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瀧上ルーシーさん

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性別 男性
将来の夢 プロ作家になること。
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初恋の答え

17/09/15 コンテスト(テーマ):第143回 時空モノガタリ文学賞 【 約束 】 コメント:0件 瀧上ルーシー 閲覧数:517

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 私には仲のいい友達がいた。川原武尊という男子だ。彼は眉にかかるくらいでカットされたさらさらの前髪と丸い眼鏡が特徴的で、勉強はできるがスポーツができなくドッチボールではいつも標的にされていた。
 彼の学習塾がない週三日程、私は図書館で勉強を見てもらっていた。もう何年も続いている習慣だった。彼は私には到底答えがわからない勉強をしている。それでも向かいの席で勉強している私がわからない箇所に当たれば、丁寧に解説してくれた。
 頼り甲斐があってそんな彼が好きだった。お誕生日会にも毎年呼んでいたし、バレンタインデーには手作りチョコをあげて、彼の誕生日には毎年文房具をプレゼントしていた。
 私はもうずっと武尊のことが好きだった。だが彼はそんな私の気持ちには気づくそぶりも見せないで、図書館の椅子に座って淡々と勉強していた。
 ある日私は、待ち合わせしていたいつもの図書館で武尊と落ち合うと彼に言った。
「いつものお礼に駄菓子おごってあげるよ。二百円分まで」
「……え、いいよ」
 武尊は戸惑ったような顔をしていた。
「いいから!」
 勉強道具が入ったリュックサックを背負っている彼の手を私は引っ張って駄菓子屋まで歩いた。途中にクラスの男子と擦れ違って「ひゅーひゅー! ガリ勉カップルう!」などと囃し立てられたが、私にとってそれは快感だった。武尊とカップルに見られるなんてむしろ嬉しい。
 駄菓子屋につくと私は自分が食べたい物をさっさと選んで会計を済ませたのだが、武尊は静かに駄菓子を眺めていた。
「どうしたの、食べたいのないの?」
「いや、どれがどういう味するのか見ただけじゃわからなくて」
「じゃあ私が選んであげる」
 チョコパイプやシガーチョコ、十円ガムにうまい棒、ポテトスナックやキャベツ太郎をチョイスして私は会計を済ませた。我ながら無難な選び方だと思う。
 そして駄菓子屋の中のお菓子を食べたりゲームをして遊ぶために設置してあるテーブルの前に私達は座った。
 武尊はおっかなびっくりしながら駄菓子を食べていた。
「おいしい?」
「うん」
 大人びた武尊はたとえ不味かったとしても不味いとは言わないだろうと私は思った。
 小学六年生の後半に入った。武尊は私立の中学を受験するらしい。私は地元の中学に進む予定だったので別れはもうすぐそこまできていた。
 受験シーズンがきて武尊は見事関西の私立中学に合格したようだった。私立中学を沢山受験して、合格した中でそこが一番偏差値が高い学校だったので入学を決めたのだと彼は言っていた。武尊はその中学の寮に入るようだった。
 いつもの図書館でそれを聞かされると自分の目に涙が溜まっていくのが感じられた。
「もう武尊と会えないの……?」
「中学入っても勉強しないといけないからね。そう簡単には会いに行けないよ」
 誠実な武尊はこんなときも嘘がつけないようだった。私は取り乱して更に泣いてしまった。
 武尊は珍しく明るい声で言った。
「僕は大学は東大に入ると決めているんだ。そこで再会しよう」
「東大なんて私には無理だよ……」
「いや、君にならきっとできるよ。約束」
 私と武尊は指切りをした。
 それから小学校の卒業式がきて武尊と会うことはなくなった。
 親に頼んで家庭教師までつけてもらって、私は中学高校と勉強に明け暮れた。テストの結果は四位より悪い順位だったことはない。格好も髪型もこだわらなかったので、ガリ勉ブスとずっと陰口を言われていた。小学校で一緒だった友達も私からすぐに離れていった。彼女達が言うには私には何か憑き物がついているらしい。そんな私の趣味は小学生時代ずっと武尊と一緒に来ていた図書館で、小説を読むことだった。小説を読むことは勉強の何倍も楽しかった。それも恋愛小説が一番楽しめた。武尊と一度だけ一緒に行った駄菓子屋にもよく行った。趣味で経営しているのか、その駄菓子屋が潰れることはなかった。
 いつまでも武尊に会いたいという気持ちはかわらなかった。また一緒の時を過ごしたい。何故そこまで彼にこだわるのか自分でもわからなかったが、きっと彼は私の初恋なのだ。次の恋はまだしていない。早く再会して武尊と恋人同士になりたい。
 そうして高校生活が終わり私は東大に入学することができた。私の身体はぶくぶくと受験太りしていた。彼は嫌がるだろうか。
 フェイスブックを検索すると、約束通り武尊も東京大学に入学できたようだった。驚かせるために私はフェイスブックからはメッセージを送らなかった。
 そうして東大で昼休み。学食で武尊を探し回った。すぐに見つかったのだが彼は眼鏡はしていなくお洒落になっていて綺麗な女子と二人で食事を取っていた。親密そうに見えた。私も女なのでわかる。二人はきっと恋人同士だ。
 約束は果たされた。
 だが武尊の隣はもう埋まっている。


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