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藤巻 月平太さん

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イレブン・ナイトツアー 第1話「翔太の秘密」

17/05/28 コンテスト(テーマ):第105回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 藤巻 月平太 閲覧数:515

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このツアーは、真実を浮かび上がらせる闇夜の異次元世界へ案内する旅行社の企画。
深夜午後11:00に四谷4丁目から出発する。
今回の行き先は、夫婦からの要望で、先日亡くなった子供の死の真相を探る旅

深夜の四谷4丁は、目静かな住宅街。
街灯が照らす歩道は、1組の夫婦以外だれも歩いていない。
夫は、立脇智史45歳とその妻京子38歳。
道路脇に止められた霊柩車の脇に黒い礼服を着た運転手が立っている。
立脇夫妻が運転手の前で立ち止まり声をかける。
「予約しておりました。立脇です」
「立脇様お待ち申し上げておりました」
と、運転手がドアを開けて霊柩車の後部席に夫婦を招き入れる。
二人が乗り込むと後ろの荷物席には、子供用の棺桶が置かれている。
少し驚いた顔の二人。
前の助手席に座る中年女性が話しかけてくる。
「ようこそ、お越し下さいました。私は、お二人をご案内申し上げます霊媒師、深山過代でございます」
「立脇と申します。疑うようで申し訳ないのですが本当に子供の霊を呼び出せるのですか」
「皆様同じ事をおっしゃいます。深い疑念をお持ちになりますと見える物も見えなくなります。今回お客様をご案内する場所は、心の闇の真実でございます」
「これは、失礼なことを言ってしまいました」
「では、亡くなったお子様のお名前と年齢を、お告げくださいませ」
立脇が遠くを見るような眼差しで話し始めた。
「立脇翔太、12歳です。先日、学校の屋上から飛び降り自殺しました」
京子は、目頭を押さえ泣いている。
「学校では、万引きの共犯を苦にして自殺したと言われているが、どうしても信じられない・・」
立脇も目頭を押さえ言葉に詰まる。
運転手が腕時計を見て言う。
「それでは、予定時刻になりました。立脇翔太の元に出発致します。シートベルトを、お締めください」
立脇夫妻を乗せた霊柩車は、ゆっくりと走り始めた。

霊媒師は、両手を前に組み呪文を唱え始める。
「霊界の主よ立脇翔太の霊を降霊させたまえ」
「うーん・・」と大きく息を吸い、「かっー」っと、ゆっくりと息を吐く。
霊媒師は、吐く息と共に体の力が抜けてぐったりとする。
辺りは、どんどん暗くなりライトの照らす道しか見えない。
霊柩車は、急な上り坂を登り始め、走行音は、無くなり静かに深い霧の中へ入っていく。
車のライトで照らされる道も霧で何も見えない。
ゆらゆらと霊媒師の体が揺れ始める。
霊媒師が話し始める。
「あー、お母さん、お父さん・・・ごめんね僕を許して・・・」
声は、亡くなった翔太の声になっている。
京子が驚き顔を上げる。
「貴方、翔太なの?どうして死んじゃったのよ?・・本当の事を話して」
「・・それは、絶対言えない」
翔太は、それ以上話さない。
「翔太、ねえ翔太!・・お願いお母さんたち本当の事を知りたいのよ・・」
涙する立脇と京子。
霊柩車の運転手が声を掛けてくる。
「これから霊界に入ります。翔太君の真実が車のライトに照らされて見えてきます」
ライトで照らされた霧がまるで映画のスクリーンのように映像が映し出される。
そこに映し出されたのは、翔太が生前に仲良くしていた町田純華、だった。

彼女は、クラスで虐めを受けていた。
休み時間に机で泣いている純華を見て翔太が話かける。
「どうしたの?純華ちゃん」
「私の体操着がハサミで切られているの」
机の脇にある袋からズタズタに切られた体操着を出す。
「ひどい、誰がこんな事を・・」翔太が驚いた顔で言う。
「たぶん澄子ちゃんよ。最近上履きを捨てられたり、給食の中に虫を入れられていたり、そんな事ばかりなの」
「先生には、言ったの?」
「言ったわ。でも、それから益々ひどくなったわ。澄子ちゃんが今度言ったら殺すって・・」
純華は、泣いている。
「あいつ!絶対許せない。僕が言ってあげる」
「だめよ。そんな事したら益々ひどくなる。だからやめて。お願い!」
「でも、それじゃ・・・、僕は、いつでも君の見方だよ。何かあったら話して」
泣いている純華にそっと肩に手を置く翔太。
その日から、翔太と純華は、一緒に登下校するようになった。

