと、涙を浮かべている彼女の顔が目に入りさらにびっくりした。
 すかさずもう一度頬に衝撃が走る。顔を正面に戻すともう一発。この繰り返し。
 回数が二桁を迎えたあたりで流石に叩かれすぎじゃないかと冷静になる。
「いい加減にしろ」
 俺の左頬を狙い放たれる腕を掴みあげる。
「痛い」
 強い力で握ったせいだろう。彼女は苦痛の声を上げた。
「離しなさいよ。痛いじゃない」
 涙と怒りの合わさった表情で訴えかけてくるがこっちの痛みの方が重傷だ。
「痛いのはこっちだ」
 言って乱暴に手を離した。
 女の力とは思えない衝撃を左頬に十回。熱を持っているようで物凄く熱い。ボクシング部の友達に殴られた時の感じに似ている。あの時と同じなら明日は熱が出て学校に行けなくなるな。
 こっちが睨みつけても彼女は相変わらず涙と怒りの合わさった表情のままだ。
「おい。何をそんなに怒っているんだ?」
「アンタが酷い事を言うからでしょう」
「酷い事?」
 身に覚えがない。文句に対して言っているならこちらに悪い点は無い。
「私の事あばずれ女って言った」
「そんなことで?」
 言った瞬間、彼女が拳を握りしめるのが見えた。
 ビンタで無くて拳骨だ。あれを喰らうのはマズイ。
「やめろって。何なんだ。畜生」
 俺は少し距離をとる。
「そんなに怒る様な事言ったか?」
「酷いに決まっているでしょう」
 彼女は涙の方が強くなった。
 おかしいな。俺が怒っていたはずなのに。
「アンタもそう思ってたのね。私が男をとっかえひっかえしているってバカな噂。アンタはそんなの嘘だってわかっているって信じていたのに」
「嘘だってわかっているぞ」
 俺がそう答えると、彼女はキョトンとした。
「じゃ、じゃあどうしてあんな事言ったのよ。私の事あばずれ女って」
「だって、あばずれって厚かましい者を意味する言葉だろ」
 だから言ってやった。目の前の厚かましい女に。
「違うわよ」
「マジか?」
 俺はスマホを取り出して急いでググる。
 あばずれとは人擦れして厚かましい者を意味する江戸時代の流行語。今では昔と意味が違いビッチやヤリマンと言う意味でつかわれることもある。
 そうか。今では意味が違って使われているのか。
「そこはごめん」
 素直に謝る。本来は俺の意図した意味であっていたが勘違いさせてしまったのは俺も悪いだろう。
「じゃあどういう意味で言ったのよ」
 睨むような目で彼女は俺を睨む。
「いや、厚かましい女って意味で」
「私のどこが厚かましいのよ」
「まず人の部屋を私物化しているとこ」
「いいじゃない。幼馴染なんだから」
「それ以外にもいろいろあるぞ。最初から最後まで全部言ってやろうか」
「やっぱりいいわ」
 彼女はそう言ってどこから持ってきたのか俺のハンカチで鼻をかむ。そういったところも含むんだが。
「でも、自分で言うのもなんだけど、私の噂大分広がっているんだけど。本当に嘘だと思ってるの?」
 彼女は少し心配そうにそう尋ねて来る。
「だってその噂ってお前に告った男を好きだった女の逆恨みだろう」
 世の中には迷惑極まりない奴がいる。
「なんで知ってるの?」
「なんでって。いつも傍で見ているからな。お前がそんな事してないの知っているし」
 放課後も休日も俺の部屋に入り浸っている彼女に他の男と付き合っているような時間がないことは理解している。だからそんな噂が流れても嘘だと知っている。
「ねえ」
「なんだ?」
「ちょっと胸貸しなさい」
 そう言って彼女は俺の許可を得ずに一方的に俺の胸に頭突きするような勢いで飛びこむ。
「ぐえっ」
 彼女は変な声を出した俺に気にせずそのまま俺の背中に腕をまわして抱きつきながら泣きだした。
「まったく」
 やっぱり厚かましい女だ。
 そう思いながら彼女の頭をゆっくりと撫でた。


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