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黒谷丹鵺さん

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幽体離脱体験

17/12/03 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:0件 黒谷丹鵺 閲覧数:380

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「慣れれば簡単だよ」

 先輩の説明は丁寧だった。

 学祭でオカルト研究会のブースに立ち寄ったのは冷やかしだったが「幽体離脱体験コーナー」は面白かった。

「目をとじて……力を抜いて」

 簡易ベッドに横になり、先輩の指示通りに手順を踏んでいくと、ふわっと浮くような感覚があって、目は閉じているのに天上が見えた。
 スーッとその天上が近付き、ぶつかると思った瞬間、突き抜けて上昇した。

「わっ」

 思わず声を上げると、ストンと意識が体に戻った。目を開けて先輩を見る。

「すごい!」

 先輩はにっこり笑って言った。

「素質あるよ。練習すればもっと楽しめる」

 その夜、帰宅した私は早速ベッドに寝転んで練習してみた。
 
 やや時間がかかったが、またふわりと浮くことに成功した。今度は声など上げないように気をつける。

 ゆっくり上昇して天井を突き抜け、屋根裏を通過していく。さらに屋根も突き抜けて外に出た。

――動いても大丈夫かな?

 首を回すと軽々と方向転換が出来た。月が薄雲を透かして家々を照らしているのが見える。

――ホントすごい。

 ぐるんと空中で回転してみる。

 しばらく楽しんでから体に戻った。



「どう? やってる?」」

 学内で先輩に声をかけられた。

「はい、面白くて」

 そう答えると先輩は微笑んだ。

「じゃ、一緒に飛んでみる?」

 二つ返事で約束を交わした。

 夜、いつものように離脱して待ち合わせのビルへ急ぐ。屋上でぐるぐる回っている先輩を見つけた。

「来たね」

 手を取られ、いきなり急降下して地面すれすれまで引いていかれる。
 絶叫マシーンのような動きに危うく悲鳴を上げるところだった。

「楽しいでしょ?」

 先輩はアハハッと笑った。

――この人、どうして話せるんだろ?

 私は声を出したら体に戻ってしまうのに。

「君も喋りたい?」

 うなずくと、先輩は嬉しそうな顔で私の背後に手を伸ばす。

 振り向くと、尾のようなものが、私の尻から長くどこまでも延びている。こんなものが生えているとは気付かなかった。

 先輩はそれを掴んでニヤリと笑った。

「魂の緒を切ればいい」

 ゾッとした。たまのお、というのが何なのかよくわからないのに、怖くてたまらなくなる。

「やめてください!」

 声を出すと次の瞬間、私は自分の部屋で目を開けていた。
 心臓がばくばくいっている。



 翌日、気になって先輩を捜し歩いた。

「オカルト研究会? そんなのとっくに廃部になってるよ」

 じゃ私が会った先輩は……足元から震えが上がってきた。

――幽体離脱なんて二度としない!

 だが、その夜なかなか寝付けずにいるうち無意識に浮き上がりそうになった。

――だめっ

 慌てて声を出して戻ろうとしたが、金縛りにあったように体が言うことをきかない。

 不意に足首を掴まれた。

 ぐいぐい引っ張られ、下半身から浮き上がって逆さまになっていく。

――嫌だ!

 そう思うのに抵抗できない。

「一緒に逝こうか」

 先輩の楽しそうな声が囁く。

――やめろ!

 グンと後ろから何かを引っ張られ、体の中身を抜かれるような、今まで感じたことのない猛烈な痛みが走った。

「ほら、これで君も自由に喋れるよ」

 プツン。

 何かが切れた音がした。


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