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高橋螢参郎さん

何でもいいから金と機会おくれ

性別 女性
将来の夢 二次元に入って箱崎星梨花ちゃんと結婚します
座右の銘 黙り虫、壁を破る

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サンタなんか信じてない

12/12/10 コンテスト(テーマ):第十九回 時空モノガタリ文学賞【 クリスマス 】 コメント:0件 高橋螢参郎 閲覧数:1703

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「どろぼ……」
 そう叫ぼうとした少女の口を、女は慌てて抑えた。
「いや、どう考えても違うでしょ! ほら、この格好!」
 何が泥棒だ。時は十二月二十六日、未明。このタイミングで子どもの下へ現れる人間といったらあいつしかいないだろうと、女は歯噛みした。成程、顔こそマスクで隠していたものの女の服は赤と白、そして頭にはふわふわの帽子。手にした大きな袋といい、あの老人を意識しているのだろう。
 だがかつて宴会の余興用にコスプレショップで買ったそれは、袖無しの上着にミニスカートという、いかにもな有様だった。第一、
「サンタは男でしょ!」
 目を赤く腫らした少女が興奮気味にまくし立てる。その子どもらしからぬ、頑なな態度に女は肩を落とした。
 少女は毎年こうなのだった。幼稚園でサンタの話をして友達からバカにされて以来、サンタクロースの存在を決して信じようとしなかった。その不在を立証する年一回のチャンスとばかりに、毎年この時間帯だけはぎんぎんに目を光らせて待ち受けているのである。どうせ翌日も冬休みなので、何の支障もない。
 ……可愛くないな。この子。
 コスプレサンタも心の底ではそう思ってしまうのだが、さりとて口に出して言う訳にはどうしてもいかなかった。言葉による説得を早々に諦め、袋から丁寧にラッピングされた大きな箱を取り出す。
「あれ、そんな事言っていいのかなー? いつもいい子にしてる愛梨ちゃんに、こうしてわざわざプレゼントを持って来たんだから……って、人を呼ぼうとしなーい!」
「だって人の家へ勝手に入るのはどろぼ」
「違ーう! サンタなの! ここには不思議な力で入ったの!」
「不思議な力って何」
「そ、それはその……まあ、確かに不思議なんだけどさ……」
 答えられずごにょごにょと女サンタが一人ごちている内に、少女は部屋の電気を点けた。まだ小学校3年生だというのに自分の部屋を貰い、独りで寝ている。そのおかげで即両親に見つかるのは避けられたのだが、それにしても随分と早熟な少女だった。部屋にはぬいぐるみの一つもない。
「……どうせ、お母さんでしょ」
「えっ」
 女サンタが驚いたような声を上げたのを聞き、少女は歳に似合わぬ深い溜息を吐いた。やっぱり可愛くないのかもと、女サンタもバレない様に心の中で溜息を吐いた。
「だって愛梨の名前呼んだじゃん。そんなマスクしたってバレバレだから」
「あー……いや、サンタは子どもの事なら何でも知ってるから」
「何それキモい」
 取り付く島もないその様子に、女サンタは渋々顔を隠していたマスクを外した。
 その素顔は間違いなく愛梨の母親ではなかったが、どこか似た雰囲気を持っていた。しかし母親よりかはいくらか若く見える。叔母、とするのが一番しっくり来るのだが、母方に叔母はいなかった筈だ。
「納得してくれた?」
「……おばさん、誰?」
「お、おばっ……ま、まだ二十代なのに……まあいいわ。その内そっくりそのまま、全部返って来るんだからさ。ほら、プレゼント。貰っときな。……いい、サンタはいるからね! 友達に何言われたって、いるの! わかった?」
 その必死な、あまりの剣幕に、流石の少女も気圧されてしまった。
「わ、わかりました……」
「よろしい。じゃ、そういう事で」
 そう言い残すと、女サンタは窓と出入り口を見比べて、結局入ってきた出入り口から出て行った。少女は扉を開けてその姿を後ろから見送ったが、トナカイの引いたソリはおろか、そろりそろりと音を立てずに階段を降りた後、玄関から堂々と帰ったではないか。しかも最後に、わざわざ外から鍵をかけて。
 全てを見届けた少女は冷静に、すう、と息を吸い込んだ。
「お母さーん、変な人―!」

 ……まあ、結局そう上手くはいかなかった、と。
 結局寺川愛梨はサンタを信じなかった。過去は、変わらなかったのだ。
「お前ってさ、可愛くないよね」
 と彼氏に言われ、自身の開発したタイムマシンで実験も兼ねてかつての自分に会いに行った訳だが、皮肉にも帰ってきてから全てを思い出したのだ。
 我が家でクリスマスに起こった、謎の不審者事件。無論実家の鍵くらい今でも持っている。
 そして、あのプレゼントの中身。人気の最新型ペットロボットだったのだが。可愛がるどころか仕組みを調べる為部品を徹底的に分解したのがきっかけで、今では立派な科学者になってしまった。
 そう上手くはいかないものねと、風邪をこじらせて久しぶりに戻ってきた実家で、愛梨は独り思うのだった。


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