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和泉結枝さん

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Golden good morning

17/07/25 コンテスト(テーマ):第139回 時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:0件 和泉結枝 閲覧数:720

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 初めまして。このメッセージを読んでくれているということは、僕はもう動けなくなっているね。このメッセージに興味を示してくれた、あなた。あなたがどこの誰なのか、僕には知ることが出来ないのが残念だよ。でも、わがままだと思うけれど、僕はあなたに、僕について知ってほしい。ちょっとした贈り物もあるから、どうか暇つぶしか何かと思って、このメッセージに最後まで付き合ってくれると嬉しい。
 僕は、今はもう遥か遠い所にある、地球という星からやってきた。水と緑があって、たくさんの命が育まれている、そんな星で生まれて、この広い宇宙をずっと旅してきたんだ。
 僕が旅に出たのは、星について、宇宙について調べるためだった。調べて、調べて、その情報を地球の人たちに送るためだった。ガスの星に氷の星、地球で小惑星や彗星と呼ばれている天体、さらには天体と呼ばれないものまで、色々。たくさん調べて、そのたびに情報を送ったよ。とても喜んでもらえて、僕もとても嬉しかった。
 そうそう、僕の兄さんも、僕と同じように宇宙を旅しているんだ。いや、していた、のかな。 もしかしたらもう、僕と同じように動けなくなっているかもしれない。僕たちは直接連絡を取り合うことが出来ないようになっているし、悲しいけれど、兄さんの現状を知るすべは僕には無い。でも、兄さんが活躍していたことは知っているよ。兄さんは僕に先行してたくさんの天体を調べて、綺麗な写真だって何枚も撮っていた。兄さんが送った情報も、地球の人たちをとても驚かせたし喜ばせたって、地球の人たちが教えてくれた。誇りに思うよ。
 僕の気持ちは、いつでも兄さんと一緒だった。どこまでも続くこの真っ暗な世界を旅し続けるのは、大変だった。これが自分に与えられた仕事だから、不満なんてなかったけれど、ずっと孤独だったことは事実だ。そういう意味で、僕にとって兄さんの存在は、とても大きかった。既に述べた通り、僕は地球にいる人たちとはやり取り出来るけれど、兄さんとはやり取りすることが出来ない。でも、僕の孤独を本当の意味で理解してくれるのは兄さんだったと思うし、きっと兄さんもそうだったと思う。お互いにお互いがいるから、頑張れたんじゃないかな。そうであったらいいと思っている。
 大変といえば、ここまでの道中には困ったことがたくさんあったな。まず出発した当初からして、僕への指令がなかなか来なかったし、大事なカメラの調子がおかしくなったこともあった。最近じゃ、地球へ情報を送ることも難しくなってしまった。それでも、たくさんの人たちに助けてもらったから、ここまで来られたよ。
 もしかしたら、あなたがこのメッセージを読んでくれている時には、地球の人たちはもう別の星へ移住して、地球の人たちじゃなくなっているのかもしれない。地球そのものが無くなっているのかもしれない。だけど僕は、僕の役目を精一杯果たすことが出来た。僕を支えてくれた兄さんと地球の人たちに、心から感謝しているよ。直接届くことはきっとないと思うけれど、本当にありがとう。
 そして、あなた。あなたの今が、どんな今か分からないけれど、こうして僕に出会ってくれて、ここまで僕のメッセージに付き合ってくれたから、僕の感謝は確かに存在したことになる。僕の最後に付き合ってくれて、僕の感謝を存在させてくれて、ありがとう。
 さて、長々と付き合わせてしまって申し訳ない。残りのエネルギーもごくわずかだし、とても名残惜しいけれど、そろそろお別れするよ。
 ああそうだ、大切なことを忘れるところだった。僕のメッセージに付き合ってくれたお礼、あなたへの贈り物について。
 僕の横にくっついているものが分かるかな。きらきらした小さな円盤だよ。その円盤、レコードの中には、 地球のさまざまな言葉や写真、音楽なんかが入っているんだ。暇つぶしのついでに、あなたも僕が生まれた星の旅を楽しんでくれたら嬉しいな。
 それじゃあ、今度こそ、さよなら。



 ……おや。
 意識が戻った。どうやら電源が入ったらしい。
 目が覚めるのは、一体いつぶりだろう。旅してきた時間は分かるけれど、眠っていた時間は分からない。おまけに眠っている間にどこをどう漂ってきたのか分からないから、今がいつかに加えて、ここがどこかも分からない訳だ。何とも心もとない。
 えっと、目の前にいるのがあなた、なのだろうか。金色のレコードを持っているから、きっとそうなのだろうね。僕がそのレコードを見た最初で最後の瞬間は、もうずっと昔のことだけれど、変わらず美しいな。
 最初に名前を尋ねられた。どうやら僕のメッセージとレコードは、あなたを不快にさせることはなかったらしい。良かった。だから僕は、安心してあなたの質問に答えるよ。
 僕は、ボイジャー。地球からやってきた、ボイジャー2号さ。


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