石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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初夢

12/11/29 コンテスト(テーマ):第二十回 時空モノガタリ文学賞【 お正月 】 コメント:5件 石蕗亮 閲覧数:2483

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 今日は大晦日。
一年のお礼を兼ねて私はバイト先の喫茶店に来ていた。
喫茶店には魔術の師匠であるマスターとマスターの友人でありマスター代理の悪魔がいた。
「今年も一年お世話になりました。」
私が挨拶すると「こちらこそ。」と丁寧に応えてくれた師匠とは対象に「お世話しました。」と悪魔が応えた。
「え、あの、はぁ。」
悪魔の悪魔らしい反応に「睡魔から助けてもらったけど魔術は教わってない。」とツッコミたかったが堪えた。
悪魔は師匠が留守の間の代理で来てもらっていたのだが、師匠が戻った後も相変わらず店に居た。
本人曰く「まだ暫くは人間界に居る」とのこと。
迂闊なことは言えないと私は気を引き締めた。
 
 「そういえば、今晩は初夢ですね。お互い良い夢が見れるといいですね。」
「「違うよ。」」
私の台詞に師匠と悪魔の二人がハモって答えた。
「えぇ!?初夢って元旦の朝に見る夢のことじゃないんですか?」
「うん、違うねぇ。初夢ってのは元旦の夜、つまり1月1日の夜から2日の朝にかけて見る夢のことを指すんだよ。」
悪魔がカウンターに座ってお気に入りの珈琲を飲みながら答えてくれた。
「ちなみに。いち富士、に鷹、さん茄子びというのも言葉のあやだぞ。」
「えぇっ!」
「正しくは『富士に高み成す』だ。修験信仰で霊峰富士に一年の抱負を修める言葉だがそれが民間信仰でずれたんだな。」
悪魔は「人間とは。」とにやけながら話してくれた。
「似たようなものに『生麦大豆二升五合』なんてものもあったね。」
師匠がそう言ったが私には解らなかったので「すみません。」とおずおず手を上げると師匠はいつもの柔らかい笑顔で講義を開いてくれた。
「観音経のひとつに『南無大済救具救難返照金剛』という一節がある。この経文が口伝で広がるうちに生麦大豆云々と伝言ゲームのようにずれたものなんだけど、江戸時代にはこの空耳の方が一般的に流布していたんだ。」
「へぇ〜。いわしの頭も信心、と同じですか。」
「そうだね。」
師匠はいつも優しく教えてくれる。
だが肝心の私の目標である「幽霊珈琲」の淹れ方についてはまだ教えてくれない。
きっとまだ私の経験不足なのだろうと納得のできる理由を自分で考えてみた。
 「そうそう早いけどこれあげるね。」
師匠はそう言って私に封筒を1通差し出した。
和紙で作られており正月らしいデザインの封筒に私はいやらしくもお年玉を期待したが「お年玉じゃないぞ。」と悪魔に釘を刺された。
気持ち読まれたようで一瞬ビクッとしたのを悪魔に見咎められクスクスと笑われ、私は恥ずかしくなった。
開けてごらん、と促され中を見ると1枚の絵が入っていた。
拡げてみるとそれは七福神の乗った宝船の絵だった。
師匠曰く、初夢を見る夜に枕の下に縁起物の絵を敷いて寝ると吉夢が見れる、のだそうだ。
「あ、ひとつ注意があります。」
師匠は大事なことだから覚えてくださいね、と念を押して話し始めた。
「朝起きてすぐに夢の話を他人にしてはいけないよ。例えそれが肉親兄弟でも。特に初夢はね。」
「どうしてですか?」
「夢はね、売り買いや譲り渡しが可能なんですよ。また、迂闊に他人に話すと逆夢になってしまうんです。吉夢は凶夢に、凶夢は本人を含む他人に伝播する性質を夢はもっているんです。だから迂闊に話してはいけませんよ。話すなら朝ご飯を食べ終わって体が完全に目覚めてからでなくてはいけないですよ。」
忘れないように復習すること、と師匠は最後にもう一度私に念を押した。
夢師である師匠から夢のことを教わるのは今回初めてだった。
私はその場でもう一度今教わった内容を無言で復唱した。
師匠から魔術に関してメモや筆記を残すことは禁じられていた。
 私は家に着くまで無言で今日教わったことを何度も復唱した。

 そして元旦の夜。
私は師匠からもらった絵を枕の下に敷いて眠った。
翌日は昼前まで眠っていた。
長く眠った為かとてもすっきりしていた。
起きてから夢見た内容を思い出してみたが富士も鷹も茄子も見なかったし、七福神も宝船も見なかった。
見た内容は空を飛びながら蛇を捕まえたことと、鳥が手のひらに降りてきたこと。そして汚物に触れてしまう夢だった。
あとで師匠達に話したら「異能の目覚めと恋の目覚め、運気向上と金運の向上だね。」と教えてくれた。
 その師匠の後ろで「恋愛ねぇ。」と悪魔が面白そうに笑っていた。
悪魔にだけは教えるべきではなかったかもしれないと若干後悔した。
次からは自分で夢解ができるように夢師のことも勉強しようと思った。


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このストーリーに関するコメント

12/11/29 石蕗亮

いつも読んでいただいてる方、初めての方
読んでいただきありがとうございます。
夢師シリーズです。
今回は夢の薀蓄が多すぎて人間らしさが希薄になってしまいましたが楽しんで頂ければ幸いです。

12/11/29 草愛やし美

石蕗亮さん、拝読しました。

夢占い私も好きで本を持っています。夢占いでは、通常の考えでよくないことが良い夢だったりしますね。

この本は父の形見です。父は、晩年、四柱推命の占い師をしていましたが、夢占いから占いに興味を持った人でした。

懐かしいような嬉しいような師匠さんと悪魔さんのお話に笑顔になりました。夢師として頑張ってくださいね。応援しています。

12/11/30 石蕗亮

草藍さん
読んで頂きありがとうございます^^
懐かしんで頂けて何よりです。
私の書く夢師は半分創作で本当の夢使いの話ではありませんので、もしかしたら違うと思われることも多いかもしれませんがご容赦ください。
私は夢占いの知識はほとんどありませんが、夢については母方の持ち神である「枕神」に教わっています。この話もいつか機会があれば書きたいと思います。
応援ありがとうございます♪これからも楽しんでいただける作品をがんばりますのでよろしくお願いしますね^v^

12/11/30 泡沫恋歌

石蕗亮 様。

拝読しました。

先日、私は珍しい夢を見て、それがあまりに鮮明だったので
詩のような形にしてウェヴ上で公開しましたが・・・
こういうことをやったら縁起が悪いのかなあ?

北条政子が妹と夢を交換して、源頼朝の妻になったというのは
有名な話ですが、夢って不思議で興味深い世界ですよね。

12/12/01 石蕗亮

泡沫恋歌様
いつも読んで頂きありがとうございます^^
夢にはいくつか種類があり、記憶の整理で見る夢と予知的な夢と他者から見せられる夢があります。
記憶の整理で見る夢ならば公表しても影響はありません。
残りの2つならばあまり公表はおすすめしません。
売り買いは夢と何かを交換しない限り成立しないのでwebでの公開ならば問題ないかと思います。
北条政子は妹の吉夢を自分の扇子と交換して手に入れてましたね。
夢には地図も法則もありますので機会があればどんどん描いていきたいと思います。
露骨にバラすのも捻りがないので創作話を織り交ぜて楽しめる内容で描いていきますので、これからもよろしくお願いいたします♪

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