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泥舟さん

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黎明期 親玉・神武

12/12/17 コンテスト(テーマ):第二十回 時空モノガタリ文学賞【 お正月 】 コメント:0件 泥舟 閲覧数:1732

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私の最初の記憶が、家族での餅つきの場面というのも珍しいだろう。
私は非常に幼く、見ていただけだったが、家族全員がバタバタと働いていたのを覚えている。
それは、誰かが僕の顔を覗き込む場面から唐突に始まる。覗き込んでいたのは、誰だったか、一人だったかのか複数だったのかもおぼろげだが、その人は私にニカっと笑いかけて餅つきの作業に戻って行った。いや、周りに餅が何もなかったはずなので、ひょっとするとこれから始めるのかもしれない。片栗粉のようなものがその人の手についていたため、そんな印象をもったのだろう。

母が蒸上がった餅米を大きな臼に移し替えると、父が大きな杵でこねまわした後、父と母の連携プレーが始まった。大きな臼に向かって大きな杵を振り下ろす父の姿と、その合間を縫って臼の中の餅をこねる母の姿は何とも楽しそうに見えた。薄く霞がかって見えるのだが、その振る舞いにリズムがあり、踊っているようにも見えた。
つきあがった餅は、これまた大きな台座に乗せ替えられる。
出来上がった餅を平たくするのは、祖父母の仕事のようだ。太いすりこ木棒を使って、隅々まで引き延ばしていった。どうも形にはこだわっていなかったように思う。餅が広がるに任せて、それを手助けするように広げるのだ。大きな餅の塊は歪な形の大きな餅の板になっていった。ある程度薄くすると、台座から広い座敷部屋に持っていくのだ。祖父母が二人がかりでよっこらしょっと持っていく。平たくするのもそうだが、持ち運ぶ姿も楽しそうだ。
祖父母が戻ってくると、台座には新たな餅の塊が湯気を立てて乗っかている。父母が次の餅をついていたのだ。父母が餅をつき、祖父母が平たくする。ここにもロスタイムが全くない見事な連携プレーが存在していた。
何回もこの作業を繰り返して、座敷部屋が歪な餅の板でいっぱいになっていた。

祖父母がどこからかたくさんの丸い型をとりだした。それらは、輪の大きさが微妙に違っているようだし、型の模様も様々だった。今度は、台座の上の餅を広げるのではなく、ちぎって型にはめていく作業のようだ。二人で一つずつ型を取り出して、餅の塊からその大きさに見合う分だけの餅を取り分けてはめていくのだ。祖父母が取り分ける餅は、様々な大きさがあるにもかかわらず、一発で見事に型に収まる量で、途中で減らしたり付け足したりと調整することがない。そのため、二人の作業のスピードはまったく同じで、きれいに二つずつセットで出来上がっていく。機械的にやっているようで、何となく楽しそうだ。餅が熱いからか、途中で何度も大げさに餅を投げ出すようなおどけた動きを祖父がして、祖母が微笑んでるの感じたせいかもしれない。
一つの餅の塊がなくなると、それまでに作った餅を型にはめたまま座敷部屋に持っていく。歪な形の餅の板が敷いてあるので、丸い餅の置ける隙間がいたるところにある。祖父母はその隙間に埋めることもするのだが、餅の板の上にも無造作に置いていく。
戻ってくると次の餅の塊が父母から祖父母に渡される。
父母と祖父母はこの作業も何回も繰り返し、祖父母の型が完全になくなった。

次に、祖父があんこときな粉がそれぞれ山のように盛られた大きなお椀を持ってきた。祖母は何も乗っていない3種類の皿を持ってきた。
今度は、餅の塊から小さくちぎって、あんこやきな粉を塗りつけるのだ。そして3種類の空の皿に、あんころ餅、きな粉餅、そして何も塗らない餅と分けて乗せていった。祖父母の手さばきはここでもスピーディーで、3種類の皿にきれいに積まれていった。餅の塊がなくなると、逆に色違いの三つの山が出来上がった。
祖父母は、山になった3種類の皿を持って、座敷部屋の前まで行くと、おもむろに部屋いっぱいに敷き詰められた餅の上にばら撒いたのだ。最初こそ、あっちに黒い餅、こっちに黄色い餅、その間に白い餅、といった具合に部分的に散らばってしまうが、出来上がる都度、どんどんばら撒いていくのだから、白・黒・黄色で偏りはあるが、最終的には、座敷部屋ほぼ一様に小さな餅が散らばった状態となった。

気付くと、父母の餅つきは終わっており、小さな皿に3種類の餅が一個ずつ乗せて私に差し出された。
私は、一つずつ食べた。白い餅はあまり味がしなかったが、あんころ餅ときな粉餅は甘かくておいしかった。
「さあ、今度はおまえの番だ。行きなさい」と声が聞こえた。それが父の声だか、母の声だか、それとも祖父母のそれだかは分からない。
ただ、私は頷き、餅でいっぱいの座敷部屋に入って行った。

思えば、それ以降、家族の記憶が全くない。思い出すのは、このようにお前たちと一緒に山や野を駆け回って遊んだり狩りをしたことばかりだ。それと、きな粉餅だったお前たちがだんだん表情を持つようになって行くにしたがい、見分けがつくようになってきたことか。


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