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黒猫千鶴さん

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魔女の家族

17/09/04 コンテスト(テーマ):第143回 時空モノガタリ文学賞 【 約束 】 コメント:0件 黒猫千鶴 閲覧数:1176

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「必ず迎えに行くから……」

 それが、母からの最後の言葉だった。

『速報、我らの聖なる炎で魔女を滅した』

 一枚の紙が街中に貼り出されて、ようやく皆は歓喜の声を上げる。私は深くフードを被って、民衆の中に混じっていた。

(魔女じゃないのに……)

 踵を返して、静かに離れて行く。誰にも気付かれないように、足早に森の奥へと帰る。
 私と母は、目の色が金色に輝いている。
 金色の瞳の人間は、魔女の末裔だと言われていた。魔女は特殊な力を持ち、人の生命を吸って生きていると。

「どうして信じるんだろ?」

 今時、魔女なんているはずがないのに。でも、人間は自分よりも優れた者が、目の前にいると恐怖や嫉妬を抱く。
 同じ意見を持つ者を見付けて、群れる。悪を倒すと訊こえはいいけど、実際やっていることは集団による暴力だ。
 父はここにくる前に死んだ。
 私達を守るために、街の人からの暴行を全て受けてくれた。

「逃げるんだ――」

 必死な目、精悍な顔、勇気ある行動。自慢の父だった。
 母は涙を零しながら、私の手を握り締めて走り続ける。声を出すのを我慢するためか、唇を強く噛む。口の端から赤い雫が垂れていたのが、見えた。

「――てやる」

 あの時、母は何て言ったんだろうか?

 森の奥深くにある小さな小屋に、私と母は住んでいた。
 一人となってしまい、少しだけ広く感じる。

(ここって一人だと、こんなにも広かったんだ……)

 突然、ドアをノックする音が響く。

(誰!?)

 街から離れたこの森には、近寄れば呪われる――魔物が棲む。
 その噂を訊いて、私と母はここに住むことを決めた。誰も近付かない、たったそれだけの理由――。

「すみません、誰かいませんか?」

 心臓が大きく跳ねる。激しく脈打ち、目を大きく見開いた。冷や汗が頬を伝い、顎先から落ちていく。
 フードを深く被り、相手を見ないようにそっとドアを開ける。

「……どちら様ですか?」
「あの、道に迷ってしまいまして……」
「街まででしたらこの道を真っすぐ行けば大丈夫ですよ」

 街までの道のりを指差すと、彼は私の手首を強く掴む。

「な!?」
「いえね、俺の行先は――魔女の墓場なんですよ」

 彼はもう片方の手でフードを払い除けて、私の金色の瞳を覗き込んできた。

「それにしてもキレイな瞳だな、記念にもらっちゃおうかな?」
「やめておけよ、悪趣味だな」

 彼の後ろや森の中、家の陰からたくさんの男達が現れる。彼らが着ている服は同じで、どこかの制服のようにも見えた。

(確か、これって……王族直属の騎士団?)
「お前、この間の魔女の眼も記念に〜って持って帰ったよな?」
「え?」
「どうせなら一緒に飾ってあげようかと思ってさ――お母さんと一緒に」

 ドクンッ、と心臓が大きく脈打ち、呼吸を忘れた。唇を震わせて、奥歯を噛み締める。眉間に力を込めて、目の前の男を睨む。

「でも、父親は普通の人間なのに子どもは魔女と一緒なんだな」
「母親と一緒にしてやるなら、父親のも取っておけば良かったのにな」
「嫌だよ、あんな濁った汚いの」

 あんな、濁った、汚い――?

 あの時、必死になって私とお母さんを守ってくれた父の目を、汚いって言った?

「うわあああっ!」

 悲鳴を上げて、腕を勢いよく振り下ろす。

「おっと!?」

 バランスを崩した男の顔面に頭突きを入れると、腰にある剣に手を伸ばす。柄を握り、引き抜こうとした、次の瞬間。

「きゃあっ!」

 他の男に押さえつけられて、口の中で鉄と土の味が広がった。

「危ないなぁ」
「撤回してよ……」
「あ?」
「父さんの目は汚くなんかない! キレイな色をしていたわ!」

 暴れようとしても、上から力で押さえつけられて動けない。

「――やる……」
「何だって?」
「……呪ってやる……っ! 呪い殺してやる、お前達全員! 父さんや母さんを殺したように、お前達も殴って、焼いて、磔にしてやる!」
「出来るもんならやってみろよ!」

 出来るなら、やっていいの……?

 懐かしい声がした。数日前まで一緒に暮らしていた母の声。今は訊きたくても、その願いは叶わないと思っていた。
 コイツらに焼かれて磔にされたはずの母が、今、目の前にいる。前髪で顔が見えないけど、間違いなく母だ。あの日と同じ服を着ている。

(そうか、あの時……母さんが言った言葉は……)

 呪ってやる……っ!

(私と同じだったんだ……)

 ゆっくりと目を閉じて、口元に笑みを浮かべた。

 一つの街が滅亡した。

 魔女の呪いだと近隣の街は、怯えている。そして、滅亡した街と隣接する森には、人だけでなく魔物も近付かなくなった。
 その森には、魔女の親子が住んでいると言われている――。


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