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seikaさん

かつては女子中学生でした。

性別 女性
将来の夢 生まれ変わること
座右の銘 朝、一杯のコーヒー

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私の心の旅

17/07/09 コンテスト(テーマ):第139回 時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:0件 seika 閲覧数:738

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いつか私は旅に出るんだ・・・。洗いざらしのジーパン穿いて、男物のシャツ上着代わりに羽織って、長い髪を靡かせて、そしてボストンバック持って・・・
いつの頃からかわたしはそんなことを夢見ていた。いつか私は旅に出るお姉さんになると・・・。

家には戸舞賛歌がいる。戸舞賛歌はドイツ文学者。クラシック音楽を聴きながら、珈琲を入れながら、ベートーベンを聞きながらいつでも本を読んでいる。そして別に聴きたくも無いのに
「神聖ローマ帝国は・・・」
なんていう話を無理矢理聞かされる。この戸舞賛歌が居ない国に、そしてこんな私のすべてを理解して受け入れてくれる人たちが居る町に、私は行きたい・・・そう思っていた。

 中学時代、友達づきあいも禁じられ、クラシック音楽と本に包み込まれたあの日々、学校から帰ってきて、セーラー服をハンガーにかけて、そして窓を外を見る。南の空は青く、そして雲が浮いている。新宿から小田急線に乗れば相模大野とか町田に行ける・・・あの青い空の下の町に・・・。

 そして私は大人になった。吉祥寺サンロードで黒いナイロンのボストンバックを買った。下着に身の回り品、そして洗いざらしのジーパンに男物のシャツをはおって、長い髪を靡かせて成田へと向かった。もう戸舞賛歌のいる家には帰って来ないつもりだった。どこかに私を理解し受け入れてくれる町があれば・・・。
 しかし世界中どこにもそんな町は無かった。しかたなしに杉並の家に戻る。クラシック音楽と本と詰まらない話が溢れている。私は家の中に入らずに、過激派のやっている八百屋にへといった。無精ひげを生やした店主は昔早稲田でゲバ棒を振り回していた男だった。その価値俵にはつい最近早稲田を中退した器量のいい女の子がティシャツに短パンで立っている。転写は私を見て
「・・・お前・・・あの家、出るか・・・?」
という。そのとき私には彼の言う意味が解らなかった。が彼の言葉が私の心の奥底になぜか懐かしく涙が溢れそうに響いた。
「あの家出たようがいいよ。今なら間に合うよ。」
とティシャツに短パンの女の子も私を心配するように言う。
「あした行こう。今晩はここに泊まっていきなよ。」
と店主は言う。私は自分の運命が大きく動き出したことを実感した。

翌日、私は弁護士という男性にあった。そして私は店主の友人で静岡のほうで農業をしている子供の居ない夫婦の養子に行くことになった。やがて一台の軽トラックが止まった。
「ああ、あんたか・・・ドイツ文学者の娘さんは・・・大変だったね。今から行こう。あ、そうだ、はじめまして。よろしく・・・。おれ、あいつと早稲田で運動していたんだ。ささ、乗ってよ。」
という。ティシャツ一枚の日焼した無精ひげの彼がたまらなく懐かしく感じられた。

こうして私はしばらく静岡の田舎で農作業を手伝った。キュウリやメロンやトマトを作りながら・・・杉並の家には母にだけ連絡していた。母は戸舞賛歌が新しい本を出したとかそんな話をしていた。杉並の家が遠く私と関係なく感じられる・・・。

そして戸舞賛歌が死去したという報せをうけた。実は私は法的にはその静岡の農家の養子にはなっていなかった。まだ戸舞賛歌の長女のままだった。そして久しぶりに戸舞家に帰ってきた。・・するとあの頃の戸舞家の空気が戻って着ていた。まだ普通の家庭の、明るく伸び伸びとした家だったころの雰囲気だ・・。しかしその日の夕方にはその雰囲気は消えうせ、代りに陰険で今待て漢字とことのない不気味なオーラが漂い始めた。
「何者かが裏切りを働こうとしている・・・」
そう感じた。そしてその原因は私もわかっていた。ナカノコーサクだ。戸舞賛歌の一番弟子の・・・
「お前は身触りだ、ここから出て行けっ女は遺族としての権利をすべて放棄してここから立ち退いてくれないか・・・。」
そう私をディスり、そして私の権利を奪おうとするナカノコーサクの態度はやくざそのもの、というよりやくざ以下だった。私は本気でナカノコーサクを殺してしまおうと包丁を持ってナカノコーサクに突進した。真っ青になったナカノコーサクは以後永遠に戸舞家には来なくなった。

 私の生まれ育った戸舞家・・・そこにはもう戸舞賛歌もナカノコーサクに居なかった。戸舞家の窓から見る星空は魂の故郷からの懐かしい光そのものだった。
そう、もう戸舞賛歌もナカノコーサクも居ない・・・。戸舞賛歌もナカノコーサクも私を支配するとはて゜きない・・・。
ふと足元を見ると、ナカノコーサクの首や手足が転がっていた。


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