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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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夢中での執筆

12/12/05 コンテスト(テーマ):【 喫茶店 】 コメント:9件 石蕗亮 閲覧数:2146

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 ネタが出てこない!
小説作家の男は悩んでいた。
風呂で考えても、散歩してもネタが出てこない。
取材と称して旅行もしてみたがだめだった。
煙草を咥えながら散策していると喫茶店を見つけた。
おや?こんなところに喫茶店なんかあったっけ?
気になり店のドアを開けると初老の男が「いらっしゃいませ。」と出迎えた。
店の中には他のお客はいなかったので一番奥の席を陣取るとブルマンを頼んだ。
ネタ帳を開きペンを出すが一向に走らない。
コツコツと紙面をペンで突付くだけで先へは全く進まなかった。
「お待たせしました。」
マスターが珈琲を運ぶと男はマスターに尋ねた。
「ねぇ、マスター。何か面白い話知らないかなぁ?」
「面白い、と言いますと?」
「いや、何でもいいんだけどね。」
「不思議な体験でもしたいんですか?」
「そうそう!そういうのいいねぇ!」
そう言うと男はブルマンを一気に飲み干した。
「それでは。」
マスターはそう言うと男の視界を覆うように手を翳した。
「何を…。」
最期まで言わずに男は眠りに落ちた。

「ここは?」
男は自分の書斎で机の前に居た。
俺は眠ってたのか?
そう思いながら机の上の原稿に目を通した。
そこには書いた覚えの無い作品が描かれていた。
一文一文が引き込むように魅力的で続きを読まずにはいられなかった。
貪る様に次々と原稿を読み上げると途中で終わっていた。
「どこだ!続き!この話の続きはどこだ!」
原稿をどこかに落としていないか机の周りや書斎中を探したが続きの原稿は見つからなかった。
気になる!続きが早く読みたい!
男は作品の続きに飢えた。
それほど面白い作品であった。
あまりに面白く一度読んだだけなのにソラで暗唱できるくらい覚えていた。
「失礼。」
襖を開け喫茶店のマスターが入ってきた。
「なぁ!あんた!この作品の続き知らないか!」
男が問い詰めるとマスターは落ち着いて、と促した。
「この作品は近い未来で、もしくは近い別の世界の貴方が書いた物語です。」
「どういうことだ!?」
「あなたのために少しだけ未来の前借をしたんですよ。ちなみにここは貴方の夢の中です。」
「あんた、一体何者なんだ。」
「人は『夢師』と呼びます。人によっては夢使いとか、ハイカラにサイコダイバーなんて言う人もいますがね。」
「そんなことはどうでもいい!」
そんなことって言われた。夢師は一瞬がっかりしたが気を取り直した。
「あとどれくらいここに居られる?」
「店で貴方が寝てるのも邪魔だから現実時間であと1時間くらいかな。」
「たった1時間か。」
「おまえさん、体感時間って知ってるかい?」
「体感時間?」
「寝て夢を見て、長い夢を見たと思ったのに時計を見たら布団に入ってから10分しかたってなかったっていう経験ないかい?」
「あぁ、あるある!」
「それが体感時間さ。現実時間と脳が感じる時間には大きな差がある。個人差はあるが最短でも10分で3日くらいの時間は取れる。1時間あれば18日の時間はここで費やせる。」
「18日あれば充分だ!俺はここで続きを書く!」
男はそう言うと続きを書き始めた。
「良い創作を。」
夢師はそう言うと書斎から出て行った。

ジリリリリリリリリリリリ

目覚ましの音で男は目を覚ました。
「良い作品は作れましたか?」
夢師の問いに男は満面の笑顔で「傑作だ!」と答えた。
「どうぞ。」
夢師は目覚めのブルマンと2杯分のオーダー表と「夢と深層心理の万屋 夢師」の名刺を置いた。
男はまたも一気に飲み干すと釣りはいいと万札を置いて店を飛び出していった。

数ヵ月後
彼の作品がミリオンセラーで書店に並んだ。
夢師はその本を購入すると珈琲片手に読み始めた。
巻末には「スペシャルサンクス夢師」の一文が添えられていた。


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このストーリーに関するコメント

12/12/05 石蕗亮

いつも読んで下さっている方も初めての方も読んで頂きありがとうございます。
お馴染み夢師シリーズです。
時空モノガタリ運営様
ストーリー1000件達成おめでとうございます!
これからも皆様よろしくお願い致します。

12/12/05 草愛やし美

石蕗亮さん、拝読しました。

夢師、やりますね。この喫茶店どこにあるのでしょうか? 一度、お会いしたいものです夢師さんとやらに。

夢の時間換算ってそうなんですか、結構理数系なんですね、石蕗さん。今回のも、面白かったです。

12/12/05 石蕗亮

草藍さん
いつも読んで頂きコメントもくださりありがとうございます♪
私の知る限り現実での夢師は何人かいますが、この作品のようなことをしていたのは私の先代くらいでしょうか(笑)
夢中の体感時間は個人差がかなりあるようです。
私はよく仕事の計画書を夢で作って朝起きてからそれをまとめて仕上げることがあります。でも疲れますw
次回も楽しんでいただけるようがんばりますね^^

12/12/07 泡沫恋歌

石蕗亮さん、拝読しました。

「夢師」のシリーズは奇想天外で面白いです。
新しい感覚のストーリーを楽しませて頂いてます。

ありがとうございます。

12/12/07 石蕗亮

都稀さん
読んで頂きありがとうございます。
私にとっては日常的な話です(笑)
弟子にも「私らしい」と言われます。
シリーズ物で書いてますのでこれからも楽しんでいただければ幸いです。

12/12/07 石蕗亮

泡沫恋歌さん
いつも読んで頂きコメントありがとうございます。
人外の世界は奇想天外だらけです(笑)
でも人外から見れば奇想天外が当たり前のことが多いです。
真逆の世界観をこれからもよろしくお願いしますね^^

12/12/16 ドーナツ

一気に読ませていただきました。
創作してる人は、この店に行きたくなりますね。
夢師さんにあえるまで、何度でも通ったりして。
面白かったです。


12/12/17 石蕗亮

ドーナツさん
読んで頂きありがとうございます。

私の夢は喫茶店経営しながらそこで執筆業しながら占いをすることです。
夢師の店は私の理想でもあります。
いつかみなさんが来れるような夢師の店をやりたいですね。

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