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忍者猫さん

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砂漠の夜話

17/07/12 コンテスト(テーマ):第139回 時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:0件 忍者猫 閲覧数:695

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 砂漠のど真ん中、野営の火を焚きつつ数人の人間が座っている。
 東から、交易品を運んでいる途中の隊商の面々は、何やら疲れたような怯えたような雰囲気で、黙って炎を見ている。
 今朝までは、砂嵐に閉じ込められ破棄された村で二十人ほどの集団で野営していたが、先を急ぐ彼らは砂漠へ出て行ったのだ。
 ある程度距離を稼いだ後、野営跡を見つけた彼らはそこで休みを取った。食料はやや心もとないが、水だけは村で汲んで来たので暫くは持つ筈だ。
 やがて、隊のリーダー格の人物が、薪を投げ込んで言った。
「なあ、年越しの夜に、旅の歌謳いが来たの、覚えてるか?」
「あー、あったな、そんな事」
「そんな事があったの?」
 隊員の一人が頷くと、同行していた舞姫が首を傾げた。彼女は、彼らに同行して故郷に帰るところだ。
「その時に、最後に歌ったのが『夜の町の歌』だった」
「『夜の町』?」
 聞き返した舞姫に、子連れの年嵩の女が頷いた。この隊商のリーダー補佐でもある彼女は、遠くを見るような眼差しでこう紡いだ。
「砂海で嵐にあったら、多分その町に行き着くだろう。
 黒い石で作られたその町は、嵐が去るまで家畜とお前を守るだろう。
 そこは、夜の王の統べる町。
 嵐の晩に、気まぐれに砂漠に現れる。
 だが、そこでは水以外のものを持ち出してはならない。
 嵐が過ぎたら、直ちに出て行かねばならない。
 夜が来るまでそこにいるなら、お前は身の破滅を迎えるだろう。
 夜の王は終わりの王故に」
「ガキの頃、それ聞いて怖くてみんなで寄り集まって寝たっけな」
 お茶を淹れていた男が低く笑う。
 隊商の面々は、そうして皆ひっそりと笑うが、一人舞姫は背後を振り返ろうとして、隊のリーダーに手を掴まれた。
「見ない方が良い。
 見ても特に何もないと言われているけど、気持ちの良い物じゃない」
 彼らの背後、小さく見えていた黒い尖塔が静かに砂に沈んでいく。
 風の音に紛れて、細く悲鳴が聞こえたような気もしたが、火の回りにいる人間達は、誰も立とうとはしなかった。
 彼らの警告を無視した、西から来た男達はそれ以来何処のオアシスにも現れなかったらしい。


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