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ふゆさん

ふゆ。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 なし

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それは

17/10/23 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 ふゆ 閲覧数:358

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「私のことは忘れて他の人と幸せになってね、私も君のことは忘れるから」

 それは彼女から伝えられた最後の言葉だった。
 僕の人生の中で彼女は唯一愛することのできた人間であり、唯一本当に心の開ける人間。そんな彼女からいきなり別れを告げられた僕は戸惑うしかなかった。
 
 彼女のことを忘れて他の人と付き合うことなんて僕にはできない。でも彼女は私のことは忘れて他の人と幸せになってね、と言う。
 それは僕にとって難しい選択肢だった。
 愛している君の言うことはできるだけ聞きたい、でもやっぱり君を忘れられない。


「どうすればいいんだよ……」


 僕は彼女に向かって言った。もちろん返事はない、だってもう僕のことなんて眼中にないもんね。
 

 それから数年もの間迷い続けた。


 


 そして久しぶりに会う約束をしたんだ。僕の迷っていた答えをしっかりと伝えるために。

「僕ね、いい人に出会ったんだよ。その二人のおかげで迷っていた答えがちゃんと決まったよ」

 やっぱり返事はない。でも僕は続けた。

「その二人は優しくてこんな僕にも仲良くしてくれたんだ。だから僕は新しい人を見つけるよ……だから君も早くいいひと見つけてね」

 僕は目の前にいる彼女をゆっくりと撫でながら言った。撫でたそれはとても冷たく、悲しい気持ちになりそうになる。
 また迷いそうになる僕の耳にそれは聞こえたんだ。





「よかった」




 僕は最後に彼女と一緒に泣いた。冷たい彼女に僕が水をかけて泣かせたのだけどね。
 僕の迷い。それはもう迷わなくなったよ。


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