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時田翔さん

ただいま修行中です。 長所を伸ばすためには苦手を克服する必要性を感じて参加いたしました。 お題の好き嫌いはせず、なるべく全部参加で行きたいと思います。 欠点とか見つけたら、ビシビシ指摘していただけるとありがたいです。 よろしくお願いしますっ!

性別 男性
将来の夢
座右の銘 下を見て慢心せず、上を見て絶望せず、できることを一歩一歩

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未来をキミに

17/12/19 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 時田翔 閲覧数:367

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「そういえばお前、あの子猫はどうした?」

 俺の部屋で一緒に飲んでいた友人が、ふと思い出したように聞いてきた。

「ん? 『おはぎ』のことか?」
「ああ、そんな名前だったな。どっかその辺で寝てるのか?」

 僕が拾って飼っていた黒猫の姿を探して、友人は部屋をきょろきょろと見渡す。
 小さな身体に、満月のような真ん丸の目。
 人に飼われていたことがあるのか、とても懐っこい性格で、誰の膝の上にでも乗りたがる可愛いやつだ。

「『おはぎ』なら……だいぶ前に捨てた」
「え?」

 友人が呆気に取られた顔をする友人。
 当然だろう、僕が同じ立場でも、こういう顔をするに違いない。

「捨ててきたって、お前……いま何月だと思ってんだ?」

 点けっぱなしのTVからはジングルベルが流れている。

「わかってる、でも仕方なかったんだ」
「冗談だろ?」

 俺は何も言えずに黙り込んだ。

 部屋の外で音もなく降り続く雪。
 あの小さな身体に、さぞかし冷たかろうと考えると、胸が痛む。

「お前、すっげぇ可愛がってたじゃねえか」

 ああ、その通りだ。

「なのに、一体どうしちまったんだよ」

 それしか方法が無かったんだ。

「なあ、今からでも探しに行こうぜ」

 それはできないんだ、もう勘弁してくれ。

「なんとか言えよ!」

 友人がテーブルを叩くと、勢い込んで俺を睨みつける。
 それは……いやだめだ、いま話すと全てが台無しになるかもしれない。

「理由は言えない、でもこうするしか無かったんだ」
「勝手なこと言ってんじゃねえよ! かわいそうだろ!」

 語気を荒くして詰め寄る友人。
 僕は、いたたまれなくなって俯いた。
 間違っても、泣き顔を見られるわけにはいかない。

「ちっ! 見損なったな、こんな冷たい野郎だとは思わなかったぜ!」

 持っていた缶を乱暴に置くと、ジャンパーを羽織った友人は、『おはぎ』を探してくると言い残して、さっさと部屋を出て行ってしまった。
 荒々しくドアが閉められる音を聞いた俺は、緊張の糸が切れたように大きくため息をつく。

 ……これで良かったんだよな。
 これで『おはぎ』は死なずに済む。
 僕は脱力感と共に、これまでの事を思い出していた。



 もうどのくらい前だったろう。
 部屋の中で冷たくなっっていた『おはぎ』を見たあの日。
 引きちぎられるような後悔に苛まれ、泣き疲れて眠った俺は、朝になって逝ったはずの『おはぎ』に起こされた。

 一体何が起こったのか良く分からなかった。
 最初はパニックになりかけたものの、落ち着いてからTVの天気予報を見てようやく事態を理解した。
 日付が十日ほど前に戻っている。

 いったい誰のきまぐれでこんな事が起きたのかはわからない。
 とても信じられる事では無かったが、『おはぎ』がいつものように俺の膝の上で甘えているのが、たまらなく嬉しかった。
 こいつは絶対に死なせない。

 それから俺は、あらゆる手段を考えた。
 何かに失敗して『おはぎ』が死ぬと何故か時間が戻る。
 必死になって可能性を探し、気の遠くなるほどの繰り返しの中で得た結論、それは……

「『おはぎ』は、僕が傍に居ることで死に至る」

 僕が直接の原因になっているわけではない。
 だが、僕と一緒に居るだけで『おはぎ』に何故か不幸が降りかかるのだ。
 ここだけは、何度くりかえしても避けることはできなかった。

 あまりにも残酷な結果だったが、もはや可能性はこれしか残されていない。
 そうして、僕はループした直後に『おはぎ』を捨てた。

 もう『おはぎ』には会えないだろう。でも死ぬよりは良い。
 友人とは仲直りできるかはわからない。でも後悔は無い。

「元気でな」

 一息にあおった酒は、少ししょっぱく、とても苦かった。


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