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山盛りポテトさん

ショートショートがすきです。 星新一さんの小説が好きです。 社会でもがいています。 わかりやすい王道のショートショートを書きたいと思いつつ・・・脱線してます。

性別 男性
将来の夢 海外旅行!一度でいいから行ってみたかったり。
座右の銘 人見るもよし見ざるもよし我は咲くなり 跪く前に開き直る

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タブー

17/12/15 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 山盛りポテト 閲覧数:475

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職場に新入りが入ってきた。
名前は長くて忘れたが、インドから留学にきてる学生らしい。
なかなか抜け目のない奴で、隙を見つけては作業を中断して空を眺め、物思いに耽っている。
その作業というのはいたってシンプルだ。トラックの荷台から魚の入った箱を降ろして台車に乗せ加工場まで運ぶ、たったそれだけだ。
しかし肉体労働なので腹が減る。社員食堂というのもあるのだが大して美味くもないし割高だ。
なので弁当を持ってきて食べる奴が大半なのだが、これがまたひどい。なにせ女っ気のない男だらけの職場だからだ。
妻帯者は比較的文明的な弁当なのだが、独り身だとこうはいかない。
タッパーに何かよく分からない肉を醤油かなにかで炒めたものをぎっちりと詰めた弁当、通称グロ弁や、見たことのない野菜、草と表現したほうが正しいであろうものをビニールの袋に入れてきて、それにマヨネーズつけて食べるウサ弁というのもある。悲しいことにウサギのほうがまだいいものを食べてる可能性もある。
とにかく俺の職場というのは個性的な弁当が顔を並べる底辺飯オールスター会場なわけだ。
そんな奇特な弁当を見るのが好きだった。そして今は期待のホープが1人いる。
そう、インド人のあいつだ。
ステレオタイプな考えをするならナンにカレーだ。
若しくは右手だか左手だかで米を掴んで食べたりもするのだろうか等いろいろと思いをはせた。
しかし、いつも昼の休憩になると包み袋を持ってどこかへ消えてしまうので、その弁当の中身を確認するのは困難だった。
ある日俺は話しかけ直接聞くことにした。
「おつかれさん、いつもどこで昼食べてんだい」
何も答えない。ただ迷惑そうに額の汗をぬぐいながら宙を仰いでいる。
「なにも黙るこたないだろ、そうだ今度一緒に飯食おうぜ」
好奇心には勝てない。この無味乾燥な場所での唯一のアオシスが他人の弁当だからだ。
少しの間沈黙が流れ、ようやく重い口を開いてくれた。
「いいよ、でもカレーじゃないよ」
「なんだ違うのか、まあインド人だからカレーってこともないか」
それはそれで期待に胸が膨らむ。
そうこうしてる間に昼の休憩を知らせるサイレンが鳴った。
「まってました、じゃあ食いにいこうぜ」
インド人はロッカーから少し乱暴に紙袋を取り出す。
「さあ、急ぐよ」
足早に駆ける俺とインド人。
着いた場所は人目のつかない高架下だった。横の川では昨日の雨のせいかゴウゴウと濁流が流れている。
おもむろに袋から何かを取り出した。いたって普通の卵のサンドイッチだ。
「なんだよ普通の飯じゃねえかつまんねえな」
「普通の飯だ、ひとりがすきだからここで食べてる」
「そうかあ、もっとこうインパクトのあるものを期待してたんだけどなあ・・・」
「あなたの食べてるものはなにか」
「ん?コンビニで買ったオニギリだよ」
「交換しよう」
俺はおにぎりとサンドイッチを交換した。
「ん?美味しいねこれ、米の中身がうまいね、なにかこれ」
「えっと、これは具なんだっけかな」
おにぎりの包装紙にはカルビと書かれたシールが貼ってあった。
空はちょっぴり悲しそうに俺達の頭上をゆったりと流れた。


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