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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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将来の夢 積極的安楽死法案
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尻取りなので悪意なんて

17/12/18 コンテスト(テーマ):第151回 時空モノガタリ文学賞 【 あばずれ 】 コメント:2件 戸松有葉 閲覧数:916

時空モノガタリからの選評

選考者によって評価にバラつきのある作品ではありましたが、一人の男をめぐっての女二人のグダグダのやり取りがなんとも面白く感じられました。強引とも思われる香菜の「あばずれ」から始まる尻取りではありますが、彼女の過去の男をめぐる執念深さがその強引さから伝わり、それが自然なキャラクター描写とコミカルな雰囲気につながっていると思います。ドロドロした三角関係ではあるのに、尻取りという子供っぽい遊びの応酬がどこか牧歌的で、読後感も良かったですね。

時空モノガタリK

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「ねぇ美亜、中途半端に時間余ってるから、尻取りでもしない?」
「え? まあ、いいけど。(スマホでもいじっていればいいのに、尻取りするの? っていうか私、尻取りなんて小さな頃以来したことないかも)」
「じゃああたしから。あいうえおの『あ』で始めるね」
「うん。(尻取りの『り』からじゃないんだ。別に決まってないから不自然でもないか)」
「『あばずれ』」
「…………」
「ほら、続けて」
「(他意はないよね。あいうえおの『あ』からはおかしくないし、『れ』から始まる言葉は少し難しいからゲーム勝つためにやってきたんだろうし。)うーんと、れ、れ、『レア』!」
「『あばずれ』」
「待って。間髪入れずに言ってきたけど、それはさっき香菜が言ったじゃない」
「同じの駄目なルール? あたしのやってきた尻取りは同じのでもよかったんだけど。地方で違うのかな」
「(同じのが許される地方あるの? それだと、延々同じ言葉言い合ってしまうんじゃ。っていうか、香菜と私、同じ地方出身じゃないの)」
「わかったわ。じゃあやり直しで。『あ』、ね。『厚かましい』」
「…………」
「…………」
「うん。『い』だから、『嫌らしい』」
「『意地汚い』」
「『印象操作』」
「『サトウ』。あ、シュガーの砂糖じゃなくて、名字の『佐藤』ね」
「(尻取りなんだからどっちでも一緒じゃないの? ってうか、人名もありなの? っていうか、佐藤って私たちが昔色々あったあの佐藤くんのこと? まだ根に持ってるの?)」
「どうしたの美亜? まだ時間あるわよ、続けましょう」
「うん。『ウドの大木』」
「……佐藤くん可哀想、そんなこと思われていたのね」
「尻取りだから! 佐藤くん関係ないから! 早く、次は『く』」
「『糞食らえ』」
「『えんがちょ』」
「『チョップ』」
「待って。これ尻取りだから」
「あ、『ヨ』からだった?」
「違う、そこじゃない。あたしにチョップかましてきたところ!」
「ごめんごめん、つい。ほら、言葉と一緒に出るものじゃない」
「(出ない! 今度やったら問答無用でボコってやるわ)。『プ』だったわね、『プロレス』」
「す……『好きになったものは仕方ないじゃない』」
「文章はナシ! しかも覚えある! 確かにあたしが佐藤くん取ったみたいになったけど、あの時はもうあんたとは終わってたの」
「『の』から?」
「(これを尻取りで通す気? わかったわよ)。『の』からでいいわ」
「『惚気』」
「(何とか過去と繋がらない方向に持っていかないと)。ケーキ」
「あそこのケーキあたしと食べる約束してたのに、図々しい女があたしの分を食べちゃったのよね」
「あんなの分のケーキ食べた人なんているの? 少なくとも私は自分のお金でケーキ食べたことしかない」
「『き』だったわね。『キス』」
「(魚のほうだと思っておこう)。『スズキ』」
「鈴木くんは……」
「魚のスズキだから!」
「そう。き、き……『絹』」
「(あれ、普通だ)。ぬ……難しい、何あるかな」
「『脱がす』とか。あなた強引にやるって聞いたわ」
「そんなデマどこで聞いたのよ! 脱ぐの待たないで脱がすだけだから強引に脱がしてるわけじゃな……」
「…………」
「あー、えーと、『沼』!」
「抜け出せないわよね」
「ただの尻取りだから、連想はしなくていいから」
「『ま』ね。『まだ話終わってないだろ、おい待てよ、美亜!』」
「しつこいのよ、この『あばずれ女』!」

(了)


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このストーリーに関するコメント

18/02/13 光石七

入賞おめでとうございます!
拝読しました。
尻取りに堂々と美亜への悪意を盛り込む香奈と、美亜の心の声やツッコミが面白かったです。
締め方も素晴らしいですね。
楽しませていただきました!

18/02/14 戸松有葉

ありがとうございます!
正直これが入賞する(それどころか予選も)とは思っていませんでした。
楽しんでいただけたなら何よりです。

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