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ポテトチップスさん

20代の頃、小説家を目指していました。 ですが実力がないと自覚し、小説家の夢を諦めました。ですが久方ぶりに、時空モノガタリ文学賞に参加させて頂きます。 ブログで小説プロットを公開してます。ブログ掲載中のプロットを、小説練習用の題材にご自由にご利用下さい。http://www.potetoykk.com

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悪人のたどり着く場所

12/12/18 コンテスト(テーマ):第二十回 時空モノガタリ文学賞【 お正月 】 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1868

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2012年が今日で終わろうとしていた。
明日からは2013年が始まる。
先ほど父は、近所のドラッグストアーに胃薬を買いに出かけた。
母も最近は鬱気味な毎日を送っていた。
毎年、正月が近づくと父と母は体調がおかしくなる。
こんな体に異変が起きる正月が始まったのは、5年前からだ。
そう、私の兄が帰郷するようになったのが原因だ。

私と兄は10歳も年が離れている。
私が小学生の時に兄は家を出て、東京に上京して行った。
兄は学生時代、相当な悪だった。
暴走族に出入りしていて、5回も警察のお世話になった。
その当時、小学生だった私は幼いながらに、父と母の悲しみ悩む姿を目にしては、兄を心底憎んだ。
兄が高校卒業と同時に東京に上京すると、その後はまったく音信不通となった。
それが5年前の正月に突然兄は、帰郷しに帰って来た。
数年振りに見る兄は、髪を緑に染めたモヒカンヘアーで、顔中にピアスをつけていた。
その姿を見た時、私は兄に殺意する感じた。

NHKの紅白が始まった。
我が家では毎年、紅白を観て一年を締めくくる。
特段、観たい番組ではなかったが、毎年のことだから紅白にチャンネルを合わせている。
先ほどから、父も母もため息ばかりをついている。
何度もため息を聞いていると、私までため息をつきたくなる。
「美里、明日お兄ちゃんが帰って来たら、ちゃんと挨拶するのよ」
「分かってるってば」
母は私に念をおして言った。
去年の正月、兄が家に帰郷した際に、私は兄に挨拶をしなかった。
すると兄は、『兄ちゃんに挨拶も出来ないのか!』と激高して、料理の並ぶテーブルをひっくり返した。
「美里、昌隆と喧嘩だけはするなよ」
「分かってるってば。お父さん心配しすぎだよ。お兄ちゃんは、お年玉貰って料理食べたらすぐに帰るんだから。毎年のことじゃない」
「そうだな……」
「お父さん、今年はお兄ちゃんにお年玉いくらあげるつもり?」
「10万円あげないと、激怒するだろ」
「お兄ちゃん26歳にもなって親からお年玉もらっているって、世間では可笑しな話しよ。私、学校で友達に恥ずかしくて言えないわ」
テレビで放送されていた紅白が終わろうとしていた。
今年は白組が勝ったようだ。

夜が明けた。
2013年正月の朝は、晴れ晴れとした青空が広がっていた。
先ほどから母は、台所で正月料理を作っていた。
テレビ番組はどのチャンネルに回しても、正月を祝う番組ばかりが放送されていた。
午前10時を少し過ぎた時、玄関のインターホンが突然鳴った。
母はその音にビクリ! と体を震わせ、父は目をキョロキョロと神経質そうに動かした。
私と父と母は立ち上がり、玄関に向かった。
「ただいま! 親父、お袋、元気か! 美里も1年前より大人になったな!」
「お兄ちゃんお帰りなさい」
「なんだ美里、元気がないな? 風邪でもひいているのか?」
「う、うん、ちょっと風邪気味でね……。お兄ちゃん早く靴抜いで上がりなよ。お母さんお兄ちゃんが帰ってくるの楽しみで、正月料理いっぱい作ったんだからね」
「そうか。お袋の正月料理は最高に旨いから早く食いたいよ」
正月料理の並ぶテーブルの椅子に兄は腰を下した。
父と母と私も椅子に腰を下ろし、正月料理をさっそく食べ始めた。
「親父、お年玉くれよ」
「お、おう」父は、ポケットからお年玉袋に入ったお年玉を兄に渡した。
中身を開けて札の数を数える兄に父は、
「昌隆、今は東京で仕事はしているのか?」
札から顔をあげた兄は「今は、東京に住んでないんだ」
「じゃあ、どこに住んでいるんだ?」
「まあ……関西だよ」
「どうして関西なんかに住んでいるんだ?」
「ちょっとやっちゃってね……」
「やったって、何を?」
「俺の女に手を出した奴の骨を3本折ってやったんだ。そしたらそいつヤクザの組員だったんだ。だから俺の事を組員総出で探している」
母が小さくため息をついた。
「お袋、ため息なんかつくなよ」
「そうね、ごめんなさい。昌隆、あなた今後どうするつもりなの?」
「最悪な展開に追い込まれたら、警察に逃げ込むさ」
「警察に逃げ込むって、どういうこと?」と母が言った。
「まあ……」と兄は口を濁した。
父はテーブルの上においた手を強く握りしめ
「まさかオマエ、犯罪を犯したんじゃないだろうな?」
父の追求に兄は答えなかった。
その後、お昼前に兄はお年玉をポケットに入れ関西にあるという家に帰って行った。

2013年2月4日、学校が終わって自宅に帰った私は、再放送のテレビドラマを居間で観ていると、玄関のインターホンが鳴った。
玄関ドアを開けると、2人の背広を着た中年男と若い男が現れ、私に警察手帳を見せ兄がここにいないか確認した。
私が「なぜ?」と聞き返すと、中年の警察官は兄が殺人事件に関与していることを私に告げた。


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