徒然さん

ツレヅレと申します。 文章の裏側に隠した意図が伝えられる様になりたい。

性別 男性
将来の夢 孫の顔を見て死ぬこと 注:非リア
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独白

17/12/24 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 徒然 閲覧数:408

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 由紀さんはどんな方でしたか
 河内容疑者に伝えたいメッセージはありますか

 照らしつけるフラッシュも、呼吸音すら貪るマイクも、心を土足で踏み荒らすマスメディアも。
 取り残された人生すらも。

 私には、どうでもいい。

 現場に私はいなくとも、私も由紀と共に死んだのだ。轢殺され、全てを失った。
 潰された心は治らないし時間は帰ってこない。
 由紀はもう帰ってこない。何をしても、どうあがいても、変わらない現実のみが手を差し伸べる。

 用意した晩御飯も、君との将来に備えて貯めたお金も、作ったところで意味がない。
 君がいないから、意味がない。

 全てを奪われ、代わりに憎しみを押し付けられた私はどうすればいいのだろう。
 不純物を取り除くと復讐が残る。これが答えなのだろう。

 きっと由紀はやめてと言う。彼女は優しいから。太陽のような明るさは全ての人を優しく温めた。仕事だらけで人間性を失っていた私に生きる意味を教えてくれた。彼女と生きた時間は私の生きる意味そのものだった。
 きっと由紀は怒るだろう。復讐に生きる私を見たら愛想を尽かすことだろう。
 でも由紀はもうやめてと言ってくれない。
 怒ってくれない。
 もう、何もできない。

 綺麗事を吐き散らす人間なら「向こうの世界で怒られる」と言うかもしれない。いいのだ。
 もとより天国や地獄といった空想概念は持っていない。
 死んだ人間は無になる。その人がいた心を満たす術などない。
 埋めることはできても代用でしかない。由紀の代用など誰が果たせるのか。

 それでも仮にあるとするならば、私は由紀には会えないだろう。
 私は彼を連れて行かなくてはならないのだ。共に、君がいない方へ。

 残された私に与えられた唯一の為すべき事を果たす。それ以外はいらない。
 何も。私と、彼のみが必要であってそれ以外は関係のない事だ。



 だから今日、今、ここで。
 さようならをしよう。ここで他人になろう。君も不純物だから。
 君に迷惑をかけたくないし、君がいると迷惑だ。
 沢山の思い出をくれた君に伝えたい思いは到底表現できる程ではないが、それももうどうでもいい。



 もし、私を見守ってくれているのなら。
 もう見ないでほしい。
 放っておいてほしい。
 出来ることなら、叶うことなら、君は私を忘れてほしい。

 私はもう新藤和弘ではない。人ではない。生者ではない。
 死ねず生きる死に損ないだ。
 死ぬ意味を求める半端者だ。


 さようなら。


 愛していました。


 

 翌々日、河内容疑者を移送中の警察車両に一般車両が衝突、大破。
 調べによると河内容疑者含む全員が死亡。
 一般車両運転手は車両情報から先日河内容疑者に殺害された被害者、新藤 由紀の夫である新藤 和弘さんだと思われ現在調べを進めています。経緯から復讐目的の計画的犯行と推定されています。


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