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瀧上ルーシーさん

twitter https://twitter.com/rusitakigami 破滅派 https://hametuha.com/doujin/detail/rusitakigami/

性別 男性
将来の夢 プロ作家になること。
座右の銘 犬も歩けば棒に当たる。

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美しくありたい

17/10/24 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 瀧上ルーシー 閲覧数:652

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 私は美人だ。美人故にやっかまれるので同性の友達はいない。
 まだ化粧を始めていないし、服もたまの休みにお母さんが買ってくれる物を着ているだけだが美人なものは美人だ。二重の瞼も小鼻も肩までの髪も自慢だった。私は美しい。
 両親は共働きなので私をめったに拘束しない。仕事から帰ってきたお母さんなりお父さんなりが毎晩夕食を作ってくれる。
 夏休みの少し前、放課後小学校で開放されている校庭で、体育倉庫から一輪車を取って来て一人でそれに乗っていた。ただ前に進むだけで楽しかった。男子達のサッカーや野球に混ざるのは嫌だし女友達もいないので一人で時間を潰すしかない。スマートフォンは買ってもらえないし、家には古いゲーム機があるだけなので、もっぱら放課後の校庭や図書館で時間を潰している。
 その時、校庭でサッカーをしていた男子の一人が私の名前を叫びながらゴールにシュートを打っていた。ボールがネットに突き刺さる。
 その男子は龍真と言って、学校中の人気者だった。身体も大きくサッカークラブに入っている選手の中で一番強いフォワードだ。
 その龍真が私の方へやってきた。
「今の見てただろ? ご褒美にキスしてくれ」
「やだよ」
「じゃあ次にシュート入れたらしていい?」
「いいわけないでしょ」
 龍真は汗で濡れた髪を手ぐしで後ろに流してサッカーに戻っていった。
 校庭で遊んでいていい時間が終わりそうになる頃、私は一輪車を倉庫に戻しに行った。その途中で、男子数人に小突かれている男子を見つけた。彼の名前は和雪、マッシュルームカットみたいな頭をした、うちのクラスの虐められっこだった。
 私は和雪の背中に抱きついて、それ以上彼が暴力を振われないように守ってやった。
 和雪を虐めていた生徒達は「サツがきたから行こうぜ」なんて言って、私達の前から消えていった。「サツ」は一部の男子達がつけた私のあだ名だった。サツとはきっと警察のことだ。和雪をかばうのはいつものことだった。今に始まったことではない。
 和雪の背中から離れると、彼はいつも通りありがとう、と私に言った。
 龍真は男子的な遊びしかしないので放課後一緒に遊ぶことはないが、和雪の家で彼に勉強を教える家庭教師がくるまでの間、タブレット端末を貸してもらって、インターネットで遊ぶことはよくあった。私の小遣いでは買えるわけないがブランド服のサイトやユーチューブをよく見せてもらっていた。それに和雪はコーンフレークやヨーグルト、甘いミルクティなどの簡単なおやつまで私のために用意してくれていた。
 そうして和雪の家庭教師がやってきて、私は彼の家から出て行った。家に帰る途中、狭い街なので龍真達がケードロという遊びをしているところに出くわした。ケードロは鬼ごっことかくれんぼを足したものを集団でやるような遊びだ。
 龍真は汗だくになって走っていた。和雪もそうだが、タイプが違うそんな彼のことも私は少しだけ好きだった。
 夜になってその日はお父さんと二人きりで夕食を食べた。洗い物をしているところ、玄関のチャイムが鳴った。応対したお父さんに呼ばれる。龍真がバケツと花火を持って立っていた。
「花火やろうぜ」
「ちょっと待ってて」
 お父さんに、洗い物を終わらせてから行くから花火してきていいか聞くと、洗い物も今日はやらなくていいから行ってきなさいと言われた。
 沢山の友達と花火をやるのかと思ったら、龍真の家の前で二人きりで花火をすることになった。私は冗談混じりにもてる女は辛いわあ、などと思った。
 それからしばらくの時が経った。もうすぐ私達は小学校を卒業する。
 龍真は特待生扱いでサッカーが強い中学に推薦で入れたらしく、和雪は私立の進学校に進むらしかった。私は地元の公立中学に進学する。
 ある日、私は龍真に告白された。「中学生になっても俺と会ってください、そして出来れば彼女になってください」ということらしい。私は考えさせてと言って告白された校舎裏から逃げた。
 校門から出る前に今度は和雪に呼び止められた。
「遠距離恋愛になるけど僕と付き合ってくれませんか?」
 彼に告白されて私はまた答えを保留にしてもらった。
 家に帰ってきて、二人にどう返事するか迷った。
 龍真は男らしくて頼り甲斐があるし、和雪をずっと見守っていたいような気持ちもあった。誰にも相談はしない。私にはその二人以外親しい友達などいないからだ。
 鏡にうつった自分の顔を見た。迷っている顔も私は綺麗だった。二人にどう返事するかその時決めた。私はただ美しくあればいいのだ。
 卒業式の後、別々に呼び出して二人の告白を両方とも断った。
 あくまで今のところだが、私には私だけいればいい。
 さようなら、龍真、和雪。もう会うこともないだろう。
 その晩私は後悔しているわけでもないのに枕を濡らした。


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