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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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しっぽが裂けても

17/07/17 コンテスト(テーマ):第138回 時空モノガタリ文学賞 【 猫 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:782

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 生き物なんて飼うもんじゃない。
 そう思っているし、何度もそう言っているのに、同居人は構わず猫を拾ってきた。
「何度目だ」
「五回目かな」
 低い声での問いかけに、同居人はあっけらかんと答えた。そうじゃなくてだな。
「嫌いじゃないでしょ、猫」
 獣医には連れて行ったあとだという。手慣れやがって。
「まあ、そうだけど」
「ならいいじゃん、隆二のまあは、割と好きってことなんだから」
 押し入れから先代のトイレと餌入れを引っ張り出しながら、同居人は話し続ける。トイレの砂も餌も、用意されている。
 わかっている。なんだかんだで自分は、この猫を受け入れるだろう。今更元の場所に返してこい、なんて言えない。猫は嫌いじゃない。結局、半分は俺が世話をすることになるだろうが、それも別に不満じゃない。
 ただ、
「いつも言ってるけどな、生き物なんて飼うもんじゃない」
 おいで、と猫を抱えあげ、トイレを教えようとしている同居人。人の話を聞けよ。
「なぜなら生き物は」
「先に死ぬからでしょ、あたし達より」
 呆れたとため息をつきながら、同居人が振り返る。
「何回も聞いたし、いつもあたし言ってるよね。当たり前でしょ? って」
 だってあたしたちは生き物じゃないもの、とノンビリと同居人が答えるから、逆にこちらが言葉に詰まった。
「永遠を存在するモノノケのあたし達よりも長生きする生き物なんて、それこそモノノケでしょ」
「そうだけど……」
 だけど、止めないとお前はいつも、
「あたしは多分、今回も泣くよ。この子が死んだら。当たり前でしょ?」
 よくトイレできましたーと猫を撫でる。手懐けてる。
 言いかけたことを先に言われて、俺は何も言えずにそれを見ている。
「心配してくれるのは嬉しいんだけど、この子をちゃんと寿命がくるまで世話して、死に別れて泣くのは悲劇的なことじゃないよ。それが生きてるということでしょ?」
  同居人が猫を手渡してくるから咄嗟に受け取ってしまう。あたたかい、生き物。そう、生き物はあたたかいのだ。
「ねぇ、あたし馬鹿だけど、なんにも考えてないわけじゃないよ。昔みたいに発生したばかりのひ弱なモノノケじゃない。隆二から見たらまだまだ子供だろうけど、普通の人以上には長い時間存在してるんだよ」
 猫はするっと手から抜けて床に降りた。
「考えたうえでこの子を拾ってきたの。いつか泣くことになっても、この子をあのまま見捨てるわけにはいかないでしょ」
 名前は何にしようかー? と猫に話しかける。
 いつまで経っても、何年経っても、何十年経っても、きっとこれから百年千年単位で時間が過ぎても、俺にとって同居人は発生したばかりで考えの足りない、甘いモノノケでしかない。それでも、コイツは成長している。
「好きにしろ」
 色々言いたいことはあるけれど、飲み込んでそれだけいう。
「うん、そーする」
  第一、考えなしに猫を拾ったのは俺の方が先だ。この猫みたいな同居人を拾ったのは俺だ。あの時、深く考えていたかと言われれば、そこまで考えていなかったのだから。
「それにさー」
「ん?」
 同居人は猫を抱えて悪戯っぽく笑った。
「もしかしたらこの子、化け猫になってずっと一緒にいるかもよ」
「にゃー」
 絶妙のタイミングで猫が答えた。


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