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いっきさん

公務員獣医師として働くかたわら、サイトを中心に創作に励んでいます。

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白いワンピース

17/12/29 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 いっき 閲覧数:372

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今日は、クリスマス・イブ。
私はこんな日にでも馬鹿なおやじ達から、金を巻き上げる。
男を虜にする美貌を持つ私だが、実はバージンだ。決してそこらの馬鹿な男にやったりしない。初めては、本当に惚れたイケメンと、と決めているんだ。
私はピンクのコートを着て待ち合わせ場所へ向かった。

繁華街に入るまでは、閑散としている。
公園を通り過ぎようとする時……ふと、街灯の下のトイレを見た。粉雪が舞う寒空の下、白いワンピースの女が出てきたのだ。

下を向いていて、歩き方も虚ろで。頭がおかしいんだろうか。
私は含み笑う。
ただ、あの女……どこかで見たことがある気がする。どこでだろう……?
そこで待ち合わせに遅れそうなことに気付き足を速めた。

頭の禿げたおやじが私を見て目を丸くした。
「な、何て、綺麗なんだ……」
「そんな、綺麗だなんて……お上手ね!」
私達は繁華街の中へ入って行った。

「あぁ、キモかった!」
おやじと別れた後、眉をひそめた。
何度も、涙を流しながらエロい懇願をされたのだ。
それを躱しながら金を巻き上げ全て奪って、笑顔で別れた。
罪悪感? そんなの、感じるワケがない。
あいつがキモいだけなんだから。

まだ、ギリギリ12月24日。粉雪の舞う帰路の末部屋のドアを開けると、何者かがもがく音がした。
照明を入れると……
「キャー!」
クワッと見開かれた目に、下にポトポトと落ちる尿。白いワンピースの女が首を吊っていたのだ!
いや、この顔は、私……?

『私』は、何かを訴えるように手を伸ばす。
凍りついた私はドアを閉めた。全身に鳥肌が立ち、何が起こったのか分からなかった。

でも……時間が経つにつれ冷静さを取り戻す。
私は、あんなダサい白のワンピースなんて持っていない。あれが私のワケがない。

恐る恐るドアを開けると……部屋はいつも通り。机があって、ベッドがあって……首を吊った女なんて、どこにもいなかった。
張り詰めた気持ちが一気に抜けた私はベッドに倒れ込み、深い眠りについた。

『ピピピピッ』
受信音に目が覚めてケータイを見ると、12月25日17:38。メールの送り主は、昨日のおやじ。
『霞ちゃん、メリークリスマス! 今日も会えないかなぁ?』
あのおやじ、性懲りもなく……でも、私にはいい金ヅルだ。
『まぁ、 嬉しい! 今すぐ、会いましょう』
そう返信して日めくりカレンダーを一つめくり部屋を出た。
昨日のことなんて、嘘のよう。きっと、悪い夢でも見たんだ。
ルンルンと待ち合わせ場所へ向かった。

「プレゼントって、これ……」
白いワンピース。それも、昨日の女……『私』が着ていた……
「そ、そうなんだ。絶対に霞ちゃんに似合うと思って……」
「……」
「も、もしかして……お気に召さなかった?」
「い、いいえ、ありがとう」
「き、気に入らないのなら……他のもの買いに行こう」
「ホント!? そこに新しい宝石店があるの」
ワンピースをバッグにしまった。

「あぁもう、今日もキモかった」
今日もあいつ、私の体を求めてきた。勿論、指一本触れさせるワケもないが。
しかも、このワンピース……気味が悪い。帰り道の公園のゴミ箱に捨てようと入った、その瞬間!
「んー!」
背後から口を塞がれた。
「うひょー、可愛い!」
「上物だな、上物」
男……五人はいる。そいつらが、もがく私を強引に連れ込んだ。

「あー、気持ちよかった。ありがとよ!」
放心状態の私を置いて、男達は去っていく。

何が起きたの?
私……レイプ、されたの?
まず、服をどうにかしなきゃ。バッグの中に、白いワンピース……
目から涙が溢れ出る。
こんなことになるなら、今日、家を出なければよかった。出来るなら、昨日に戻りたい。昨日に……
白いワンピースで出た瞬間、目の前が真っ白になったような気がした。

粉雪……いつの間に? でも、気に止める余力はない。
向こうから、ピンクのコートの女が私を見ている気がする。 でも、やはり気に止める余力はない。
虚ろに、フラフラと歩き続ける。

気がついたら、部屋に戻っていた。
12月24日を示すカレンダーには目もくれず、ベッドに顔を埋める。

私……何人にヤラれた?汚い……怖い。
彼奴らの、薄ら笑いを浮かべた顔が何度もフラッシュバックして私を蝕んでゆく。
私、もう、生きていけない。
死のう……。

天井からロープをぶら下げて輪をつくり、自分の首にかけて踏み台を倒す。
ロープが首に食い込む。
く……苦しい!
その時……ドアが開き、『私』と目が合った。
汚れを知らない『私』は美しく……涙ながらに訴える。

助けて! 行かないで!

凍りついた『私』が部屋から出た瞬間、目の前が真っ白になった。

行かないでぇ!!

12月25日を示すカレンダーの置かれた部屋で、私は絶命した。


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