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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そう思って書いて来ましたが、老いは進んでいます。 されど諦めず、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 されど作品は、申し訳ございません、次のシリーズものに偏ってしまってます。 ツイスミ不動産。。。 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)。。。 未確認生物。。。 ここからの脱出を試みますが、なかなか発想が飛ばせなくて。。。老いるということはこういうことなんだと思う今日この頃です。 が、どうかよろしくでござりまする。
性別 | 男性 |
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将来の夢 | この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 |
座右の銘 | Do what you enjoy, enjoy what you do. |
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このストーリーに関するコメント
12/12/05 草愛やし美
鮎風 遊さん、拝読しました。
うまんまの箸欲しいです、でも、私も飲むほうなので、残念ながら、お呼びじゃない人のようです。食べながらパソ、ちらしを見る、時空を読む、やってますねえ〜耳が痛い話ですわ(苦笑) 鮎風さんも、リアでやってるんでしょうね、推測当たってませんか? 面白かったです。
12/12/07 石蕗亮
鮎風 遊さん
拝読いたしました。
私もうまんまの箸欲しくなりました!
鮎風さんの作品はいつも引き込まれるような真実味があって面白です。
パソの周りには何かしら飲食物ありますよねぇ。
12/12/07 泡沫恋歌
鮎風さん、拝読しました。
うまんまの箸ですか?
そういうのがあれば、主婦もお料理が楽になるかも知れない。
私もパソコンの周りに飲みもの、お菓子置いてます(笑)
12/12/10 石蕗亮
鮎風遊さん
再評価に訪問しました!
何度読んでもいい話です!
12/12/12 そらの珊瑚
鮎風さん、拝読しました。
昔話風の語りがいいですね。うまんま、というネーミングが最高です♪
12/12/15 鮎風 遊
草藍さん
これ半分、実話です。
パソの周りにはいろいろと。
うまんまの箸を使う資格なしです。
12/12/15 鮎風 遊
石蕗亮さん
何度も訪ねて頂き、ありがとうございます。
いい話と言って頂き、また力がわいてきました。
12/12/15 鮎風 遊
泡沫恋歌さん
そうですね、主婦にとっては魔法の箸。
だけど3条件がなかなか難しいですよ。
12/12/15 鮎風 遊
そらの珊瑚さん
ええ名前でしょ。
考えました。
「うまい」と「まんま」の合成語です。
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単身赴任中の高見沢一郎、パソコンの前でコンビニ弁当を突っつきながらふと思い出した。それは幼い頃に祖父がポロリと漏らした『うまんまの箸』のこと。一体それはどんなものだろうか? ネット検索すると……。
うまんまの箸は香木うまんまの木から作られ、それを使うとすべての食べ物が美味しいと感じられる。
材料となるうまんまの木は森深くに育つ落葉樹。初夏に可憐な花を咲かせ、秋には真っ赤に色づく。木の実の栄養価は高い。だが、ひどく渋い。
リスなどの森の小動物たちは冬に備え、この実を好んで食べる。しかし、なぜ吐き出したくなるほどの実を摂取できるのか? 不思議だ。だがここにヒントがある。
彼らはうまんまの木のうろ穴に潜り込み、それらを木の皮と共に囓る。そんな習性からすると、つまり、うまんまの木を食感しながら食べれば、その渋さは消え、美味に変わるからだと推察される。
ここに『うまんまの箸』の言い伝えがある。
昔、人里離れた所に権助一家が住んでいた。暮らしは貧しく、主食は雑穀と芋。子供たちはいつもひもじい思いで泣いていた。
初雪も間近な頃、これでは冬を越せないと、権助はきのこなどを求めて森深くへ入って行った。
森の夜は早い。いつの間にかとっぷりと暮れ、権助は道に迷ってしまった。ここは無理せず、うまんまの木の下で一夜を明かすこととした。だが空腹で堪らない。
身の回りに目をやると、皮肉にも渋くて食べられないうまんまの実が辺り一面に落ちている。そんな時に権助は思い出した。リスはわざわざ実をむろ穴へと運び、うまんまの木の皮と一緒に食べる、と。
権助は閃いた。早速うまんまの木の枝を折り、箸を作る。そして箸で実を摘まみ、舌で箸先を濡らしながら口へと放り込む。するとどうだろうか。渋みがなくなっているではないか。むしろ隠されていた甘みが染み出し、実に美味い!
権助はここで気付いた。うまんまの箸はまずい食べ物を美味しくしてくれるのだと。
権助はさらに箸を作り、家へと持ち帰った。それらを使い始めた権助家族、たとえまずい雑草でも美味しく食べられるようになった。結果、ひもじさはなくなり、子供たちはすくすくと育った。
その上に権助は偉かった。森に入っては箸を作り、まずい食事しか取れない貧しい人たちや食が進まない老人たちに、とにかく食事が少しでも美味しく感じられるようにと、うまんまの箸を配り歩いた。
しかし権助は飽食飽満の金持ちだけには箸を譲らなかった。
「なるほど、おじいちゃんが話してた箸って、こういうものだったのか」
高見沢は腑に落ちた。それから割り箸で、弁当の縁にぺちゃりと貼り付いたカマボコを剥がし口に入れる。どことなくプラスチックの味がする。
「あーあ、このディナー、俺も『うまんまの箸』、使いたいよ」
こんな願望が吹き出した時、高見沢はハッと思い出した。
「そう言えば、おじいちゃんが言ってたよなあ。一郎、お前の人生の、ここぞという時には美味い味が必要だろ。だからその時には、この『うまんまの箸』を使えと」
確かに、形見としてもらっていた。
「あの箸、どこへ仕舞ってしまったかなあ?」
すぐさま引き出しをひっくり返す。そして「ラッキー!」と見つける。
神々しく光る箸、手に取るとずしりと重く、神懸かり的な趣がある。
「おっおー、これでコンビニ弁当のカマボコも新鮮アワビになるぞ! すべての食事がミシュラン3つ星級に……大変身じゃ!」
不届きにもこう叫び、パソ画面の前にまたドッカと座る。そして今度はエビ天を挟み上げ、そろりと口に入れる。そこでじっくりと味わえば良いものを、普段の流れか、左手で缶ビールをグビグビと。
「えっ、このエビ天、まるで輪ゴムのような味。『うまんまの箸』で、ぜんぜん美味くならへんやーん」
そう、それはいつもと変わらぬテースト、単身赴任の侘びしい味なのだ。
高見沢は期待が外れ、メッチャ不満。後は一人ムカッときて、エビ天を前歯でカチカチと。
「あ〜あ、疲れたよ。もう寝るか」
毎晩単身赴任アパートで繰り返される、己(おのれ)で火を点けて、挙げ句の果てに自分で火を消す、こんな一人ヨッパのマッチポンプ。後は惰性で次の画面へと。
だがそこには、まことに失礼な、しかしまったく図星の忠告があったのだ。
『うまんまの箸』効用の必要3条件
1.「食べながらパソをやる」などの、小生意気な食事態度は取らないこと
2.あーだ、こーだと文句を言わず、食べられることにただただ感謝すること
3.酒、ビールなどのアルコールに溺れてないこと
これを読んだ高見沢、苦くなったビールをゴックンと。後はボソボソと吐くしかなかったのだ。
「おじいちゃん、俺まだ『うまんまの箸』、お呼びじゃなかったよ。……、ありがとう」