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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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認知症予備軍

17/08/02 コンテスト(テーマ):第111回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:665

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「―――ええと、あれ、あれだよ」
「あれだけでは、わかりませんよ、お父さん」
「思い出せないなあ」
 妻の素子は、声をひそめて、
「あなたもお年ですから、ぼちぼち………」
「ぼちぼち、なんだ」
「あ、きこえてたんですか」
「あたりまえだ。わしはまだ、目も耳もちっとももうろくなんかしてないぞ」
「それでももう七十も半ばをすぎ、そろそろ認知症の心配しても、いいんじゃないですか」
「ばかをいえ。まだ八十ははるかさきだ、なにが認知症だ」
「それじゃお父さん、お昼はなにをたべましたか」
「昼―――うーん、冷やし中華だ」
「ちがいますよ、ソーメンじゃないですか」
「同じ麺類だ、まけとけ」
「やっぱり私は、不安だわ」
「あのな、わしはひとつだけ、これだけは絶対、自信があることがある」
 それはなんですかと、基子は夫をみかえした。
「それはな、おなじことを二回、いわないことだ。まえいったことをわすれるようじゃ、そりゃ、認知症予備軍だとおもわれてもしょうがない。しかし常々、おなじことだけは決して、わしはいわないようこころがけている」
「そうですわね、お父さん」
 ため息をひとつもらして、基子はお茶をわかしにキッチンに立った。いまのお父さんの言葉、もう耳にたこができるぐらい、きかされていた。


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