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ひーろさん

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夕陽が沈む頃

17/09/09 コンテスト(テーマ):第143回 時空モノガタリ文学賞 【 約束 】 コメント:0件 ひーろ 閲覧数:395

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 夕陽が沈みはじめ、鮮やかに輝いていた空のオレンジ色が、ほんのり赤みがかった暗い闇色に変わる頃。

「ママ……ぼくが大人になったら、有名な博士になれるって言ってくれたよね……? 博士になって、タイムマシンを発明できるって、約束してくれたよね……?」
 先刻まで燃え上がるように輝いていた少年の瞳は、暗く悲しげなものに変わっていた。
 母親は、心配そうな表情を浮かべながらも、すぐにいつもの笑顔に戻って言葉を返した。
「約束するわ。マサトならきっとできるよ。過去にも未来にも行けるタイムマシン。だってほら、マサト計算得意じゃないの」
 もう、わたしに約束させてどうするのよ……母親は内心そう思うが、そんなこと、口にはしない。

「ママのうそつき!」
 突然に、少年は叫んだ。抑えきれずに込みあがる悔しさが、涙になってぼろぼろとこぼれはじめた。血のつながった母親にも、息子の言葉の意味が理解できない。
「何を言ってるの、嘘なんてついてないじゃない」
「うそつきなんか大嫌いだ!」
「どういうことなの? マサト、言ってみなさい」
「来ないじゃないか」
「え?」
「ママなんかもう知らない!」
 少年はそう言って勢いよく立ち上がった。その拍子に、彼のズボンのポケットから小さな紙片がひらりと床に落ちた。そのことに気づかないまま、彼は自分の部屋へ走っていった。
「これは……」
 母親は落ちた紙片を拾い上げ、そこに書かれた短い文を読んで、ようやく理解した。




『ぼくは、タイムマシンが完成したら、それにのって、今日この日の、夕陽がしずむころ、必ずここに来ることを約束します。平成29年9月9日』


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