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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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夢の外で会いましょう

17/12/31 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:388

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 夢の中で会う人がいた。
 僕が薬瓶に手を出さないただひとつの理由だ。
 あの人だけは、僕がいないいつかの空日に僕のことを思ってくれるだろうから。
 死んだ後の世界では命ある人が自分を思ってくれる数で罰則の重さが決まるって本で読んだ。
 その数がゼロだと永遠に雨粒の監獄の中で意識のループを味わうことになるらしい。
 嘘しか書いてない本だと、貸してやった友達は笑っていたけど、僕は信じている。
 雨音がすると僕の意識は空にトブ。
 一個の雨滴の中から見下ろす世界は灰色の世界、落下、落下、落ちた先で僕は地面に吸い込まれ、さらに地中を落下、落下。落ちきった安息に浸る間もなく、また空。落下、落下。見える世界は灰色で、ぐいぐいと近づいてくる大地。ただの意識の連続。雨粒の監獄地獄。
 何周か意識のループを想像し、僕は夢の中のあの人に感謝をする。
 会うために寝た。
 最高記録は三時間だ。
 起きて活動していた時間。
 三時間を挟んで合計三十四時間睡眠。
 自分も夢の材料に使用されているのだという感覚が全身を満たしていくと、夢に落ちることは難しいことじゃなかった。
 記憶している夢の場を、蕩けきった脳内のひだで模に組んでゆく。
 まるで夢みたいだと、思えてズル。
 わけがわからないと気味悪くなってまた、ズル。
 死ぬってなに、生きてるってなに、男ってみかんとどう異なる? 車のタイヤは昨日の親戚で、箱庭で松茸と徒競走したのは一番星の涙だ、ズル。
 あの人に会うために、ズル。ズル。ズル。ズル。夢の水面を石切る意識の僕が最後にクッと踏ん張るように思うこと。
 クツタベ。
 影卵。
 長い長い梯子。
 空に届くまで。
 真っ暗ごっこのトンネル。
 それは動画サイトでみつけた朗読劇だった。
 再生回数が二。
 書かれたコメントも二。
 トトロなら何百万人いる。
 ニューシネマパラダイスなら多国籍で何千万人いる?
 僕と、誰か。
 あの作品を書いて読んだ人。
 拙いですが私の書いた物語を朗読してみました、面白かったと思ってくれた人は、どうかコメントをよろしく。
 と、一個目のコメント。
 僕が返したコメントは、僕はこの物語世界に閉じこもってしまいたいです。
 夢の中で、僕は人に会う。
 朗読で聴いた物語の主人公に僕がなって、あの人は相棒になって。
 物語が進行していく。
 もうずっと、この中で。
 目が覚めたら薬瓶に伸ばす手を夢の中のあの人を思い浮かべて食い止めるだけだから。
 物語は永遠に続く。
 朗読劇は、この続きはご自由に、の声で終わっていたから。
 三人目は来ない。
 僕がコメントを書き込んだ翌日に、動画は消えていた。
 靖之、出席日数が足らなくなるんよ。
 高校ぐらいは出とかんと、どうしてもやれんようなるぞ。
 親の声はドリアンとにらめっこで三連敗。オニヤンマの羽をむしって河童の胡瓜と交換すると電柱が子犬を孕む。
 靖之、お願いだから、薬瓶捨てよう、な。
 靖之、高橋君とは別クラスにしてもらえるから。
 靖之、や、す、ゆ、き。ヤドクガエルは薬で、スニッカーズは革靴に鞭打たれ、雪解け水は富士山噴火のスイッチを押すし、キクラゲはレントゲン室ででっかいうさぎを血祭りにあげる。
 靖之、靖之、来週の月曜日、学校行かんと、三年生になれないから、お願いだから。
 その日の夕方四時。覚醒していたクッションタイムは五時間四十分、悪くないタイム。
 いつものとおり、僕は自分を夢の一部分に、ズル、ズル、ズル。
 クツタベ。
 影卵。
 長い長い梯子。
 トンネル、届かない空、オルガン、アコーディオン。
「君は誰?」
 初めて会う。あの人は? 僕の、僕の相棒。僕の世界を、二人で支えるあの人は何処?
「彼女は出ていったよ」
「なんだって?」
「伝言を頼まれた。こんな悲劇を書いた覚えはない。読んだ覚えもないってさ」
「なんだって?」
「それだけだよ、さようなら」
 僕は夢に一人で残される。夢の材料は自分。永遠に一人。雨粒が僕の頬を打つ。意識の監獄が、ようこそ、と言った。
 うるさい鼓動。嫌なにおいの汗。僕はパソコンを開いた。
 ノットファウンド。
 僕はパソコンを閉じる。
 薬瓶に手を伸ばす。致死量はこれ全部よりは少ないだろう。
 靖之、靖之。
 薬を胃に流し込んで、僕は。
 ……。
 寝られない。あの人のいない夢に、落ちることなど、恐ろしくてできない。
 寝たら、雨滴だ。
 あの人は、あの人は、夢の外に。
 夢の外に探せばいつかは、会えるかもしれない?
 噴き上げた吐瀉物の放物線に、かからなかった虹は、あの人の次回作に出番の最中かな。
 四か月ぶりに着た制服は、他人の制服みたいだった。
   
 
 


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