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セレビシエさん

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化け物

17/08/30 コンテスト(テーマ):第143回 時空モノガタリ文学賞 【 約束 】 コメント:0件 セレビシエ 閲覧数:605

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近所にある古い森の中、 その奥には化け物が棲んでいる。そんな噂話がひそひそとクラスの間で語られていた。噂はだんだん膨らんでいき学校中に広まった。そうなればもちろん、誰かが森の中に入ることになる。そしてそれはもちろん、立場の弱い奴から、つまりイジメられている、僕からだった。
「お前だったら化け物とも友達になれるだろ」
渡辺が言った。そのあとに蹴りが1発。涙で目が熱くなった。

黒い雲がびっしり空を覆っている日に僕は森に入ることになった。
「こんな不気味な日ならきっと化け物も出るよ」
下卑た笑い方で田口が言った。田口と渡辺は僕をぐいと掴んでドサリと森の中に投げ出した。
風がびょうびょうと吹いたり雲が太陽を隠しているせいで森の中はヒンヤリとしていた。鳥肌が立っていた。僕は一刻も早く帰りたいと思った。暫く森を進んでいくと開けた広場のような場所に出た。そこに、切り株が一つあったので僕はそれとなしにそこに座った。すると、いきなり後ろから肩を叩かれて、思わずびっくりしてその場に金縛りにあったみたいに動けなくなった。
「貴方は誰?何をしに来たの?」
後ろからそう聞こえた。
「ば、ば、化け物ですか?」
震えた声で僕は言った。
「……そういう噂があるみたいね。私はこの森を守る妖精です。貴方達人間には妖精なんて信じられないかもしれないけれど、実在するのよ」
僕はもうわんわん泣いていた。なんでこんなおかしな目にあわなければいけないのか、さっぱり分からなかった。
「泣かないで、可愛い子。貴方はもう帰してあげます。森の入口まで送りましょう。貴方は恐らく誰かにイジメられているのですね。私が少し懲らしめておきましょう。けれどその代わりに約束です。貴方は今日見たことを誰にも話してはいけません。もし、約束を破ったのならきっと貴方には森の祟りがありますよ。ほら、涙を拭いて、家へとお帰りなさい。」
気が付くと僕は森の外にいた。その晩食べたご飯は何の味もしなかった。

翌朝、学校へ行くと田口と渡辺が来ていなかった。なんと、森から帰る途中に交通事故に遭ったらしい。僕は変な声が出そうになったが、抑えた。代わりに出たのは嫌な汗だった。二人は軽い骨折で済んだらしい。クラスは騒然とした。冷静になってみると、少しいい気分になった。骨折ぐらいは当然だと思った。
翌月、二人はすっかりと元気になった。それでいてまた僕をいつものようにイジメた。それで僕はあの森へ入っていき切り株に座った。
「また来たのですか……どうしたのです?」
「妖精さん、あの二人、また僕をイジメるんだ。懲らしめてくれよ」
僕はズボンを脱いで痣を見せた。
「まあ、ひどい……わかりました。二人は懲らしめておきましょう。貴方はもう帰りなさい。可愛い子」
気が付くとまた森の外だった。その晩食べたご飯は今までで一番美味しかった。

翌朝、二人は来なかった。
先生は重い顔をしていた。
僕はうきうきした。
先生は言った。二人は川に溺れて死んだのだと。
僕はびっくりして立ち上がってしまった。
皆が僕を見た。
僕は慌てて座り直した。
鉛みたいに重くなった空気が教室をすこし沈めた。
僕は怖くなって足がガタガタと震えた。
「妖精さん、やりすぎだよ!二人を返して!」
僕は怖くて思いきり吐き出した。
皆は気味の悪そうに僕を見た。

その晩僕はご飯を食べることはなかった。


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