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雪乃月さん

純文学を中心に書いていこうと思っています。 創作の中心としているテーマは 「影の中に佇む一筋の光」です。

性別 男性
将来の夢 作家、若しくは出版社を立ち上げること。 そして、それで生きてゆくこと。
座右の銘 禍福は糾える縄の如し

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天国への階段

12/11/24 コンテスト(テーマ):第十九回 時空モノガタリ文学賞【 クリスマス 】 コメント:0件 雪乃月 閲覧数:1737

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 はらりと落ちたひとしずくの涙。
シンシンと雪降る師走の末に、ひとりの少女が泣いていた。

少女の足元には、もう動くことのないひとつの猫があった。

 雪が朱色に染まっていた。
お腹が裂けて、内側にあるものが見え隠れしていた。

街の中で華やかに流れるクリスマスソング。
世の中ではクリスマスイヴと称される日。
ここだけが、切り離されているようだった。

少女は唇をかみ締めて、必死に声を抑えて泣いていた。
「かなしいね」
悲しみに明け暮れる少女に、僕は何もしてあげられなかった。
生は取り戻せない。当たり前の現実を、当たり前に受け入れるしかない。
それはとても辛くて、押し潰されてしまいそうなことだ。
だからこそ、僕は安易に言葉を掛けられなかった。
ここで慰めの言葉を言っても、それは全部安っぽい言葉にしかならない気がして。

「お墓、作らなきゃね」
堪えていても、次第にストッパーは効かなくなっていく。
僕は背中を摩りながら、だんだん大きくなる少女の泣き声を静かに聴いていた。
「一緒にお墓作ろうか」
泣きながらも、少女は頷いた。
少女なりに、必死に死を受け入れようと頑張っているのかもしれない。
スコップで、土を掘り返していく。
鼻水をすすりながら、少女もまた土を掘っていた。

少し深めに掘った穴に、二人で猫を沈めた。
少女は「これも」と、柊を添えた。
「天国に行って欲しいから」
柊には、魔除けの意味がこめられている。
自分の出来る最善を、少女なりに考えたのだろう。
暫く、二人で亡骸を見つめていた。

「埋めようか」
「……うん」
土を被せる時、猫は笑っているように見えた。
「ねえ」
「うん?」
「笑ってるね」
「そうだね」
少女にも、そう見えていたようだ。
もう涙が流れることはなかった。
「天国に行けると良いね」
「うん」
「お祈り、する?」
「お祈り?」
「そう、お祈りだよ。無事猫が天国に行けますように、って」
「する」
二人で手を合わせて、祈りを捧げた。
アヴェマリア。
これほど今に合う祈りはないだろう。

見上げると、雲に覆われた空に一筋の光が漏れ出していた。
それを見て、少女は言った。
「天国への階段だね」と。
晴れ行く空に囁くように。


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