修学旅行がせまったある日のホームルーム。
先生が生徒に指示を出した。
「グループ別けをしたいと思います。仲の良い子どうしで5,6人でグループを作って移動してください」
ざわつく教室、みんな席を立ちすぐにグループができた。
そんな中、純華一人だけ取り残されたように立っている。
翔太がそれを見て純華に話しかける。
「ねえ、僕たちのグループ入らない?」
「良いの?」
翔太のグループは、仲の良い男子だけのグループだ。
グループの皆に聞く。
「ねえ、みんな。純華ちゃん仲間に入れてもいいよな」
グループの皆顔を見合わせている。
皆笑顔でうなずく。
「良いよ。純華ちゃん遠慮するなよ」グループの仲間が言う。
その光景を睨んで見ている澄子。
「翔太のやつ。どうなるか思い知らせてやる」と呟く。

こうして、無事修学旅行を終えて間もなく澄子が純華を近くの公園に呼び出した。
放課後、呼び出された純華が公園に行くと澄子たちのグループが待ち構えていた。
「おい、純華!お前そこのコンビニでチョコレート持って来い」澄子が命令する。
「えー、でも私お金持ってないし」
「買ってこいって言ってんじゃねーよ。持って来いって言ってんだよ」
「何?それって万引きしてこいって事?」
「なんだよ、できないって言うのかよ!」
「・・・・やだ」
「てめー、前歯抜いてやる!」
ポケットからペンチを取り出す澄子。
怯える純華は、しかたなくコンビニに入っていく。
コンビニに入ると店員が挨拶する。
「いらっしゃいませ」
キョロキョロと辺りを見回している純華。
額は、汗で濡れている。
そんな、純華を不審そうな顔で見ている店員。
店員が目をそらした隙にポケットにチョコレートをそっと入れる純華。
そのまま、コンビニを出ようとした時、店員に肩を掴まれた。
「あー、お嬢ちゃん。だめだよ万引きは、事務所まで来て」
「・・ごめんなさい。お金すぐ払います。許して・・」
泣き出す純華。
まもなくコンビニに呼び出された純華の母親が泣きながら問い詰める。
「どうしてこんな事するの?純華は、こんなことする子じゃないでしょ?だれかに命令されたんじゃないの?」
実は、両親も学校で虐めれれている事を知っていたのだ。
口ごもり下を向いたままの純華。
純華が思わぬ事を言い出す。
「翔太くん・・・」
捕まったら『翔太に命令されたと言え』と澄子に言われていたのだった。
それを聞いた純華の母親は、すぐに学校へ連絡してしまった。

家に帰った純華は、翔太の家に電話した。
電話でその日の事を話す純華。
「ごめん、翔太。『翔太に命令された』って言えと脅されたの。澄子に虐められている事、言わないで。お願い」
「わかってるよ。僕は、大丈夫だから心配しないで」

翌朝校長室に呼び出された翔太。
校長室に入ると翔太の母親京子が椅子に座っている。
「今、校長先生から聞いたわ。翔太、どういう事なの。貴方がそんな事するなんて信じられない」と京子が聞く。
だまって下を向いたまま何も話さない翔太。
その日は、校長から厳重注意を受けて教室に戻った。

休み時間澄子が翔太に話しかけてくる。
「おい、翔太!話してねーだろな」
「言ってないよ!」
「放課後話があるから屋上へこい」

呼び出された翔太が放課後学校の屋上に行くとそこには、澄子らグループと純華が待っていた。
澄子は、紙と鉛筆を出し、これに「お詫びに死にます」と書けと言う。
「何をいってるんだ!そんな事どうして俺が書かなきゃならないんだ」
怒る翔太。
「お前、あたしに逆らうと純華を屋上から突き落とす」
「くそーお前たち・・」
「純華が死んでもいいのかよ!」
しかたなく、紙に「お詫びに死にます」と書いた翔太。
この先どうなるか想像がついた翔太。
書き終えると澄子が言う。
「飛び降りろ」
「・・・やだ」
ためらう翔太を澄子の仲間が押さえつけて手すりの所まで連れて行く。
「どうすんだよ!お前が飛び降りなきゃ純華を突き落とす」と澄子が脅す。
純華を見ると下を向いたまま黙っている。
翔太は、それ以上何も言わず、屋上から飛び降りてしまった。
屋上から無言で落ちていく翔太。

霧の中に映し出された映像がここで終わる。
ライトに照らされた白い霧しか見えない。
霊柩車の運転手が言う。
「これでイレブンナイトツアーは、終了です」
いたたまれない真実の悲しみに翔太の両親は、涙した。
静かに霧が晴れ夜明けの四谷に戻っていく霊柩車。

もちろん霊界での出来事は、他言してはならない。

おわり。


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