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いっきさん

公務員獣医師として働くかたわら、サイトを中心に創作に励んでいます。

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白雪とギャル男

18/01/06 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:1件 いっき 閲覧数:431

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「私、今度の土曜日に男と遊びに行くの」
デートの最中に電話で話していた友美に尋ねたら、さらっとそう宣告した。
「何で…どんな奴?」「野崎って人。ネットで知り合った人なの。自衛隊員だって」「やめろよ。そんなの、危ないじゃないか」
普通の男友達なら、百歩譲ろう。でも、彼女をそんな奴に会わせたくない。
「大丈夫よ。電話で話した感じは普通の人だったし」「そんな問題じゃないって。僕達、付き合っているんだろ?そんな奴とは、会うな!」「付き合ってるっていっても結婚はしてないんだし、誰と会おうと自由じゃない?」
友美は自由人…悪く言うとあばずれだ。見た目も濃い目の化粧をしたギャル。
一方の僕はパッとしない『非リア』。一見交わるはずのないこの二人は、合コンでの僕のアタックでカップルになった。それが、今まさに破局の危機だ。
「どうしても、行ってしまうのか?」「ええ。でも、安心して。浮気とかはしないから」「もういい。勝手にしろ」
その日は喧嘩のように別れた。

帰ってから考えた。いっそのこと、僕も他の女の子を探してみようか。
でも…僕はあのあばずれに焦心なんだ。
ぼぉっとしていると、『白雪事件』を思い出した。
ある時、部屋で寝ている僕に友美がメイクをした。そして僕が目を覚ますと、友美は驚いて言った。
「可愛い…白雪姫みたい。」
訳が分からず鏡を見てみると、そこには絶世の美少女がいた。確かに、僕は昔から女の子みたいな顔だと言われていた。でも、メイクをするとこんなに美しくなるなんて思わず、驚いたのだった。
そんなことを思い出した僕は、ある計画を思いついた。

土曜日。僕が歩くと誰もが振り返る。そう…僕は、白雪姫に変身して歩いている。
今日一日は、僕は絶世の美少女、友美。ギャルの友美に会おうという男、野崎の化けの皮を剥いでやるのだ。

待ち合わせ場所で待っていると、男性が歩み寄って来た。茶髪に切れ長の目、小さくて上品な口元を持つギャル男。
「野崎さん?」
そのギャル男に尋ねた。
「ああ。友美ちゃん、だよね?」
そう。僕は今日一日は友美だ。こくりと頷いた。
「待たせたっていうか、まだ三十分前だけど。よほど早く来たんだね」
そう、何としてでもギャルの友美より早く来なきゃならなかったんだ。でも、そんなこと言えない。
「ええ、すごく楽しみで」
ニコッと笑った。
「友美ちゃん、可愛いなぁ!白雪姫みたい」
ギャルの友美と同じことを言う。

動物園に入ると野崎は僕をリードした。飽きることのないトークを繰り広げる。
もし野崎とデートしているのがギャルの友美だったら、どうなるだろう?きっと、意気投合して楽しんでいるんだろうな。
そう思うと、胸が締め付けられる思いがした。

お昼ごはんは、センスのいいレストランへ連れて来てくれた。僕には決して選ぶことのできない、素敵なレストラン。
でも…ここで本当のことを打ち明けようと思った。

「ねぇ。野崎さんって、すごくいい人だと思う。強いし、面白いし、男らしい」「急に、どうした?」
不意をつかれた野崎は笑った。
「でも、あんたに友美をやることはできない。だって、この世界で、僕が一番友美のことを愛している」
前髪を元に戻した。
「僕が友美の彼氏なんだから」
すると彼は目を丸くし…急に笑い出した。腹を抱えて大笑い。そして、訝しがる僕に言う。
「いやぁ、ごめん。ちょっとトイレ行くから、待ってて」
女子トイレへ入って行った。
いや、お前、女子トイレはまずいだろう…そう思ったが、その後さらに驚いた。
何と、メイクをした友美が出てきたのだ!
呆然とする僕に、友美は笑いかけた。
「ごめん。野崎って私だったの」

「ごめん、ねぇ、ごめんって。機嫌直してよぉ」
僕は、プンプン怒って帰路についていた。
人をコケにするのにも程がある。それに、男に戻ってしまったらただの変態だし、女のまま帰らなくてはならない。もう、さんざんだ。
すると、路地裏から酔っ払いが現れた。
「べっぴんなお嬢ちゃん、俺の相手をしてく…いててて!」「私の連れに、何か用?」
友美が手を捻りすごい目で睨むと、酔っ払いはいそいそと逃げて行った。
僕は友美と目を合わす。何だか可笑しくなって、お互い、大笑いした。腹を抱えて大笑い。
ひとしきり笑い終わって僕は尋ねた。
「どうしてこんなことしたん?」「たまには、こういうデートもしてみたかったの」「僕が来なかったら、どうするつもりだったん?」「あんたなら、来ると思ってた。白雪の姿で来てくれるとは思わなかったけど」
そう言って悪戯そうに笑った。

やれやれ。僕はいつもこのあばずれに振り回される。でも、案外、僕もこういうのを求めているのかも知れない。
一見、『美女同士』の僕達は、はたから見ると楽しげな『ガールズトーク』をしながら家への道を歩んでいた。


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このストーリーに関するコメント

18/01/13 凸山▲@感想を書きたい

拝読しました。
美少女変身スキルを持つ主人公が彼女に成り代わって相手の男の素性を探る……ド王道の展開で懐かしい気持ちになりました。あまり相手の目を見て会話をしないのか、あるいはメイク技術がずば抜けているのか。主人公が、そのデート待ったぁ! と駆けつけることを期待するかのような彼女の台詞ですが、そうなると『たまには、こういうデートもしてみたかったの』という希望は叶わず、難しいところですね。

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